「土地は裏切らない」「海外の開発予定地を先回りして買えば、将来大きな利益になる」――そんな触れ込みで、カナダやタイのランドバンキング案件が富裕層や個人投資家に売り込まれてきました。パンフレットには高速道路や工業団地、リゾート開発のイメージ図が並び、数年後には土地が何倍にも値上がりすると説明されるのが常套手段です。
ところが、実際に「投資が成功した」「建物が建った」という話はほとんど聞こえてきません。むしろ投資家からは「売れない」「音沙汰がない」という不満が漏れてきます。
どうしてランドバンキングは「幻の投資」になってしまうのでしょうか?
以下でその背景を探ります。
- ① ランドバンキングの仕組みはシンプルだが出口が不透明
- ② 成功談がほとんど聞こえない理由
- ③ カナダ案件は「都市拡張の夢物語」になりがち
- ④ タイ案件は「制度の壁」と「政治リスク」
- ⑤ 「土地=安心」は幻想、販売会社は販売時点で利益確定
① ランドバンキングの仕組みはシンプルだが出口が不透明

ランドバンキングとは、都市拡張やインフラ整備が予定されているエリアの土地を、開発前の安い段階で仕入れておき、将来的に高値で売却するという発想です。投資家には「まとまった土地を分筆して小口販売」され、1区画数百万円単位から参加できるのが特徴です。
問題は、その土地を誰がいつ買ってくれるのか、出口戦略がほとんど示されないことです。開発業者がまとめて買い取るというシナリオが語られますが、実際には小口に分けられた土地をまとめて交渉するのは困難。投資家側が主体的に出口を作れないため、計画が頓挫すると一気に「塩漬け」となります。
② 成功談がほとんど聞こえない理由

ランドバンキングの販売側は「10年で数倍に」という華やかな未来を描きますが、現実には投資家の手元に利益が戻ったという報告はほとんどありません。理由は明快で、土地の値上がりが自治体の都市計画や大手ディベロッパーの動きに依存しているからです。
例えば都市計画が遅れれば、買い手は現れません。景気が冷え込めば、開発計画自体が白紙になることもあります。さらに小口投資家の土地は「誰か一人が売れば儲かる」というものではなく、全員の合意が必要になるケースも多い。そのため、出口が実現するハードルは極めて高いのです。
③ カナダ案件は「都市拡張の夢物語」になりがち

カナダで多いのは、トロントやバンクーバー周辺の土地を「将来の都市拡張地帯」として売るケースです。販売資料には「高速道路の延伸」「新住宅地指定」などが記されていますが、都市計画はしばしば遅延し、方針転換も少なくありません。
現地のディベロッパーにとっても、海外投資家が分筆所有する細かい土地は扱いにくく、まとめ買いを避ける傾向があります。過去にはカナダの規制当局が「ランドバンキングは実質的に詐欺の可能性がある」と警告を出した事例もありました。投資家が期待するような高値転売が実現した例はごくわずかにとどまっています。
④ タイ案件は「制度の壁」と「政治リスク」

タイでは、バンコク郊外の土地やプーケット・パタヤといったリゾート地、あるいは工業団地周辺がターゲットにされてきました。「観光客が増える」「外国企業の進出で地価が上がる」というストーリーが定番ですが、現実は甘くありません。
第一に、外国人がタイの土地を直接所有できないという制度的制約があります。多くの案件では現地法人や代理人の名義を借りるため、投資家にとって法的リスクが高い。第二に、タイの開発計画は政治情勢に大きく左右されます。政権交代や経済減速のたびに計画が遅れ、最終的に建設が始まらないまま時間だけが経つケースが目立ちます。
⑤ 「土地=安心」は幻想、販売会社は販売時点で利益確定

ランドバンキングが投資家を惹きつけるのは、「土地は無価値にならない」という心理的安心感があるからです。さらにパンフレットには空港やショッピングモールの完成予想図が添えられ、夢のある将来像が強調されます。
しかし現実には、土地が本当に活用されるかどうかは販売会社の関知するところではありません。彼らの報酬は販売時点で完了しており、その後の開発の成否に責任を持つわけではないのです。結果として投資家は「買った土地はあるが、使い道も買い手もいない」という状況に取り残されます。
ランドバンキングは儲かりますか?
出口不透明で利益はほとんど期待できません。
まとめ
- カナダやタイのランドバンキング案件は、投資家の想像力を刺激する「夢の投資話」として広がってきた
- しかし、実際に成功例や建設が実現した事例はほとんど確認できない
- 「土地は安心」という常識は海外ランドバンキングには当てはまりません
- むしろ出口不在のまま塩漬けになるリスクが高く、成功談が聞こえてこないのは必然といえる
- 投資家に必要なのは、華やかなパンフレットよりも「本当に売れる出口があるか」を冷静に見極める姿勢
著者プロフィール

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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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