接待で動く保険業界が生む「思考停止型投資家」の温室

日本の保険業界には、長年にわたり続いてきた暗黙の文化がある。
それは「保険を売る者は、保険会社に接待されるのが当たり前」「保険を買う顧客には、こちらが尽くすのが礼儀」という循環である。

営業担当者は高級な会食、ギフト、旅行招待、ポイント、表彰式、パーティーで育てられ、同じ手法を顧客にも適用する。顧客の誕生日にプレゼント、契約時には高級ディナー、契約後は細かい生活相談まで受け持つ“従属型サービス”。そこにあるのは、商品価値でも金融知識でもなく、「餌付けと依存」で成立する関係性だ。

この歪んだ循環は、顧客から判断力と責任感を奪い、結果として「自分で考えない投資家」を量産する。すなわち、接待される側も、接待する側も、どちらも思考停止した状態で成立する不健全な市場が形成されるのだ。

本来、投資も保険も、「契約者自身が理解し、自ら判断し、納得したうえで選択する」べきものである。しかし、この業界構造は、思考と責任を奪い、「人に決めてもらい、人のせいにする投資家」を育ててしまう。

  • 依存を生む営業文化
  • 責任転嫁型投資家の誕生
  • 誤った顧客満足の指標
  • 本来あるべき顧客とアドバイザーの距離感
  • まとめ

依存を生む営業文化

顧客を依存させるということ|そこらへんの経営者

保険営業においてもっとも根深い問題は、契約者に「思考を委ねさせる仕組み」が存在することだ。

営業担当者は、商品説明よりも先に“好かれる努力”をする。丁寧な接触頻度、会食、手土産、誕生日ケア。まるで恋愛か客引きのような行動がスタンダードになっている。

顧客はこう考えるようになる。
「この担当者が良い人だから契約する。」
この時点で判断基準は既に破綻している。

金融商品は人柄ではなく数字と仕組みで評価すべきものだ。
だが、接待文化は「考えなくていい」という甘い麻酔として作用し、顧客の判断軸を腐らせる。

責任転嫁型投資家の誕生

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依存モデルの最大の副作用は、契約者が自分の決断を自分のものと認識しなくなることだ。

・うまくいかなかったら「言われた通りにしたのに」
・運用が落ちたら「あなたが勧めたから悪い」
・解約するときは「こんな契約になると知らなかった」

責任の所在はすべて外部へ移される。
これは、接待で手厚く優遇され「考えなくても誰かが面倒を見る世界」に慣れてしまった結果である。

そして、このタイプは全投資行動に同じ姿勢を持ち込む。
つまり、損失は外部のせい、成功は自分の実力。
この構造では、学習も改善も起きない。

誤った顧客満足の指標

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接待型営業は、顧客満足を「契約者が気持ちよく扱われたかどうか」で測る。

・説明は理解したか
・商品内容を比較検討したか
・リスク許容度は整理されたか

これらは脇に追いやられ、
「安心感」「親切」「気配り」が評価軸にすり替わる。

しかし、顧客は気分ではなく契約内容で未来を買っている。
にも関わらず、判断材料は心理的快感に置換される。

こうして金融商品は「比較するもの」ではなく、「誰から買うかで決まる贈答品」に変質してしまう。

本来あるべき顧客とアドバイザーの距離感

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投資アドバイザーの役割は、顧客に依存させることでも、気に入られることでもない。

役割は一つ。
顧客が自分の将来のために、論理的な意思決定ができる状態を作ること。

必要なのは、接待ではなく以下である。
• 正しい金融教育
• リスクとリターンの理解
• 契約内容の比較
• 将来のシナリオ分析
• 定期的なレビューと改善

顧客はサービスを買うのではなく、未来の安心と金融知識を買うべきだ。
そのために必要なのは、「従属関係」ではなく自立した関係性である。

まとめ

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接待、贈り物、迎合。この文化が保険業界に根付く限り、顧客は思考を奪われ、責任を放棄し、依存のまま契約し続ける。そして失敗すれば他人のせいにし、学びも改善もない。

本来の契約とは、営業担当者の愛想や接待ではなく、商品の仕組み、数字、将来設計、透明性に基づいて判断されるべきものだ。

投資と保険は「考えれば結果が変わる領域」であり、「考えなければ誰かの都合で未来が決まる領域」でもある。

気持ちよく扱われたいから契約するのか。
自分の未来を守るために契約するのか。

この問いに正直に向き合える人だけが、正しく資産形成を進められる。

接待と依存ではなく、理解と判断。
ここに、成熟した投資行動と金融リテラシーの基礎がある。

本質を見誤らないようにしないといけないですね。

保険は長期にわたる契約なので高額な金融商品です。付き合いではなくしっかりと自分に必要なものだけ無駄なく備えましょう。
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著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
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