不動産販売おける「囲い込み」とは?

不動産販売における「囲い込み」とは、不動産仲介業者が売主から依頼を受けた物件について、他の仲介業者からの紹介や取引を意図的に制限し、自社での取引を独占しようとする行為を指します。この手法は、仲介手数料の両手取り(売主と買主の双方から手数料を得ること)を目的として行われることが多く、不動産業界における公正な取引を阻害する要因となっています。

囲い込みの問題は、特に不動産市場が活況を呈する都市部において顕著に見られ、売主にとっては販売機会の損失、買主にとっては選択肢の制限につながる可能性があります。

自宅を売却する際の参考にしたいので、不動産販売における囲い込みの実態について詳しく教えてください。

不動産販売における囲い込みの実態、手法、影響、対策、法的規制について詳しく解説します。

  • 囲い込みの手法
  • 囲い込みの影響
  • 囲い込みを防ぐための対策
  • 囲い込みに関する法的規制
  • 売主・買主の心構え

囲い込みの手法

囲い込みは主に以下の手法によって行われます。

物件情報の非公開・制限

不動産業者が売主から物件の販売依頼を受けた際、本来はレインズ(不動産流通標準情報システム)などに登録し、広く公開する必要があります。しかし、囲い込みの手法として、他社に対して「すでに成約済み」などと虚偽の説明を行い、競合の紹介を排除することがあります。

売主への誤った情報提供

売主に対して「市場の反応が鈍い」「価格が高すぎる」といった誤った情報を提供し、他社経由の売却機会を制限します。これにより、売主は業者が提示する条件に依存せざるを得なくなります。

内覧・交渉の制限

他の仲介業者からの内覧希望を拒否する、あるいは内覧日程を意図的に設定しないことで、他社からの買主候補が物件を閲覧できないようにします。

買主への情報制限

他の仲介業者からの買主に対して、物件情報を意図的に提供しないことで、選択肢を制限し、最終的に自社を通じた取引に誘導します。

専任媒介契約の乱用

売主と「専任媒介契約」を結ぶことで、売主が他社を通じた売却を希望しても実現しづらくなる状況を作り出します。

囲い込みの影響

囲い込みの行為は、不動産市場の健全な競争を阻害し、以下のような影響を及ぼします。

1. 売主の機会損失
囲い込みにより、より多くの買主にアプローチできないため、適正な市場価格での売却が難しくなり、売主の利益が損なわれます。

2. 買主の選択肢の減少
市場に出回るべき物件が隠されることで、買主は本来手に入るべき物件情報を知らずに、不利な条件で契約を進める可能性があります。

3. 市場の価格形成のゆがみ
囲い込みが常態化すると、特定の不動産業者が市場価格を操作し、適正な取引価格の形成が妨げられます。

4. 業界の信頼低下
透明性の欠如は、不動産業界全体への信頼を損ね、取引の公平性に対する疑念を生じさせます。

5. 法律的なリスク
囲い込みは宅地建物取引業法に違反する可能性があり、悪質な場合は行政処分や罰則の対象となることがあります。

囲い込みを防ぐための対策

囲い込みを防ぐためには、売主・買主ともに対策を講じる必要があります。

1. 複数の不動産業者と相談する
売主は、媒介契約を結ぶ際に複数の不動産業者と相談し、情報の透明性を確保することが重要です。

2. 専任媒介契約の内容を慎重に確認する
「専属専任媒介契約」ではなく、自由度の高い「一般媒介契約」を選択することで、囲い込みのリスクを回避できます。

3. レインズの登録状況を確認する
売主は、不動産業者に対してレインズへの登録証明を求め、情報が適切に公開されているかチェックしましょう。

4. 口コミや評判を確認する
不動産業者の評判や過去の取引実績を調査し、信頼できる業者を選定することが重要です。

5. 契約時の条件を明確にする
囲い込みを防ぐために、契約時に「他社経由での売却も可能」と明確に記載しておくことが推奨されます。

囲い込みに関する法的規制

日本の不動産取引では、以下の法規制が囲い込みを防ぐために定められています。

1. 宅地建物取引業法(宅建業法)
• レインズへの登録義務(専任媒介契約の場合は7日以内に登録)
• 媒介報告の義務(売主に対して定期的な報告が必要)

2. 不正競争防止法
• 虚偽の説明や情報隠蔽が不正競争行為と見なされる場合があります。

3. 行政指導と罰則
• 囲い込みが発覚した場合、指導や業務停止、免許取消などの処分が科される可能性があります。

4. 国土交通省の監視体制強化
• 近年、囲い込み防止に向けた監視体制が強化され、消費者からの苦情に迅速に対応する仕組みが整備されています。

売主・買主の心構え

囲い込みのリスクを回避するために、売主・買主の双方が以下の点を意識する必要があります。

1. 不動産取引の仕組みを理解する
基本的な媒介契約の種類や、流通プロセスを理解することで、不適切な取引を見抜く力がつきます。

2. 信頼できる業者の選定
実績や専門性に優れ、透明性の高い業者を選ぶことが重要です。

3. 契約内容の細部を確認する
曖昧な契約条件を避け、書面による詳細な確認を行いましょう。

4. 疑問があれば第三者に相談する
囲い込みの疑いがある場合、弁護士や消費者相談センターに相談することが有効です。

専属専任や専任媒介ではなく、一般媒介契約にすれば囲い込みは避けられそうですね。

そうですね。
それと、レインズの登録状況を確認させてもらうのも有効ですよ。

まとめ

  • 不動産販売における囲い込みは、売主・買主の双方にとって不利益をもたらし、市場の健全な競争を阻害する
  • 囲い込みを防ぐためには、売主・買主が正しい知識を持ち、透明性を確保する対策を講じることが重要
  • 法律の遵守や業界全体の意識改革が求められる

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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