SOFR(Secured Overnight Financing Rate)は、アメリカで導入された次世代の短期金利指標であり、これまで金融市場の基準として長年使われてきたLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)に代わるものとして注目されています。SOFRは、**米国債を担保とした翌日物のレポ取引(担保付き貸付)**に基づいており、実際の取引に基づく信頼性の高い金利として、2021年以降、急速に広まりました。
LIBORが見積もりベースであり、操作の余地や信用リスクが内在していたのに対し、SOFRは実取引ベースで透明性が高く、担保付きのため信用リスクが低いという特徴を持ちます。ニューヨーク連邦準備銀行が毎営業日に公表することも、信頼性の向上につながっています。今後の金融取引において中心的な役割を担う金利であり、その仕組みや活用、課題を理解することは、個人・法人投資家のいずれにとっても重要です。
SOFR(Secured Overnight Financing Rate)について詳しく教えてください。
以下で、LIBORとの違いも含めて解説します。
- SOFRの仕組みと算出方法:米国債を担保とする翌日物金利
- LIBORとの違い:信用リスクと透明性の対比
- 金融市場での活用範囲:ローンからデリバティブまで
- 現在の課題と工夫:クレジットスプレッドの欠如
- 国際金利改革とSOFRの位置づけ
SOFRの仕組みと算出方法:米国債を担保とする翌日物金利

SOFRは、「Secured Overnight Financing Rate」の名の通り、担保付きの翌日物資金調達金利を意味します。具体的には、**米国債を担保にしたオーバーナイト・リポ取引(レポ)**において実際に成立した取引の加重平均金利をもとに、ニューヨーク連邦準備銀行が日々公表します。
この金利は、日々1兆ドルを超える膨大な取引量に基づいており、極めて流動性が高く、操作の余地がほとんどない実績ベースの金利です。公表は毎営業日午前8時(米東部時間)に行われ、前営業日の取引を集計したものが反映されます。
SOFRの利点は、以下の3点に集約されます:
1. 市場規模が大きく信頼性が高い
2. 実際の取引データに基づいている
3. 米国債という高格付け資産を担保にするため信用リスクが極めて小さい
このような透明性と安定性から、SOFRは「市場に最も近い金利指標」として評価されています。
LIBORとの違い:信用リスクと透明性の対比

SOFRが導入された背景には、LIBORに関する**不正操作問題(LIBORスキャンダル)**があります。LIBORは、国際的な大手銀行が「この金利で貸せるだろう」という見積もりを提出し、それをもとに算出されていたため、操作の余地や恣意性が残るという重大な欠陥がありました。
一方でSOFRは、以下のような違いを持ちます:

これにより、SOFRは「より信頼できる金利」として広く受け入れられつつあり、多くの金融商品でLIBORからSOFRへの移行が進行しました。
金融市場での活用範囲:ローンからデリバティブまで

SOFRは、単なる金利指標にとどまらず、様々な金融商品の設計や契約条件において中核的な役割を果たします。以下のような用途が代表例です:
• SOFR連動ローン:企業向け融資などでLIBORの代わりにSOFRが使われるようになっている。
• 金利スワップ・デリバティブ:金利変動をヘッジする商品でも、SOFRベースのものが急増中。
• 社債・国債:SOFRをベースとした利払い条件が設定される債券の発行が活発化。
• 金融商品設計:SOFRにスプレッドを加えた「Term SOFR」や「Compounded SOFR」が用いられる。
また、住宅ローン市場でもLIBORからSOFRへの置き換えが進んでおり、金利決定の透明性が高まると同時に、借り手にとっても公正な基準となりつつあります。
現在の課題と工夫:クレジットスプレッドの欠如

SOFRの強みである「信用リスクの低さ」は裏返すと、「民間銀行のリスクを反映できない」という弱点にもなります。LIBORには銀行の信用リスクが金利に含まれていたため、銀行間貸出の現実に近い金利でしたが、SOFRはリスクフリーに近く、実際の商業ローン金利との差が生じやすくなります。
この課題に対処するために、以下のような対応策が導入されています:
• SOFR + クレジットスプレッド:LIBORと経済的に同等な効果を得るため、一定の補正スプレッドを上乗せ。
• Term SOFR(ターム物SOFR):1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月など、先物市場を活用して将来の金利を前もって把握できるようにした指標。
• Compounded SOFR(複利ベースSOFR):一定期間のSOFRを日々複利で積み上げて平均金利を計算。
こうした調整により、LIBORに代替する実用性と信頼性の両立が図られています。
国際金利改革とSOFRの位置づけ

LIBORの廃止にともない、世界各国では同様の短期金利の代替指標が整備されています。その中でも、SOFRは最も規模が大きく、国際的にも中心的な存在です。

各国が独自の指標を持つ中で、SOFRはその透明性と取引量の多さから、グローバル金融市場の新たな標準と位置付けられています。
個人投資家には関係ないですよね?
個人投資家や企業にとっても、今後の金利動向や資金調達の仕組みを理解する上でSOFRは不可欠な要素となっています。
まとめ
- SOFRは、過去の金利操作問題に終止符を打ち、信頼性と透明性を兼ね備えた新しい金融インフラとして、世界の金融市場において急速に浸透しています。その特徴としては以下の点が挙げられる
- • 担保付きの実績ベース金利で透明性が高い
- • LIBORに代わるグローバル基準として機能
- • 多様な金融商品設計に応用されている
- • 信用スプレッドや期間金利の不足には工夫で対応中
著者プロフィール

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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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