2025年現在、東京の中古不動産市場は長引く価格上昇局面の中でも特に「選別的高騰」と「需給ひっ迫」に注目が集まっています。首都圏全体で見れば価格の上昇は鈍化しつつあるものの、東京23区、特に都心5区(千代田・中央・港・渋谷・新宿)では依然として過去最高水準の価格が維持されています。背景には新築供給の減少、建築コストの高騰、円安による海外資金の流入などがあり、中古市場にも波及しています。
また、金利上昇が取り沙汰される中でも住宅ローン金利が比較的低位にとどまっていることや、富裕層の“実物資産志向”が継続していることで、中古物件に対する購入意欲は底堅い状況です。一方で、所得が伸び悩む一般層にとっては価格の上昇が購入意欲を削ぐ要因となっており、市場は明確に“二極化”の様相を呈しています。
東京の中古不動産市場について詳しく教えてください。
以下で詳しく解説します。
- ① 中古マンション価格の高止まり:平均価格と単価は過去最高水準へ
- ② 供給の逼迫と在庫の減少:新築減少が中古市場に波及
- ③ 海外投資と円安効果:東京中古市場にもグローバルマネーが流入
- ④ 実需層との乖離と二極化:郊外との価格差が拡大
- ⑤ 金利動向と今後の見通し:高値圏維持も上昇余地は限定的か
① 中古マンション価格の高止まり:平均価格と単価は過去最高水準へ

不動産流通推進センターやREINS(東日本不動産流通機構)のデータによると、2025年4月時点の首都圏における中古マンションの平均成約価格は約5,047万円、前年比+0.6%と緩やかながら上昇を続けています。価格の伸びは鈍化していますが、1㎡あたりの単価は81.1万円(前年比+3.9%)と過去最高を更新。これは1990年のバブル期を上回る水準です。
特に東京23区の単価は124.9万円に達し、中央区では161万円/㎡を超える水準で取引されているなど、都心部では㎡単価100万円超が常態化しています。これは主に、高額物件の売買が平均値を押し上げている構造であり、「一部の富裕層エリアの高騰」が全体平均を牽引している状況です。
② 供給の逼迫と在庫の減少:新築減少が中古市場に波及

中古市場の価格上昇には、新築マンション供給の停滞も大きく影響しています。東京都内では建築コストや土地取得価格の高騰、人手不足などを背景に新築マンションの着工件数が減少。新築供給の停滞は、そのまま中古物件への需要流入を招いています。
同時に、中古物件の新規登録件数も減少傾向にあり、2025年4月には前年同月比で▲6.0%、在庫件数も▲4.4%と12カ月連続で減少しました。成約件数が前年比+21.5%と活発な一方で、供給側の物件不足が続いており、需給バランスの面から価格を下支えする要因になっています。
③ 海外投資と円安効果:東京中古市場にもグローバルマネーが流入

東京の不動産市場には、2022年以降の急速な円安を受けて、アジアや中東の富裕層、さらにはグローバルファンド(例:Blackstone, Morgan Stanley)による投資資金が継続的に流入しています。これまでは主に新築・再開発プロジェクトへの資金投下が目立っていましたが、最近では中古物件にも関心が広がっています。
特に、都心の好立地で管理状態の良好な物件や、高級タワーマンションの中層~上層階、利便性の高い駅近物件などがターゲットとなっており、外貨建てで見ると依然として“割安”な投資対象と評価されています。このグローバルな視点からの「資産選別」が、中古市場の価格を底支えする力になっています。
④ 実需層との乖離と二極化:郊外との価格差が拡大

価格上昇の一方で、都心部における中古物件の高騰は、一般的な実需層にとって大きな負担となっています。年収500~700万円クラスの家庭にとって、都心の1LDK〜2LDKの中古マンションでさえ手が届かない価格帯に突入しており、実需層は東京郊外や近県(埼玉・千葉・神奈川)へシフトする傾向を強めています。
一方、郊外では価格の上昇は鈍化、もしくは横ばい傾向にあり、修繕積立不足や築古物件の資産価値下落も進行しています。こうした背景から、“高値圏を維持する都心中古”と“値下がりやすい郊外中古”という二極構造がますます明確化しており、市場の分断は今後さらに進行する可能性があります。
⑤ 金利動向と今後の見通し:高値圏維持も上昇余地は限定的か

今後の見通しとしては、しばらくは現在の高値圏を維持するが、価格上昇の勢いは鈍化する可能性が高いと考えられています。住宅ローン金利が上昇すれば、特に実需層の購買意欲が減退するため、市場全体の取引量が低下することが懸念されます。
また、不動産価格が上がり続ける一方で、賃料上昇はそこまで追いついておらず、収益還元法によるバリュエーションでは「過熱」の兆しも指摘されています。今後は、
• 金利上昇幅とタイミング、
• 日銀の金融政策転換、
• 海外投資資金の流出入、
• 消費税や固定資産税などの税制改正の有無
などが市場に影響を与える可能性があります。ただし、都心5区のようなブランド力の高いエリアは、多少の逆風でも資産価値を維持しやすく、依然として「選ばれる資産」としての地位を保ち続けるでしょう。
東京の中古不動産を購入する場合に、気を付けることは何ですか?
「資産としての安定性」「将来の賃料利回り」「維持管理コスト」などを総合的に評価することが、成功の鍵となります。
まとめ
- 東京の中古不動産市場は、全体として見れば「高値圏での安定推移」を続けていますが、その内実は極めて複雑
- 1. 価格は横ばい〜緩やかな上昇だが、㎡単価は過去最高水準
- 2. 在庫は継続的に減少し、需給はタイトな状況
- 3. 海外投資マネーと円安が中古市場にも影響を与えている
- 4. 実需層と投資対象エリアで明確な二極化が進行中
- 5. 金利動向・経済情勢次第では、調整局面も想定される
著者プロフィール

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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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