台湾有事は「起きるか、起きないか」という二択で語るべきテーマではない。
投資家が向き合うべきは、どの程度の確率を置くか、そして起きた場合の損失規模がどれほど非対称かである。
2027年という年限が取り沙汰されているのは、中国軍の能力整備の節目として言及されているためであり、必ずその年に侵攻するという意味ではない。しかし、市場は「能力が整う」という事実だけでリスクプレミアムを再評価し始める。
台湾は世界最先端半導体供給の中核であり、台湾海峡は世界物流の大動脈である。
ここで衝突が起きれば、それは地域紛争ではなく、世界経済構造ショックになる。
本稿では、
①発生確率
②確率の跳ね方
③世界経済への打撃
④株価への波及経路
⑤資産クラス別の耐性
を整理する。
- 発生確率の現実的レンジ
- なぜ経済損失は巨大化するのか
- 株価は三段階で崩れる
- 資産クラス別の耐性と脆弱性
- テールリスクの非対称性
発生確率の現実的レンジ

公式な侵攻確率は存在しない。したがって市場は予測市場、当局者発言、軍備動向などを統合しレンジで考える。
現在の合理的な推定レンジは概ね以下である。
・2027年までにフル侵攻:一桁〜10%台前半
・封鎖や限定衝突を含む広義の有事:10〜20%弱
数値だけ見ると低く感じるかもしれない。しかし金融市場において10%のテールリスクは極めて重い。
重要なのは、確率は直線的に上昇しないという点だ。
・台湾総統選挙
・米中関係悪化
・大規模軍事演習
・偶発的衝突
こうしたイベントが発生した瞬間、市場の確率評価は階段状に跳ね上がる。
株価が急落するのは、戦争が始まった日ではない。
「確率が再評価された日」である。
なぜ経済損失は巨大化するのか

台湾有事の核心は軍事衝突ではなく、供給停止である。
台湾は最先端半導体製造の中心地であり、ここが停止すると以下が同時に止まる。
・AI用半導体
・スマートフォン
・自動車制御チップ
・データセンター設備
・産業機械
半導体は部品ではない。
現代経済の神経系である。
複数の推計では、最悪シナリオで
・世界GDPの約10%規模の損失
・台湾GDPは40%級の急減
・アジアは深刻なリセッション
という水準が示唆されている。
さらに台湾海峡は世界海上貿易の2割超が通過する。封鎖だけでも、
・海上保険料急騰
・コンテナ運賃暴騰
・エネルギー価格上昇
が発生する。
爆撃よりも、物流と制裁の停止連鎖の方が長期的な不況を生む可能性が高い。
株価は三段階で崩れる

株式市場の反応は段階的である。
第一段階:リスクプレミアム上昇
ボラティリティ拡大。半導体・ハイテクに先行売り。指数はまだ耐える。
第二段階:封鎖・実害発生
半導体製造、電子部品、輸送株が急落。
NASDAQ主導で二桁調整。アジア株は大幅安。
第三段階:米中軍事衝突拡大
世界同時株安。信用市場収縮。流動性ショック。
リーマン級以上の需給崩壊も理論上否定できない。
指数が崩れるのは、破壊が起きた日ではなく、供給が止まると認識された日である。
資産クラス別の耐性と脆弱性

弱い可能性が高い分野:
・台湾依存度の高い半導体関連
・ハードウェア完成品メーカー
・海運・物流
・アジア製造業
相対的に耐性がある可能性:
・防衛関連
・エネルギー安全保障
・資源
・一部サイバーセキュリティ
ただし全面クラッシュ局面では、まず全て売られる。
日本市場は特に難しい。
半導体装置や電子部品が直撃する一方、円は安全通貨と地政学リスク通貨の両面を持つ。日経平均▲20〜30%級の下落も理論上は排除できない。
勝敗を分けるのは国籍ではない。
サプライチェーン上の位置である。
テールリスクの非対称性

台湾有事の確率は高くない。
しかしゼロでもない。
そして重要なのは、発生確率が10%でも、損失規模が世界GDPの1割級に達し得るという非対称性である。
これは「滅多に起きないが、起きれば巨大損失」という典型的テールリスクである。
保険料を払わずに無視するか、
保険コストを許容して備えるか。
市場は静かに再評価を始めている。
「日本では“考えないこと”が無難とされがちですが、それ自体がリスクなんですね。
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まとめ
2027年は開戦の期限ではない。
しかし能力が整う節目として、市場がリスクを意識するタイミングになり得る。
台湾有事は軍事ニュースではない。
世界経済の構造リスクである。
投資家が取るべき姿勢は明確だ。
・確率を冷静に置く
・損失規模を過小評価しない
・依存構造を把握する
リスクはゆっくり積み上がる。
崩れるときは一瞬である。
著者プロフィール

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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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