香港IFAが生んだ海外投資の誤解と日本人投資家の構造的リスク

香港IFA──その存在は本来、香港の保険ライセンスに基づく「保険販売業」に限定されているにもかかわらず、近年はオフショア投資・海外積立・詐欺ファンドの紹介まで手を広げ、日本人投資家に深い傷跡を残してきた。
問題の核は「IFAではなく、構造」である。保険ライセンス保持者が“投資の専門家であるかのように振る舞う仕組み”、日本人が“投資リテラシーの低さゆえに海外ブランドへ魅了される構造”、そして“契約後に誰も面倒を見ない制度的ギャップ”が重なり、海外投資そのものの評判を傷つけてきた。

特に香港では、日本人向けに販売できる正規保険は Sun Life と CTF Life に限られているにもかかわらず、「保険では稼げないから投資に手を出す」IFAが登場し、海外積立・高リスクファンド・詐欺案件が横行した。
その結果、投資家の資産は失われ、紹介者は消え、積立難民だけが増える。これは“個人の問題”ではなく“市場構造の必然的な結末”である。

以下では、この構造を5つの視点から整理する。

  • 香港IFAはなぜ「投資」に手を出すのか — ライセンスと収益構造の歪み
  • 日本人の「香港ツアー構造」— 口座開設の高揚感で契約が成立する
  • 契約後にIFAが消える理由 — 日本では営業できない制度の壁
  • リテラシーの低い日本人と高リスク商品の相性の悪さ
  • 積立難民の量産 — 誰も助けない市場の現実

香港IFAはなぜ「投資」に手を出すのか — ライセンスと収益構造の歪み

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香港IFAの根本的な役割は「香港の保険を販売すること」であり、主要な日本人向け商品は Sun Life と CTF Life のみである。
にもかかわらず、多くのIFAは「オフショア投資」「積立ファンド」「高配当型スキーム」に手を出し、結果として詐欺や高リスク商品を日本人へ紹介してきた。

その理由は単純で「保険だけでは儲からない」からである。
• 低額保険ではコミッションが薄い
• 日本人マーケットで数を売るには限界
• 投資商品はコミッション率が高く、一撃の収入が大きい
• オフショアファンドはIFA側に“紹介料ルート”を作りやすい

つまり、専門性からではなく収益構造から投資に手を出したということであり、そこには“投資の理解”も“アフターケアの仕組み”も存在しない。

日本人の「香港ツアー構造」— 口座開設の高揚感で契約が成立する

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問題の第二層は“日本人投資家側の心理構造”にある。

香港IFAビジネスの基盤は、
「HSBC香港の口座を作りたい(トロフィー)」という欲求に依存している。

投資リテラシーが低い層ほど、海外銀行口座=上級者の証 と誤解し、香港に行くこと自体が「ステータス」になる。そして、現地でIFAのカウンターに連れて行かれ、興奮状態・テンションの高いまま以下の流れに乗る。
1. HSBC口座開設で達成感
2. 香港という非日常の雰囲気
3. 英語や海外ブランドへの憧れ
4. その場にいるIFAが“プロらしく見える”心理錯覚
5. 高揚した状態で保険や積立を契約

これは典型的な「環境誘導型セールス」であり、冷静な資産形成とは最も遠い地点にある。

契約後にIFAが消える理由 — 日本では営業できない制度の壁

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多くの日本人が騙されたと感じる最大の原因は、
「AFTER CARE が存在しない」
という事実である。

香港IFAは日本国内で営業ができない。
日本で説明会・勧誘・メンテナンスを行えば、金融庁・消費者庁の管轄で即アウトになる。

そのため、
• 日本に拠点を置けない
• 日本でアフターサポートができない
• 契約後は連絡が途絶える
• 投資相談も受けられない(本来受けてはいけない)

という構造が生まれる。

つまり、**契約後にIFAが消えるのは“悪意”ではなく“制度的に消えるしかない”**のである。
この事実を理解していない日本人が「サポートしてくれない」と怒るが、それは“最初から存在しない仕組みに期待していた”だけである。

リテラシーの低い日本人と高リスク商品の相性の悪さ

リテラシーとは|スキルとの違いや種類・高める方法について紹介 | オンライン

海外投資において、最も大きな問題は
投資を理解していない人が、仕組みを理解しないまま高リスク商品を買うこと
である。

香港IFAが売ってきた代表的な商品群は以下の通り:
• 海外積立(高コストのILAS)
• 手数料構造が不透明なオフショアファンド
• 実体不明の“年利8〜12%”スキーム
• 実績ゼロの新興運用会社
• 典型的なPonzi型案件

これらを理解する前に投資する日本人は、
「儲からない」「話が違う」「詐欺だった」
と感じるが、本質は違う。

理解せずに投資していること自体が“構造的な敗北”である。

日本の学校教育は投資を教えず、日本の金融機関は国内販売できる商品に偏り、投資家教育も不十分なため、
“海外だから良いものがある”という幻想
に陥りやすい。

その結果、
リテラシーの低さ × 高リスク商品 × 無サポート
という最悪の組み合わせが生まれ、海外投資全体の評判を引き下げてきた。

積立難民の量産 — 誰も助けない市場の現実

海外積立投資でスタンダードライフの紹介者と連絡が取れなくなったけど… – 某・証券マンの「暴露日記」

最後に、この構造が生み出す最大の悲劇が
**「積立難民」**である。

“積立難民”とは、
• 海外積立を契約したが
• 条件が悪く、中途解約すると大損し
• IFAは日本でサポートできず
• 商品の仕組みも理解できず
• 継続しても儲からず
• 放置するしかない

という状態に取り残された人たちを指す。

彼らを救える専門家はほぼ存在しない。
IFAは日本で助けられず、国内FPは海外商品の仕組みを理解できず、金融庁も介入できない。
結果として、
“誰にも救えない日本人の群れ”が市場に放置されている。

これは「誰が悪い」という次元を超えた、
構造的な孤立であり、日本の金融教育と制度設計の欠陥が露呈した象徴である。

10年ほど海外積立していますが、紹介者と連絡が取れなくなって困っています。

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まとめ

香港IFA問題とは、単なる「悪徳業者の問題」ではなく、
以下の要素が複合した構造的現象である。
• 香港IFAが投資まで手を広げた収益構造の歪み
• 日本人の“HSBC口座”への憧れとリテラシーの弱さ
• 制度上アフターケアができない香港IFAの限界
• 投資を理解しないまま高リスク案件に手を出す危険性
• その結果生まれる積立難民と孤立する日本人投資家

つまり、これは“誰か一人の悪”ではなく、
市場構造全体が誘導した必然の結果である。

海外投資が本来持つべき魅力や合理性まで否定されてしまった背景には、こうした複層的な問題がある。
解決には「正しい情報」「正しい専門家」「正しい制度理解」の三点が不可欠であり、これを欠いたまま海外に手を出す限り、同じ悲劇は何度でも再生産される。

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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