「バーキン、ジュエリー、限定LV──“投資ファッション”に群がる心理と企業戦略

総論:ファッションが「金融商品」へと変わった時代

かつてファッションは自己表現であり、瞬間の美学であった。しかし今日では、バーキンやロレックス、ヴィトンの限定シリーズ、カルティエのダイヤモンドジュエリーが「資産運用」「値上がり益」を目的に取引される。
この変化は、単なる嗜好の問題ではない。低金利時代の余剰資金、インフレによる実物資産志向、SNSによる可視化と自己ブランド化──複数の社会現象が交錯した結果である。つまり、「美」よりも「保値性」「再販価格」こそが購買の理由となった時代だ。

  • 投資としてのファッション:現代の“代替資産”
  • SNSと「資産価値の見せびらかし」経済
  • ブランド側の戦略:人工的な「需給ひっ迫」の設計
  • ファッション投資家の思想:「審美」より「リターン」
  • 企業が仕掛ける“物語資本”と購買中毒

投資としてのファッション:現代の“代替資産”

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バーキンが象徴するのは、もはやバッグではなく「限定供給×希少価値×取引市場」の三位一体モデルだ。
新作が直営店で定価200万円台でも、二次流通市場では400万円、特別色やクロコ素材では1,000万円を超えることもある。
この価格形成は、株や債券のように需給が明確で、オークションサイトや専門ディーラーがマーケットを形成している点で“リアルアセット”に近い。
購入者の多くは「一生モノだから」ではなく、「価値が落ちない」「むしろ上がるから」という理由で買う。もはや**“ファッション”ではなく“ポータブル資産”**なのである。

また、ダイヤモンドやゴールドを使ったジュエリーも同様の文脈にある。カルティエやヴァンクリーフの定番コレクションは、素材価格よりも「ブランドプレミアム」が上乗せされる一方で、世界的インフレ局面ではその価格改定が年に数回行われ、ブランドが自ら“インフレヘッジ資産”の顔を強化している。

SNSと「資産価値の見せびらかし」経済

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インスタグラムやXでは、もはやフォロワー数以上に「所有物の格」が社会的信用を左右する。
バーキンを複数所有するインフルエンサーは、経済力やセンスだけでなく「投資のセンス」を象徴する存在として扱われる。
ブランド側もこれを利用する。新作は限られた招待客にしか販売されず、「入手困難であること」自体がマーケティング資源になる。
これは金融で言う“プライベートプレースメント(限定配分)”と同様の手法であり、「誰に売るか」こそがブランド価値を決める。
エルメスの販売員が顧客の購買履歴や職業、SNS露出まで確認して“顧客選別”を行うのは、単なる接客ではなく“投資家選別”なのである。

ブランド側の戦略:人工的な「需給ひっ迫」の設計

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エルメス、ルイ・ヴィトン、ロレックスなど超一流ブランドの価格戦略には、明確な投資論理がある。
彼らは供給を絞り、販売制限を設け、在庫を市場に流さない。結果として、「買えない人が増えるほど、買えた人の資産価値が上がる」構造が生まれる。
この手法は経済学的には**“人工的なスキャーシティ(希少性)”であり、まさにリミテッド・エディション経済の核である。
さらに、各ブランドは毎年少しずつ価格を引き上げ、「買えない層」を増やしながら、富裕層の“防衛本能”を刺激する。
──「今買わなければ、来年はもっと高くなる」。
この心理がブランドの価格改定を支える最強のプロパガンダだ。
ヴィトンやシャネルの年数回の値上げは、単なるインフレ対応ではなく、“値上がり期待を演出する金融マーケティング”**なのだ。

ファッション投資家の思想:「審美」より「リターン」

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この新しい層は、感性よりもリターンで動く。
かつてコレクターが芸術を愛でたように、彼らは「リセール価格」を鑑賞する。
持ち物を並べる棚は、アートギャラリーではなくバランスシートであり、バッグの購入日は“取得日”、販売日は“売却日”と記録される。
また、これを支えるのが“共有経済”である。メルカリやStockX、Vestiaire Collectiveなど、再販を前提としたマーケットが整備され、ファッションを「流動性資産」として扱う仕組みが整った。
この結果、個人投資家が株の代わりにバッグを買い、ジュエリーを金地金の代替とみなす現象が生まれた。
つまり、美の民主化ではなく、投資対象としての民主化が起きている。

企業が仕掛ける“物語資本”と購買中毒

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しかしブランドが真に売っているのはモノではなく「ストーリー」である。
バーキン誕生の逸話(ジェーン・バーキンとデュマの偶然の出会い)、ヴァンクリーフの「幸運を呼ぶ四つ葉」、ヴィトンの旅の哲学──それぞれが購入者の自己物語を補強するナラティブ資産である。
顧客は製品を買うのではなく、「自分が選ばれた」という感覚を買っている。
この構造は、アートやNFTの“物語投資”に極めて近い。
企業は単に商品を限定するだけでなく、希少な「物語」を付加して価格を維持する。
──「私が買ったのは単なるバーキンではなく、エルメスの哲学だ」という自己肯定が、次の購買を呼ぶ。
つまり、ブランドは欲望ではなく“自己認識”を売っているのだ。

ブランドの歴史を買っているのか、購買欲を満たしているだけなのか…

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まとめ:投資ファッションが映す現代の虚像と真実

ファッションが投資化した時代、消費はもはや浪費ではない。
だが、そこにあるのは実用でも美でもなく、「希少性を通じて他者に勝つ」ための資産競争である。
バーキンを買う人々は、美を愛する人ではなく、価値を支配したい人だ。
ブランド企業はその欲望を精密に設計し、人工的な不足、限定、ストーリーで市場を操る。
──ファッションの本質は「装うこと」から「資産を誇示すること」へと変質した。
それは、人間の欲望がいかに金融的で、いかに社会的承認に依存しているかを映す鏡である。

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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