こんにちは、K2 College河合です。
本日は第3次売出を発表した日本郵政について解説します。2015年11月に上場してから、政府保有分を徐々に市場に売却していった経緯を見返しながら、これに投資していいのかどうか?を判断しようと思います。
私もIPOの時には思わず買ってしまいましたが、結局売り損ねて今塩漬けになっています・・・。
上場したタイミングは良かったので、その時に少しでも上がった状態で売らないといけなかったですね。NTTなどこれまでも同じような結果になっていますが、時代も変わり、若い投資家にはこの経験がないですよね。
- 動画解説
- 日本郵政のこれまでの株価
- 売出(公募)の原理
- 証券会社の役割(アンダーライティング)
動画解説
日本郵政のこれまでの株価
まずは2015年11月上場来のこれまでの株価を見てみましょう。
上場時の公募価格は1400円。初値はそれを大きく上回る1631円(+16.5%)。その後2000円をつけるも、セオリー通り公募価格を割るまで急落し、それ以降は公募価格を上回るようなら、個人投資家の売りが入り、株価は低迷・・・2021年10月時点で900円近辺に推移しています。
同じタイミングで上場したゆうちょ銀行、かんぽ生命の株価もチェックしておきましょう。
ゆうちょ銀行:1450円
かんぽ生命:2200円
が公募価格でしたから、3銘柄全て2021年10月現在損をしていることになります(これだけ不祥事あったにも関わらず、かんぽ生命はまだ保っていますね)。いずれも初値だけ良く、その後市場で売買できるようになったら利益確定売りが大量に発生し、今なお売りたい個人投資家が株価の上昇を抑えていることがわかります(そもそも上昇要因がないのかもしれませんが)。
なんだかどれも同じようなチャートですね。わかっていたら、絶対に最初に値がついた時点で売っていたのに・・・。
上場時で言えばその通りで、すぐに売却しないといけません。ただ公募株が売却できるようになったとしても、公募価格と比べて損をしているケースがかなり多いので、売るタイミングもありません。
売出(公募)の原理
そもそも公募というのを理解していますか?公募(Public Offering)というのは今回だと政府が持っていた市場に出ていない株式を市場(今回だと海外の機関投資家が2割、国内個人投資家が残り8割)へ売出しを行うということです。普通に考えて、これまで市場に出てこなかった安定株主がそれを「売る」ということなので、売買できる株式が市場に出てくるという意味では株価の下げ要因となります。
公募価格を決める際には、主幹事となる証券会社が市場でのデマンド調査(ブックビルディング)をし、それに基づいて公募価格が決められます。ただ調査といっても人気投票的な曖昧なものなので、市場に出たら大きく差が開いた初値が付くことが多いです。
上場企業としては株価が上向きな方が企業イメージがいいので、公募価格は抑えたい。けれど売り出す大株主はその値段で自分の株を売ることになるので、できるだけ高い方がいい。この相反する2者が話し合い決めることになります。
今回の場合、3社合計で1兆4000億円の売出しとなり、時価総額は約12兆円とソフトバンクグループを超え、株主数は3社合計で100万人とトヨタ自動車の2倍と「21世紀最大の新規上場案件」でしたから、そんな数の新しい株主が公募後売りを殺到したら、株価が下がるのは目に見えてるわけです。
それなら公募価格を安く設定してもらわないと、投資家にはメリットがないですよね?
全くその通りなんですけど、そこに金融のプロと素人投資家のリテラシーの差があります。日本郵政株を公募で買うようなのは全国にいる素人投資家ですから、そこへ証券マンが名前だけで安心して買ってもらえればそれで日本政府としてはOKなんです。
証券会社の役割(アンダーライティング)
証券会社は一般的に株を売買する場所、投資信託を買う場所として知られていますが、こうした公募株や新規発行債券を個人投資家に売ることも仕事としています。その際、投資家は購入手数料を払わなくてもいいとなってますが、手数料なしで成り立つビジネスなんて存在しませんから、価格に手数料が乗っていると考えるのが妥当ですよね。もしくは発行体(政府、企業側)から手数料をもらっていると考えてもいいです。
こうした公募の引き受けビジネスをアンダーライティングと言いますが、この場合の顧客というのは政府や企業ですよね?個人投資家は手数料を払っているわけではありませんから、顧客ではありません。けれど証券会社は全国に個人投資家の口座を持っていますから、この人達に顧客である政府、企業の保有している株(もしくは資金調達したい時の債券)を引き受けて売り捌くというビジネスが成り立ちます。
気づきましたか?顧客の利益最大化を図ることが第一ですから、公募の場合、顧客である政府側、企業側に有意な条件をつけることが自然の流れとなります。ということで公募株には決して手を出さないでくださいね。
なお今回の第3次公募の主幹事証券は国内だと大和証券、みずほ証券、SMBC日興証券、海外ではゴールドマン・サックス証券、BofA証券、JPモルガン証券です。まだ野村外しが続いているようですね。
手数料なしで、しかも希少価値のある公募株を買えることは得なことだとばかり思ってました・・・。
確かに新規上場(IPO)株はこれまで買いたくても買えなかった投資家が「買い」を出しますから、上場前の株を手に入れた投資家が儲かる可能性は高いんです。なので証券会社と付き合うとすれば、IPOだけでPO(公募)は付き合わないようにしましょう(とはいえIPOが欲しければ、POも普段から買っておかないともらえないことが多いですが)。
まとめ
- 公募は発行体企業(政府)のためにある
- 新規上場(IPO)はOK、公募(PO)には手を出すな
- 日本郵政第3次公募には絶対に手を出すな
証券会社の営業マンにこう勧誘された、これまでに買ってしまった公募株はどうしたらいい?など個別の相談があれば、いつでもお気軽にこちら直接相談(無料)からご連絡ください。
著者プロフィール
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<経歴>
青山学院大学国際政治経済学部国際経営学科ファイナンスコース卒業
中国天津南開大学漢語語言学院留学
野村證券にて4年半勤務、2008年リーマン・ショックの前日に退社
プライベートバンクを経て、2009年K2 Investment設立
2014年ボストン留学、2018年Paris留学
現在、K2 Holdings会長
<趣味>
ダイビング、クルージング、自然
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