日本のビットコインETF承認は「相当先」──金融庁が示した本音と、資産を閉じ込める構造

■総論:日本だけが取り残される「暗号資産ETFの空白」

世界が次々とビットコインETFを上場させ、個人投資家にも暗号資産投資の門戸が開かれる中で、日本は依然として「沈黙」している。
米国ではブラックロック、フィデリティ、アーク・インベストなどの運用会社がETFを発行し、カナダや欧州ではすでに市場が定着している。香港やオーストラリアでも承認が進み、アジア圏でも一般投資家がビットコインに合法的にアクセスできる環境が整いつつある。

一方、日本では、金融庁が「海外で組成された暗号資産ETFの国内提供は望ましくない」と明確に否定した。
この一文が意味するのは単なる慎重論ではなく、「海外経由では一切認めない」「国内発行体が制度上整うまでは門戸を開かない」という強固な意志である。
結果として、個人投資家がETFを通じてビットコインに触れる日は、数年単位で先送りになる見通しだ。これは単なる技術的遅れではなく、「日本人の資産を海外に逃がしたくない」という金融行政の構造的な意図によるものである。

  • 背景:金融庁が打ち出した「望ましくない」という拒絶
  • 国内発行こそ正義──資金流出を防ぐ“見えない壁”
  • 税制・法制度という“政治的な遅延装置”
  • 投資家が取るべき選択:海外口座での直接投資
  • 日本の制度疲労と個人の行動戦略

背景:金融庁が打ち出した「望ましくない」という拒絶

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2025年10月、金融庁は国内証券会社による海外暗号資産ETFの取扱いに対し、異例のコメントを発表した。
英IG証券が米ブラックロックなどのビットコインETFをCFD(差金決済取引)で提供しようとしたことに対し、金融庁は「国内では望ましくない」と明言。
現行の金融商品取引法では、暗号資産ETFという概念自体が整備されておらず、またそれを原資産とするデリバティブは「暗号資産に係るデリバティブ取引」と見なされる可能性があるため、規制対象外の商品として放置できないという立場だ。

つまり、ETFの形を取っていても「暗号資産」という扱いになるため、既存の有価証券とは別の法体系で扱う必要がある。
金融庁としては、海外で組成されたETFが日本の制度監督外で取引されることを極度に嫌う。
結果として、海外ETFを利用する証券会社や投資家を制度的に締め出すという形になった。

国内発行こそ正義──資金流出を防ぐ“見えない壁”

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金融庁がもう一方で示したのは、「我が国でも暗号資産ETFの組成を可能にするため、税制面を含めて検討する必要がある」という一文である。
これは裏を返せば、海外ETFの導入は国内発行体が整うまでは認めないという宣言でもある。
金融庁は長年、「日本人の資産を国外に逃がさない」という原則を貫いており、暗号資産のような越境型資産に対しては特に慎重だ。

もし海外ETFを自由に国内で売買できるようにすれば、日本の投資資金は米国や欧州の金融機関に流れる。税収も監督も海外に逃げる。
したがって、日本は「国内管理下での金融商品」にこだわる。
証券会社も運用会社も国内免許のもとでしか商品を提供できず、ETFそのものを海外から“輸入”することは認めない。
この仕組みこそ、いま日本の投資家を国境の内側に閉じ込めている最大の要因である。

つまり、金融庁が言う「国内発行の環境整備」とは、投資家保護ではなく、国内監督と税制支配の確立を意味するのだ。

税制・法制度という“政治的な遅延装置”

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金融庁の論拠の一つに「税制・法制度の整備が未完」という点がある。
現在、暗号資産取引の利益は総合課税扱いであり、最高税率は55%。これを金融所得のように分離課税(約20%)へ改正する議論があるが、実現は早くても2026年度以降。
ETF承認には、その後に法整備・監督体制・市場インフラの整備が必要となり、上場・販売までさらに数年を要するとみられる。

金融庁はこの「制度未整備」を理由に、暗号資産ETFの承認を先送りする一方で、米国や香港のように市場競争を促す動きは見せない。
そのため、ビットコインETFが日本市場で取引されるまでには、少なくとも2〜5年のタイムラグが生じる公算が高い。
形式的には慎重だが、実質的には“先延ばし政策”である。

投資家が取るべき選択:海外口座での直接投資

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こうした状況下で、日本の投資家が取るべき戦略は明確だ。
承認を待つのではなく、海外口座を開設し、直接ETFへ投資すること。
すでに米国では複数の現物型ビットコインETFが上場しており、ブラックロック(IBIT)、フィデリティ(FBTC)、ARK(ARKB)などが主要銘柄として流通している。
これらは米国証券取引委員会(SEC)の監督下にあり、保管・開示・流動性の観点からも高い信頼性を持つ。

もちろん、為替リスクや税務報告、口座開設手続きなどのハードルはある。
しかし、日本国内での販売が凍結されている今、海外ブローカーや米国証券口座を通じて直接投資することこそ、最も現実的なアプローチだ。
待っている間にも市場は動き続け、機関投資家や世界の富裕層はすでにETFを通じてポジションを取っている。
「制度が整ってから」では、投資機会の大半は失われる。

日本の制度疲労と個人の行動戦略

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日本が暗号資産やデジタル金融に慎重なのは、リスク管理よりも「支配構造の維持」が目的である。
国内で発行・監督できる枠組みが整わない限り、海外資産へのアクセスを制限し、投資家の行動を律しようとする。
しかし、その間にも資産インフレは進み、円安が続き、国内資産の実質価値は低下している。

金融庁がどれだけ慎重に議論を重ねても、テクノロジーと市場は待ってくれない。
暗号資産ETFが合法的に取引できる国はすでに20を超え、日本の「安全策」はもはや遅れを意味する。
真に資産を守るためには、制度に従うだけでなく、自ら行動を起こす必要がある。
「待つ者は失う」──今の日本市場は、その典型例である。

日本は政治や利権に絡めて都合のよいシステムを作るだけですよね。実際に個人が投資をする手段はあるのでしょうか?

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まとめ

  • 国内承認は数年先、資産を守るなら行動を
  • 金融庁は「海外発の暗号資産ETFの国内提供は望ましくない」と明言。
  • 国内発行体が整うまで承認する意思はなく、事実上“閉鎖政策”。
  • 税制改正と法整備が完了するまでに少なくとも数年。
  • 承認を待つのではなく、海外口座で直接ETFへアクセスすることが現実的。
  • 国家は資産を守らない。守るのは、個人の判断と行動である。

制度が整うのを待つうちに、世界は次の段階へ進む。
いま必要なのは、**「閉ざされた国内市場に留まらない覚悟」**である。

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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