マネロン・脱税対策強化に伴い、海外からの送金が“資金の出所不明”として日本の銀行で拒否されるケースが急増中

日本の銀行が、海外の保険・ファンド・証券口座などの満期払戻金を受け取ることを拒否する事例が相次いでいる。背景には、マネーロンダリング(AML)やテロ資金供与対策(CFT)を巡る国際的な規制強化と、それに基づく金融庁の監督指導がある。

特に問題とされているのは、送金元が「正当な金融機関であるか」や、「顧客がその資金の所有権を証明できるか」「税務申告との整合性が取れているか」という観点で、日本の銀行側がリスクを避ける形で“着金拒否”する事態である。

どうして海外からの送金が拒否されるケースが急増しているのですか?

その理由について、以下で解説します。

  • ① 背景:FATF勧告と日本のAML規制強化
  • ② 問題点:日本の銀行の「対応過敏」と、顧客不利益
  • ③ 銀行の立場:金融庁の検査リスクと口座凍結回避
  • ④ 顧客側の課題:説明責任と事前対策の必要性
  • ⑤ 今後の対応策:受取体制の事前整備と専門家の活用

① 背景:FATF勧告と日本のAML規制強化

• 日本は国際機関**FATF(金融活動作業部会)**の定期審査で、マネロン対策の遅れを指摘されてきた。
• 2021年のFATF対日審査以降、金融庁は金融機関に対し、送金受入時の厳格な本人確認・資金出所確認を指導。
• 特に、**海外のファンドや保険会社からの送金(特にオフショア金融センター)**は、「ハイリスク取引」とみなされ、受入の判断が保留・拒否される傾向が強まっている。

② 問題点:日本の銀行の「対応過敏」と、顧客不利益

• 正当な満期金(例:海外の終身保険の解約払戻、オフショアファンドの償還金)であっても、日本の銀行が一方的に**「不明確な資金」や「リスクの高い送金」**と判断し、着金拒否。
• 送金目的が「投資資金の回収」であっても、「贈与」「相続」などと誤認されやすく、追加書類(契約書、利回り証明、税務処理証明など)を求められる。
• 結果的に、海外からの正当な送金が何週間も足止めされるケースも。

③ 銀行の立場:金融庁の検査リスクと口座凍結回避

• 日本の銀行も、金融庁のAML検査で「不適切な送金受入」が発覚すると、業務改善命令や罰則の対象になる。
• よって銀行としては、「リスクの高い送金は一律拒否」または「強い本人確認と税務証明書を要求」するのが無難と考えている。
• 特に、ケイマン諸島、BVI、スイス、シンガポール、ドバイなどの金融機関からの送金は、リスク国指定により慎重に扱われる。

④ 顧客側の課題:説明責任と事前対策の必要性

• 顧客が受取人として「資金の合法性」を説明できる書類を備えていないと、銀行のリスク判断で拒否される。
• 具体的には:
• 海外契約書の和訳
• 送金依頼書
• 解約通知
• 税務処理(確定申告書、源泉証明等)
• CRS(共通報告基準)登録情報
• また、海外口座から“他人名義”や“法人名義”で送金されると、受取拒否されるリスクが高い。

⑤ 今後の対応策:受取体制の事前整備と専門家の活用

• 今後、以下のような事前準備が重要となる

海外保険の払戻金も日本で受け取れないのですか?

事前準備と説明書類があれば可能です。

まとめ

  • 日本の金融機関は、金融庁やFATFの監督により、海外送金への対応を著しく厳格化している
  • とりわけ、オフショア投資商品や保険の満期金の送金は、マネロンや税逃れと誤解されやすく、個人が直接対応すると着金拒否される可能性が高い
  • 今後は、送金前に銀行に事前相談し、必要な書類を準備した上で、適切なルートで受取ることが極めて重要
  • また、国際資産を扱う専門家の支援を受けることで、こうしたリスクを回避し、合法的な資金移動を円滑に進めることが可能になる

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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