なぜアラン・グリーンスパンは長期政権を築けたのに、近年のFRB議長は短期間で交代していくのか

米国の中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)の議長職は、表向きには制度的に安定したポジションに見える。しかし歴史を振り返ると、1987年から2006年まで約19年にわたり議長を務めたアラン・グリーンスパンの存在は、むしろ例外的であり、現在の短期交代傾向の方が制度本来の姿に近い。
本稿では、①制度設計、②政治環境、③金融政策の難易度、④市場とメディアの変質、⑤中央銀行観の変化、という5つの観点から、この「長期政権が成立しなくなった理由」を整理する。

  • グリーンスパン時代は「制度の想定外」だった
  • 中央銀行の政治的中立性が揺らいだ
  • 金融政策の難易度が別次元に上がった
  • 市場とメディアの変質
  • 「万能な中央銀行」という幻想の終焉

グリーンスパン時代は「制度の想定外」だった

ジョージ・H・W・ブッシュとロナルド・レーガン、どっちがより右翼で、どっちがより保守的だった? : r/Presidents

FRB議長の任期は法律上4年であり、再任は可能だが自動ではない。つまり、長期政権は制度が予定した姿ではない。
グリーンスパンが約19年も在任できた背景には、レーガン政権からブッシュ(子)政権に至るまで、政権交代をまたいで再任され続けたという特殊事情がある。当時の米国経済は、インフレ抑制を最重要課題としつつも、金融政策の主な手段は政策金利にほぼ集約されていた。
加えて、1987年のブラックマンデーやITバブル崩壊などの局面でも、致命的な金融崩壊を回避したことで、グリーンスパンは「市場を知り尽くした賢人」として神話化された。これは個人の能力というより、環境と役割が比較的単純だった時代性による部分が大きい。

中央銀行の政治的中立性が揺らいだ

FRB議長、利下げに道 「慎重に進める」とも | ロイター

近年、FRB議長が長期政権を築けなくなった最大の要因の一つが、金融政策の政治化である。
かつてFRBは「政治から距離を置いた専門家集団」として尊重されてきたが、現在では大統領や議会が金融政策に直接的な言及を行うことが珍しくない。金利政策は選挙、雇用、株価と密接に結びつき、「政治的成果」として利用されやすくなった。
この結果、議長は「独立した調整役」ではなく、「政権の政策運営と市場の板挟みになる存在」へと変質している。再任は能力評価というより、政治的都合に左右されやすくなった。

金融政策の難易度が別次元に上がった

米FRB ゼロ金利と量的緩和の現状維持を決定 - YouTube

グリーンスパン時代の金融政策は、景気循環とインフレ管理が中心だった。一方、2008年の金融危機以降、FRBの役割は劇的に拡張された。
量的緩和(QE)、ゼロ金利政策、バランスシートの急拡大、コロナ対応、歴史的インフレ、さらには地政学リスクや財政赤字との関係整理まで、議長が背負う課題は多層化している。
この環境では、どの選択肢を取っても必ず副作用が生じ、結果として「成功」が評価されにくい。長期在任は、功績を積み重ねるよりも、批判を積み上げる期間になりやすい。

市場とメディアの変質

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市場参加者と情報環境の変化も見逃せない。
グリーンスパン時代、市場はFRBの発言を「解釈する対象」として受け止めていたが、現在はSNSや即時報道により、発言は瞬時に評価・批判・拡散される。
FRB議長は、単なる政策決定者ではなく「常時評価される象徴的存在」となった。市場の変動が起きれば、その原因は即座にFRB議長個人に帰属される。この構造では、長期政権はリスクでしかなくなる。

「万能な中央銀行」という幻想の終焉

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最も本質的な変化は、中央銀行に対する期待そのものが変わった点にある。
かつては「FRBが適切に舵取りすれば経済は安定する」という信仰が存在した。しかし現在、金融政策だけで構造的問題を解決できないことは明白である。
財政政策、産業政策、地政学、人口動態といった問題が絡み合う中で、FRB議長は「解決者」ではなく「時間を稼ぐ存在」に近づいている。この役割において、長期在任は必須ではない。

SNSやメディアの移り変わりで時代の変化が早くなっているので、それに合わせてFRB議長が交代していくのは仕方のないことですね。

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まとめ

アラン・グリーンスパンの長期政権は、個人の卓越性というより、時代環境と中央銀行への期待が生んだ例外である。現在のFRB議長が短期間で交代していくのは、制度の正常化であり、むしろ合理的な帰結だ。
中央銀行が万能ではない時代において、議長は「英雄」ではなく「消耗する調整役」となった。
この現実を理解することが、現代の金融政策と市場を読み解く第一歩になる。

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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