フィリピン・ジョホールバルでも拡大するランドバンキング商法 ― 日本人投資家が直面した現実

ランドバンキングは「土地は値下がりしない」「都市開発が進めば数倍の価値になる」というシンプルな言葉で投資家を惹きつけます。しかし実態は、開発計画が存在しない農地や規制で建築不可能な土地を小口で販売し、投資家には出口のない不良資産を押し付ける仕組みです。カナダやタイだけでなく、フィリピンやマレーシア・ジョホールバルでも同様の案件が広がり、多くの日本人が損失を被りました。

多くの日本人が損失を被ったフィリピンやジョホールバルの案件について教えてください。

以下で解説していきます。

  • ① フィリピン・マニラ郊外の「ニューシティ構想」
  • ② マレーシア・ジョホールバルの「イスカンダル計画」を利用した販売
  • ③ フィリピン・セブ島のリゾート開発案件
  • ④ 日本人が巻き込まれた共通の構図
  • ⑤ 被害拡大の背景と教訓

① フィリピン・マニラ郊外の「ニューシティ構想」

フィリピンでは、マニラ郊外のクラーク、カビテ、ラグナなどで「新都市開発計画」が喧伝されました。日本の代理店は「ASEANの成長を取り込む」「フィリピンは人口ボーナスで不動産高騰が続く」と宣伝し、投資セミナーを開催。

実際の事例では、Asia Pacific Landbank社と提携した日本の不動産販売会社が一口100万円〜300万円の小口投資を募りました。販売資料では「フィリピン政府がITパークを建設予定」とされましたが、都市計画の裏付けはなく、農地転用許可も取得できていませんでした。結果として投資家は所有権も曖昧なまま、現地で名義貸しした法人が倒産して権利を失うケースも発生しました。

被害者は退職金を投じた高齢者や、海外投資セミナーに参加した個人投資家。新聞報道でも「日本人300人以上が被害」と取り上げられ、消費者庁も注意喚起を出しました。

② マレーシア・ジョホールバルの「イスカンダル計画」を利用した販売

マレーシアでは、シンガポールと地続きのジョホールバルが舞台となりました。2006年に発表されたイスカンダル開発計画は、政府主導の大規模プロジェクトとして実際に進められているものでした。これを逆手に取った販売業者が「開発地域周辺の農地や原野」を投資対象として販売したのです。

日本国内では、エイベスト不動産や海外資産アドバイザー系FP事務所がセミナーを開催し、「シンガポール人富裕層が買いに来る」「イスカンダルの中心部に変わる」と強調。一口200万〜500万円の投資を勧誘しました。

しかし、販売された土地はイスカンダルの開発区域外で、道路や上下水道も未整備。農地転用許可が取れず建築できないまま放置されました。現地の土地登記制度の複雑さも相まって、日本人投資家が権利を行使できず、事実上「紙切れ」となったケースが多数報告されています。

③ フィリピン・セブ島のリゾート開発案件

もうひとつ典型的なのが、セブ島やボラカイ島のリゾート案件です。Global Sun Holdings社が主体となり、日本では合同会社サンライズキャピタルなどを通じて販売されました。投資家には「リゾートホテル開発予定」「外資チェーンが提携」といった資料が示されましたが、実際には建築許可すら得られていませんでした。

投資家は土地購入名目で数百万円を支払ったものの、現地で開発は頓挫。さらにフィリピン特有の外資規制により、日本人が直接土地を所有できないため、現地法人を経由していたところ、その法人が清算されて権利が消失しました。

この案件では日本国内の販売業者が金融庁から「無登録での金融商品取引業行為」として行政処分を受けましたが、資金回収はできず、泣き寝入りが多数となりました。

④ 日本人が巻き込まれた共通の構図

フィリピンやジョホールバル案件に共通するのは次のポイントです。
• 政府開発計画を強調し、実際には区域外の土地を売る。
• 小口化販売(一口100万〜500万円)で富裕層以外も取り込みやすい。
• 出口戦略が存在しない(転売市場がなく、買い戻し保証も不履行)。
• 現地法の規制(外国人土地所有禁止、農地転用不可など)を説明しない。
• 日本側販売会社は高額コミッションを即時確定し、リスクはすべて投資家負担。

⑤ 被害拡大の背景と教訓

これらの案件が日本人に広まった背景には、以下の要素があります。
1. 海外投資熱の高まり(低金利の中で高リターンを求めた個人投資家の心理)
2. 金融リテラシーの不足(土地なら安全という誤解)
3. 日本の規制の限界(海外不動産の直接販売はグレーゾーンで、金融庁の監督が及びにくい)
4. 販売会社の強引な営業(「セミナーでの一括契約」「当日中に申込で割引」といった煽り)

教訓としては、「土地だから安心」という思い込みを捨てること、必ず現地法や登記制度を専門家に確認すること、出口戦略がない投資には一切手を出さないことが挙げられます。

ランドバンキングでも成功例はありますか?

成功例は一部に存在しますが、全体的には成功例は限定的で慎重な検討が必要です。
特に、日本の個人投資家向けには詐欺・トラブル事例が多数あり、安心して投資できる環境とは言い難い状況です。

まとめ

  • カナダ、タイに加え、フィリピンやマレーシア・ジョホールバルでもランドバンキング商法は展開され、多くの日本人が被害に遭いました
  • • フィリピンではマニラ郊外やセブ島の「ニューシティ」や「リゾート案件」
  • • マレーシアではイスカンダル計画を利用した郊外の原野販売
  • • 共通して、開発計画の裏付けはなく、外国人所有規制や農地転用不可で事実上換金不能

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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