日本の大手銀行が提供するプライベートバンキング（PB）は、相続や不動産を中心とした国内サービスに強みを持ちますが、国際的な資産承継やクロスボーダー投資には限界があります。そのため、数十億円単位の資産を持つ日本の富裕層や経営者ファミリーの一部は、外資系プライベートバンク（スイスやシンガポール）を積極的に活用しています。
外資系PBは、国際税務、信託設計、ファミリーオフィス支援など、日本の銀行では提供できない高度なサービスを提供します。ここでは、日本の富裕層がどのように外資系PBを使っているのか、5つの典型事例を通じて具体的に整理します。
- シンガポールでの口座開設
- スイスPBを通じた資産防衛
- ファミリーオフィス設立支援
- クロスボーダー相続と税務戦略
- 慈善活動・社会貢献の支援
シンガポールでの口座開設
日本の富裕層がまず直面するのは、資産の分散と国際化です。たとえば、ある企業オーナーが国内で会社を売却し、数十億円規模のキャッシュを得たとします。国内銀行に預けるだけでは相続税や為替リスクへの対応が難しいため、シンガポールのUBSやクレディ・スイスのPB口座を開設するケースがあります。
• メリット
• シンガポールは政治的安定性が高く、富裕層資産の国際ハブとして世界中から資金が集まっている。
• シンガポールのPB口座を持つことで、米ドルやユーロ建て資産を直接保有可能。
• 日本国内に偏っていた資産を国際的に分散できる。
• 利用者像
製造業を売却したオーナー、IPO後にまとまったキャッシュを得た創業者、国内で資産集中を懸念する医療法人経営者など。
スイスPBを通じた資産防衛
超富裕層の中には、資産秘匿と長期保全を目的にスイスPBを利用するケースがあります。スイスは16世紀以来の銀行秘密保持の歴史を持ち、伝統的に「富を守る場所」として知られています。
• 典型事例
首都圏で不動産開発を行い巨額の資産を築いた家族が、資産の一部をスイスPBに移す。
現地では、株式や債券だけでなく、プライベートエクイティやコモディティファンドなどに分散投資。
• 特徴
• スイスのPBは「家族単位の担当制」を取り、親から子、孫へと資産を継承する仕組みを備える。
• 日本国内の金融機関にない「数百年単位の富の維持」に特化。
• 富裕層にとっては「資産の保険」のような存在。
ファミリーオフィス設立支援
外資系PBの最大の強みは、ファミリーオフィスの設立・運営支援です。ファミリーオフィスとは、富裕層ファミリーが自分たちの資産管理を一元化するための仕組みで、投資、税務、慈善活動、教育までを包括します。
• 日本人事例
ある大手IT企業創業者が会社売却後、シンガポールに家族単位のファミリーオフィスを設立。
PBが設立手続き、法務・税務のアドバイスを行い、さらに投資チームをアサイン。
富裕層向けの「ファミリー憲章（家族の資産哲学・教育方針）」策定まで支援。
• メリット
• 相続税が高い日本では難しい「世代を超えた資産維持」を、国際的に仕組化できる。
• 子や孫世代への教育プログラムを通じて「富を守る文化」を継承可能。
• 慈善財団や寄付活動を組み込むことで社会的信用も高まる。
クロスボーダー相続と税務戦略
日本の富裕層の中には、子や孫がすでに海外に居住しているケースが増えています。この場合、相続・贈与は複数国の税制にまたがるため、国内PBでは対応が困難です。
• 典型的活用
• シンガポールに住む子供に資産を分け与えるため、外資系PBを通じて国際信託を設立。
• 日本の相続税とシンガポールの税制を組み合わせて、最適化した遺産承継を実現。
• 米国在住の子供がいる場合には、米国税法の専門家も交えてプランニング。
• 外資系PBの強み
外資系PBは国際税務・法務に精通した弁護士・会計士ネットワークを持ち、複雑なクロスボーダー承継を包括的に処理可能。
慈善活動・社会貢献の支援
近年は日本の富裕層の間でも、単なる資産管理だけでなく「社会的意義」を重視する動きが強まっています。外資系PBは、慈善活動やインパクト投資を組み込む仕組みを持っています。
• 事例
• 製薬会社を売却した日本人創業家が、シンガポールPBを通じてアジアの教育基金を設立。
• スイスPBに口座を持つ美術収集家が、財団を設立し、コレクションを将来世代に残す計画を策定。
• メリット
• PBが財団運営・寄付活動の事務局機能を担うため、透明性と効率性を確保。
• 家族に「社会的役割」を与えることで、資産承継に伴う内部分裂を防ぐ。
• 次世代が「富を社会のために使う文化」を自然に受け継ぐ。
日本では暴力的な税率で徴収されますから、様々な対策が必要ですね。
ただプライベートバンクは資産が数十億円規模になってからでないと手数料負けして旨味がありません。まずはそこを目指して、オフショアファンドを活用しましょう。
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まとめ
日本のPBは国内資産の管理に強みを持ちますが、国際的な資産承継・投資・文化形成においては限界があります。そこで、一部の日本の超富裕層はシンガポールやスイスの外資系PBを活用し、
• 資産の国際分散（シンガポール口座）
• 富の長期保全（スイスPB）
• ファミリーオフィス設立支援
• クロスボーダー相続・税務戦略
• 慈善活動・社会貢献の仕組化
といった高度なサービスを利用しています。これは単なる資産運用を超え、**「家族の哲学を形にし、世代を超えて富を維持する仕組み」**にほかなりません。
日本の富裕層が外資系PBを活用するのは、「資産を守る」ためであると同時に、「富を次世代にどう伝えるか」という根源的な問いに向き合う手段でもあります。今後は、日本のPBと外資系PBの併用がますます進み、国内外の資産戦略を組み合わせるのが標準的な富裕層戦略になると予想されます。
著者プロフィール
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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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