高市早苗氏が首相に就任した場合、日本の政権運営はこれまでの「調整型・均衡型」から、より明確な国家意思を伴う戦略型へと転換する可能性が高い。
特に経済政策においては、財政規律を過度に優先する従来の路線とは距離を取り、「国力=供給力・技術力・安全保障」の再構築を最優先課題とする点が特徴となる。
高市氏の経済観の中核にあるのは、
• 日本経済は需要不足ではなく供給力の劣化に直面している
• デフレマインドは政策の結果であり、宿命ではない
• 国家が方向性を示さなければ民間投資は動かない
という認識である。
この前提に立つ政権は、金融・財政・産業政策を「一体運用」し、名目成長率の回復を明確に狙う。
- 組閣の基本思想――「官僚調整型」から「政策主導型」へ
- 財政政策――PB黒字化目標の事実上棚上げ
- 金融政策――日銀との新たな関係性
- 産業政策――市場任せから「国家戦略産業」へ
- 国民負担と分配――「再分配」より「稼げる構造」
組閣の基本思想――「官僚調整型」から「政策主導型」へ

高市政権の組閣は、派閥均衡や年功序列よりも、政策遂行能力と思想的一貫性を重視する布陣となる可能性が高い。
想定される特徴は以下の通りである。
• 経済・安全保障分野では、積極財政・技術立国・経済安全保障に理解のある人物を集中配置
• 総務・経産・防衛・内閣府に権限を集約し、縦割り行政を弱体化
• 財務省主導の予算編成に対し、官邸主導の政策目標設定を強化
これは「調整する内閣」ではなく、「方向を決める内閣」であり、官僚機構との緊張関係を前提にした運営となる。
財政政策――PB黒字化目標の事実上棚上げ

高市政権の最大の特徴は、プライマリーバランス(PB)至上主義からの明確な転換である。
高市氏は一貫して、
• PBは「目的」ではなく「結果」である
• 名目GDPが拡大しなければ、財政健全化は不可能
という立場を取ってきた。
想定される財政運営は以下の通りである。
• PB黒字化目標は中長期の参考指標に格下げ
• 当面は名目GDP成長率>国債金利の関係を作ることを最優先
• 国債発行を前提とした、研究開発・インフラ・防衛・エネルギー投資の拡大
これは「放漫財政」ではなく、成長率を回復させるための戦略的赤字であり、緊縮路線とは思想的に明確に一線を画す。
金融政策――日銀との新たな関係性

金融政策においても、高市政権は従来の「日銀の独立性を尊重するだけ」の姿勢から踏み込む可能性がある。
想定される基本スタンスは、
• 2%物価目標の「持続的・安定的達成」を明確に要求
• デフレ脱却前の金融引き締めには否定的
• 金融政策と財政政策の協調運用を重視
これは日銀法の枠内であっても、政府の経済目標をより明確に提示する姿勢であり、事実上の政策圧力となる。
高市政権下では、
「物価が上がること=悪」
という日本特有の思考から脱却し、適度なインフレを成長の結果として容認する社会的合意形成が試みられる。
産業政策――市場任せから「国家戦略産業」へ

高市経済政策の中核は、明確な産業選別にある。
重点分野として想定されるのは、
• 半導体・先端素材
• 防衛産業・宇宙産業
• エネルギー(原子力・次世代電源)
• AI・量子・通信インフラ
これらに対し、
• 国費による初期需要の創出
• 規制緩和と補助金のセット運用
• 国内回帰・国内投資への税制優遇
を組み合わせ、「民間が投資しやすい環境」を国家が先に用意する。
これは小さな政府思想ではなく、供給力を再構築するための能動的国家像であり、戦後日本の産業政策回帰とも言える。
国民負担と分配――「再分配」より「稼げる構造」

高市政権の分配政策は、単なる給付拡大ではない。
想定される方針は、
• 一時的給付よりも、恒常的所得増
• 賃上げは企業任せにせず、投資環境整備で誘導
• 消費税については安易な増税を否定
つまり、
「取って配る」より「稼げる経済を作る」
という思想が貫かれる。
これは短期的な人気取りには向かないが、中長期では国民の可処分所得を底上げする設計であり、自己責任論とも福祉国家論とも異なる第三の立場である。
自分の為や目先のことではなく、しっかりと日本経済の底上げを考えているのを感じます。
変化を嫌う日本人が多いので、国民も変化を受け入れる覚悟を保つ必要があります。
まとめ
高市早苗首相の誕生が意味するのは、単なる政権交代や人事刷新ではない。
それは、日本が30年以上続けてきた「現状維持型・調整型国家」から、明確な意思を持つ戦略国家へ転換できるかという試金石である。
経済政策においては、
• 緊縮から成長へ
• 市場任せから国家戦略へ
• デフレ容認から名目成長重視へ
という明確な軸が示されるだろう。
当然、官僚機構・財政規律派・市場原理主義者との摩擦は避けられない。
しかし、それ自体が「何もしないことを選び続けてきた日本政治」からの決別を意味する。
高市政権が成功するか否かは、政策の正しさ以上に、国民が“変化を引き受ける覚悟”を持てるかにかかっている。
それは同時に、日本が再び「自らの国家像を選び直す」機会でもある。
著者プロフィール

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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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