ビットコインETF(上場投資信託)は、暗号資産ビットコインの価格に連動する金融商品で、従来の証券口座から直接売買できる点が最大の魅力です。特に「現物型ETF(スポットETF)」は、実際にビットコインを保有して価格に連動させるもので、これまで米証券取引委員会(SEC)は、操作リスクなどを理由に長年承認を拒んできました。
しかし、2024年1月、BlackRock、Fidelity、ARK、VanEckなどによる申請が相次ぐ中、SECはこれらスポット型ETF11本を一括承認。暗号資産市場における「歴史的転換点」として注目されました。この承認は、従来の投資家(機関投資家、退職年金基金、個人投資家など)が、より安全かつ規制下の金融インフラ経由でビットコインにアクセスできるようになったことを意味します。
ビットコインETFについて教えてください。
以下で解説していきます。
- 【1】主要ETFとその特徴:低コスト競争が鍵に
- 【2】価格推移:ETF承認後のビットコインはどう動いたか
- 【3】ETF市場の成長とフロー動向
- 【4】海外での動き:香港・欧州・カナダとの比較
- 【5】今後の展望とリスク要因
【1】主要ETFとその特徴:低コスト競争が鍵に

2024年1月に承認された主なスポット型ビットコインETFは以上のとおりです(2025年7月時点)。
特に注目されたのは、BlackRockのIBITとFidelityのFBTCです。IBITは2024年内で最も多くの資金を集め、取引量、スプレッド、運用資産額すべてでトップクラスに成長。GrayscaleのGBTCは元々私募型の信託で市場シェアを誇っていましたが、手数料の高さと流動性の課題から一部の投資家は低コストETFへ移行しました。
【2】価格推移:ETF承認後のビットコインはどう動いたか

ETF承認直前の2024年1月、ビットコインは約46,000ドルで推移していました。承認発表と同時に大きく上昇を始め、2024年3月には過去最高値を更新し、73,000ドル台に到達。以下のような推移が見られました:
• 2024年1月10日:ETF承認(BTC価格:46,000ドル前後)
• 2024年3月:73,000ドル超で史上最高値更新
• 2024年12月:一時的に100,000ドル突破
• 2025年6月末:120,000ドル前後を推移
• 2025年7月中旬:最高値122,838ドルを記録
• 2025年7月25日現在:118,000〜119,000ドル台
この価格上昇の背景には、
• ETF経由での機関投資家の資金流入(IRAや401(k)なども含む)
• トランプ政権下での暗号資産に対する規制緩和期待
• FRBの金利政策転換(利下げ示唆)
• ETFプロバイダー間の手数料競争による普及加速
などが挙げられます。結果として、ビットコイン市場は「投機商品」から「準金融商品」へと位置付けが変化しつつあります。
【3】ETF市場の成長とフロー動向

SEC承認から半年で、ETF市場への純資金流入は合計で150億ドル超とされ、うちIBITだけで**500億ドル規模のAUM(運用資産額)**を達成しました。ETFを通じたビットコイン保有量は急速に増加し、オンチェーンデータではETFによるビットコイン実需が市場供給の抑制要因となっているとの分析もあります。
さらに以下のような動向が見られます:
• BitwiseやFranklinなどが追加のETF申請(イーサリアム版など)
• S&P500企業の一部(MicroStrategyなど)もETF投資を検討
• ETFを使ったラップ型商品(投資信託・年金口座)も登場予定
ETFが保有する現物ビットコインの量が市場に大きな影響を及ぼしはじめており、単なる金融商品の枠を超えた「金融インフラ」としての役割も帯びています。
【4】海外での動き:香港・欧州・カナダとの比較

米国が承認に動いたことで、他国も続々とビットコインETF市場に参入しています。
• カナダ:2021年よりすでに現物ETFを承認(Purpose Bitcoin ETFなど)
• 欧州(ドイツ、スイス):EuronextやXetraで複数ETFが上場済
• 香港(2024年4月):初のスポット型ビットコイン&イーサリアムETF承認。中国本土からの資金流入は限定的だが、アジア市場の足掛かりに
米国ETFの影響力は桁違いであるものの、各国の対応は今後の暗号資産規制の方向性を占う重要な要素となります。
【5】今後の展望とリスク要因

期待される動き:
• 米国でのスポット型イーサリアムETFも2025年夏にかけて承認見込み
• 退職年金制度やラップ型証券へのETF導入が進行
• アジア地域でのETF市場拡大(シンガポール、UAE等)
注意すべきリスク:
• ビットコインETFによる大量保有が「市場の価格歪み」を招く可能性
• 万が一のハッキングやETFプロバイダーの破綻リスク
• 米国政権交代による規制の巻き戻し(特に民主党側の慎重派が台頭した場合)
• 高値圏でのボラティリティ急拡大によるロスカット連鎖
ETFで価格が歪むとはどういうことですか?
巨額の資金流入があると価格を押し上げる可能性があります。
まとめ
- 2024年の米SECによるビットコインスポットETF承認は、暗号資産業界にとって最大級のターニングポイントとなりました
- ETFは投資家層の裾野を広げ、価格安定性と流動性をもたらしましたが、同時に新たなリスクと制度設計の課題も浮き彫りになっています
- 今後はイーサリアムETF、他国での承認ラッシュなどが続き、暗号資産と伝統金融の融合が一層進むことが予想されます
- 中長期的には、ETFの成長とその影響を注視しつつ、分散投資の一環としてビットコインを捉える姿勢が重要です
著者プロフィール

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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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