プレサンス冤罪事件が突きつけた、日本の刑事司法と「企業家リスク」の正体

プレサンス冤罪事件は、単なる一企業の不祥事や裁判沙汰ではない。
それは、日本において事業を拡大し、行政と関わり、制度を活用して成長しようとする者が、どのようなリスクに晒されるのかを、極めて生々しく可視化した事件である。

不動産会社
プレサンスコーポレーション
の創業者・山岸忍氏は、補助金制度を用いた不動産開発を巡り、詐欺等の容疑で逮捕・起訴された。しかし最終的に司法は、検察の描いた犯罪ストーリーを退け、無罪判決を下した。

重要なのは、「無罪になった」という結果ではない。
なぜ、そもそもこの事件が刑事事件として成立してしまったのか。
なぜ、企業経営という本来は民事・行政で処理されるべき領域が、刑事責任に転化されたのか。

この事件を読み解くことは、日本で資本を投じ、事業を行い、社会制度と関わるすべての人間にとって、決して他人事ではない。

  • 事件の構図──「制度」と「犯罪」の危険な混線
  • 検察のストーリー先行型捜査
  • なぜ「経営トップ」が狙われたのか
  • 無罪判決の意味──司法が示した「限界線」
  • 投資家・経営者が学ぶべき現実

事件の構図──「制度」と「犯罪」の危険な混線

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本件の発端は、歴史的建造物「明治天皇記念館」を巡る不動産取引と補助金制度の活用だった。
問題とされたのは、補助金申請の前提や目的が「虚偽であったのではないか」という点である。

しかし、ここで決定的に重要なのは、
当該スキーム自体が、当時、明確に違法とされていなかったという事実だ。

行政は補助金制度を設計し、審査し、交付している。
その過程で、事業の内容や構造は当然把握されていた。
それにもかかわらず、後になって

「実は最初から詐欺だった」
という解釈が持ち出された。

これは、刑事法の大原則である
「事後的に犯罪を作らない」
というルールと真っ向から衝突する。

制度設計の曖昧さ、行政判断の甘さ、その責任を
事業者側に刑事責任として転嫁する
──この瞬間に、行政問題は刑事問題へと変質した。

検察のストーリー先行型捜査

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プレサンス事件が冤罪事件と呼ばれる最大の理由は、捜査手法そのものにある。

日本の刑事事件ではしばしば、
• 先に「悪の物語」を作る
• それに合致する事実だけを拾う
• 合わない事実は無視・排除する

というストーリー先行型捜査が行われる。

本件でも、
「補助金を騙し取った悪質な企業」
「それを主導した経営トップ」
という構図が先に出来上がっていた。

結果として、
• 制度解釈の幅
• 行政側の関与
• 実務担当者の判断

といった、本来検討されるべき要素は、捨象されていった。

検察にとって重要なのは「正確さ」ではない。
有罪ストーリーとして法廷で完結するかどうかである。
この構造が、企業活動と刑事司法の相性を極端に悪くしている。

なぜ「経営トップ」が狙われたのか

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もう一つ見逃せないのは、逮捕対象が創業者・経営トップだったという点だ。

通常、補助金申請や事務手続きは、
• 担当部署
• 実務責任者
• 外部専門家

によって処理される。
それにもかかわらず、本件ではトップ個人が逮捕された。

理由は単純である。
トップを捕まえれば、会社全体が揺れるからだ。
• 株価への影響
• 社会的評価
• 取引先・金融機関の反応

刑事責任が確定する前に、事実上の社会的制裁が完了する。
これは、刑事手続を使った強力な圧力装置であり、
自白や取引を引き出すための典型的手法でもある。

無罪判決の意味──司法が示した「限界線」

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最終的に裁判所は、検察の主張を退け、無罪判決を言い渡した。

判決は、
• 詐欺の故意を認定するのは困難
• 補助金制度の解釈は一義的ではない

とし、刑事責任を問うには無理があると明確に判断した。

これは、
「検察の描いた物語は、法的に成立しない」
という司法からの強いメッセージである。

しかし同時に、この無罪は
長期勾留・実名報道・社会的信用の毀損
を回復するものではない。

日本では、
無罪=被害がなかった
ではない。

刑事司法は、無罪判決が出ても、
誰も責任を取らない構造になっている。

投資家・経営者が学ぶべき現実

企業の方向づけを正しく行うために、経営者が学ぶべきこととは | [増補改訂版]経営者の教科書 | ダイヤモンド・オンライン

この事件が示す最大の教訓は、
「日本で事業をやるリスクは、市場ではなく制度にある」
という点だ。
• 行政と組む
• 補助金を使う
• 規制のグレーゾーンを前提に事業を設計する

これらは本来、政策的にも推奨される行為である。
しかし、日本ではそれが事後的に刑事責任へ転化される可能性を常に孕む。

投資家・経営者にとって重要なのは、
• 法的に黒か白か
ではなく、
• 後から黒と言われる余地があるかどうか

という、極めて歪んだ判断基準になりつつある。

これは、
• 起業家精神
• イノベーション
• 官民連携

すべてを萎縮させる要因となる。

冤罪は本当にやめていただきたいですね。

ストーリー先行で捜査されて逮捕されたんじゃ許せないですね。また一度こういうことが表に出てしまうと株価や経営にまで影響するので注意が必要です。

まとめ

プレサンス冤罪事件とは、
「制度の曖昧さ × 検察権力 × 経営者個人への責任集中」
が生み出した、構造的な悲劇である。

この事件は、
• 日本の刑事司法がいかにストーリー重視であるか
• 無罪でも人生が破壊され得る現実
• 経営トップが常に「見せしめ」の対象になり得る構造

を、はっきりと示した。

投資家・事業オーナーにとって重要なのは、
「法律を守ること」以上に、
「後から犯罪にされない距離を取ること」
という、非常に皮肉な現実を直視することだ。

プレサンス事件は終わった事件ではない。
これは、今も続く日本の制度リスクの縮図である。

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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