コンベンションの舞台裏 ― 大手生保・外資系生保の事例にみる功罪と内部批判

国内外を問わず、生命保険会社の営業文化において「コンベンション」は華やかなイベントであり、営業職員にとっては憧れの舞台である。しかし、その実態を関係者の証言や内部資料から探ると、顧客本位の経営と乖離した販売インセンティブ、倫理的に疑問の残る行動、そして内部からの批判の声 が浮かび上がる。

生命保険会社の「コンベンション」は何が問題なのでしょうか?

今回は、日本の大手生保と外資系生保の事例を交えながら、コンベンション文化がいかにして「称賛」と「問題」を同時に生み出しているのかを整理します。

  • 国内大手生保 ― 「数字のための契約」と自爆営業
  • 外資系生保 ― 豪華リゾートと過剰演出
  • 若手営業マンの「コンベンション依存症」
  • 内部批判 ― 「顧客本位」との乖離
  • 顧客視点から見た「不信」の芽

国内大手生保 ― 「数字のための契約」と自爆営業

ある日本の大手生保では、年1回ハワイや沖縄などで行われるコンベンションが恒例行事となっていた。参加条件は「年間契約件数◯件以上、保険料総額◯万円以上」。そのため営業職員の間では「数字合わせ」のために自ら契約する「自爆営業」が横行した。
実際に40代の女性営業職員は「家族や親戚に頼み込み、無理やり契約を取って基準を達成した」と証言する。だが、その契約は数年で解約されることが多く、会社にとっては収益が残らず、顧客にとっても無駄な保険料負担となった。「コンベンションのための契約」が、顧客利益よりも優先される実情 がここにある。

外資系生保 ― 豪華リゾートと過剰演出

外資系生保のコンベンションは、ラスベガスやカンクンなどの豪華リゾート地で開催されることが多い。舞台照明、シャンパンタワー、著名アーティストのライブが演出され、まるでショービジネスのようである。
ある外資系生保の元営業は「顧客から預かった保険料の一部が、こうしたイベントに使われていると知ったら不信感を持つ人も多いだろう」と語る。現場の営業職員にとっては夢の舞台だが、内部からは「本来顧客に還元すべきコストがイベントに消えている」という批判が根強い。過剰な演出が業界の透明性を損なっている のだ。

若手営業マンの「コンベンション依存症」

国内外を問わず、若手営業マンにとってコンベンションは「夢」や「モチベーション」の象徴となる。ある20代の新人営業は「とにかくハワイに行きたくて必死に契約を取った」と語る。顧客のニーズよりも「旅行参加」が目的化し、短期的に契約件数を稼ぐことに奔走した。
しかし、その後のフォローは手薄になり、解約率が高止まり。上司からは「継続率が低いと意味がない」と叱責されるが、本人は「次のコンベンション基準を満たすため」にまた新規契約獲得に走る。若手の「コンベンション依存症」が、持続的な顧客関係を犠牲にしている 実情が見える。

内部批判 ― 「顧客本位」との乖離

ある大手生保の内部文書では「コンベンション基準を廃止すべき」という提言が出された。理由は「顧客ニーズより販売件数を優先する文化が、会社の信頼を損なう」ためだ。また外資系でも、金融庁の「顧客本位の業務運営」要請を受け、内部監査部門が「イベントコストと契約維持率の関係」を問題視した。
一部の経営層も「時代に合わない文化」と認識しているが、現場からは「コンベンションがないと士気が下がる」という声が強く、改革は遅々として進まない。内部でも「必要悪」と認識されつつ、抜本的な改善に至らない矛盾 がある。

顧客視点から見た「不信」の芽

顧客にとって、コンベンションは直接見えるものではない。しかし、営業職員が「今月中に契約すれば基準達成できる」と契約を急かすとき、その背景にコンベンション基準があることは少なくない。ある契約者は「なぜそこまで急がせるのか不思議に思い、後で知人からコンベンションの存在を聞いて不信感を持った」と語る。顧客が気づけば「自分の契約が誰かの旅行のためだったのか」と不満につながりやすい。コンベンション文化そのものが顧客との信頼関係を侵食するリスク をはらんでいる。

「お客さま本位の業務運営を推進している」とのプレスリリースを出している生命保険も少なくないですが、本当に顧客本位の経営をしているのでしょうか?

華やかさの裏に潜む影を直視しなければ、保険業界は「顧客本位経営」とは程遠いままですね。

まとめ

  • 大手生保・外資系生保のコンベンション文化は、営業職員にとっては華やかで魅力的な舞台だが、その実態を見れば以下の問題が浮かび上がる
  • 1. 数字合わせの自爆営業と顧客不利益
  • 2. 豪華演出による倫理的リスク
  • 3. 若手営業マンの目的意識の歪み
  • 4. 内部からの顧客本位との乖離批判
  • 5. 顧客の信頼を損なう潜在的不信
  • 今後、持続的な信頼を築くには「販売件数ではなく顧客満足度で評価する制度」や「契約の長期継続率を重視する仕組み」への転換が不可欠だろう

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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