SNS時代の「見せる稼ぎ」と「見られるリスク」──国税とインフルエンサーの静かな消耗戦

インスタグラム、YouTube、TikTok。
個人が簡単に「影響力」と「収益」を得られる時代になった一方で、その可視性は同時に国家にとって最も都合のいい監視装置にもなった。

フォロワーを増やすためには、贅沢、ブランド、海外、高級車、タワマン、非日常を“演出”しなければならない。だが、その演出は「申告所得」と必ずしも整合しない。
ここに、SNSで生きる個人と、SNSを見る国税という、構造的に避けられない対立が生まれている。

これは善悪の問題ではない。
露出しなければ稼げず、露出すれば狙われるという、制度とアルゴリズムが生んだ必然的な戦いだ。

  • 国税は「告発」よりも「自己開示」を待っている
  • インフルエンサーは“貧乏そう”では生き残れない
  • 問題は脱税そのものではなく「雑な金の流れ」
  • 国税は「全員」を見ているわけではない
  • この戦いに勝者はいない

国税は「告発」よりも「自己開示」を待っている

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かつて脱税摘発は、内部告発や帳簿の矛盾から始まった。
しかし今は違う。本人が自ら証拠を世界にばらまいている。

・毎週のように海外旅行
・数百万円の時計やバッグ
・高級レストラン、VIP席、ファーストクラス
・「自由な生活」「会社員には戻れない」

これらはすべて、国税側から見れば調査開始のトリガーに過ぎない。
SNSは「監視」ではなく、「事前整理された資料集」になっている。

重要なのは、国税は感情で動かないという点だ。
数字が合わなければ、ただ淡々と来る。

インフルエンサーは“貧乏そう”では生き残れない

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一方で、発信者側にも逃げ場はない。

地味な生活、節約、堅実さでは、アルゴリズムに拾われない。
フォロワーが求めているのは「再現可能な現実」ではなく、
**「手が届きそうで届かない幻想」**だ。

つまりインフルエンサーとは、
・消費の象徴であり
・成功の演出装置であり
・広告主の顔でもある

この構造の中で、「税務的に安全な見せ方」など存在しない。
稼ぐために見せ、見せることでリスクを積む。
これは職業リスクではなく、職業そのものだ。

問題は脱税そのものではなく「雑な金の流れ」

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国税が本当に嫌うのは、ブランド品でも豪遊でもない。
嫌われるのは、説明できない金の流れだ。

・広告収入がどこから入っているのか不明
・案件報酬が個人口座にバラバラに着金
・仮想通貨、海外送金、個人間決済の混在
・経費と私費の境界が曖昧

SNSで稼ぐ人の多くは、
「稼ぐ力」はあっても「管理する力」がない。

結果として、
贅沢をしているから狙われるのではなく、
整理されていないから拾われる。

国税は「全員」を見ているわけではない

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誤解されがちだが、国税は暇ではない。
全インフルエンサーをチェックすることなど不可能だ。

では、誰が選ばれるのか。
答えはシンプルで、
・目立つ
・伸びている
・生活と申告が乖離していそう
この三点が揃ったときだけ、リストに載る。

つまり、
「そこそこ稼いで、そこそこ隠れている人」は
案外、何も起きない。

問題になるのは、
自己演出が過剰で、裏側が雑な人間だ。

この戦いに勝者はいない

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この構図に、完全な勝者はいない。

・インフルエンサーは露出をやめた瞬間に価値を失う
・国税は取り切れないグレーゾーンを常に抱える

だからこの戦いは、
「捕まえる vs 逃げる」ではなく、
「どこまで見せ、どこまで整えるか」の調整戦になる。

賢い発信者ほど、
・見せるものと
・実務を
・人格を
きれいに分離している。

SNSはビジネスに活用できるけど、リスクもありますね。

正しく税務申告していればいいだけですから、あまり気負いする必要はないと思います。

まとめ

SNS時代の本質は、「自由」ではない。
可視性の取引だ。

影響力を得る代わりに、生活は透過される。
注目を集める代わりに、説明責任が増える。

脱税するかどうかではなく、
“説明できる人生設計になっているか”
それが、この時代を生き残れるかどうかの分岐点だ。

派手に生きること自体が問題なのではない。
派手さに見合う構造を持たないまま、
「自由」を語ることが、最も危うい。

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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