ソフトバンクグループ(SBG)がまた個人向け社債を出してきました。今回の利率は年3.98%、発行総額5,000億円、満期7年・無担保社債。円建て普通社債として過去15年で最高水準のクーポンで、仮条件(3.5〜4.1%)の上限近くで決着しています。 
直前の10月には、ドル建て・ユーロ建てハイブリッド(劣後)債で約4,300億円超を起債済みで、AI・OpenAI周りへの投資を支えるために、明確に「レバレッジを取り直しに行っている」局面です。 
一方で、Q2(2025年4–9月)決算はAI投資の評価益で純利益2.5兆円と大幅増益ながら、決算発表後に株価は約3割下落、CDSも4カ月ぶり高水準まで拡大しており、市場は「利益は出ているがリスクも急速に積み上がっている」と見ています。 
以下、
1. 今回の起債の中身
2. ここ数年の調達構造
3. 信用リスクとレバレッジ
4. 資金使途(AI・Stargate・OpenAI)
5. 事業計画と個人投資家が見るべきポイント
の5つで整理します。
- 今回の個人向け債発行のポイント
- 直近の資金調達の流れ(円債+外貨建ハイブリッド)
- 信用リスクとレバレッジの評価
- 資金使途:OpenAI・Stargate・AmpereなどAIエコシステム
- 事業計画と個人投資家が見るべき論点
今回の個人向け債発行のポイント

• 条件
• 発行額:5,000億円
• タイプ:個人向け無担保社債
• 満期:7年
• クーポン:年3.98%(円建て普通社債で過去15年で最高水準)
• なぜこんな利率か
• 5000億円という大型起債で投資家側の「要求利回り」が高かった
• 日銀の追加利上げ観測+国債利回り上昇で、円金利の“新常態”がじわじわ上にシフト
• 社債市場全体で「個人マネーの争奪戦」が激しく、条件を出さないとお金が集まらない
• SBG側の狙い
• 7年固定で、今のまだ比較的低い(と彼らが見ている)金利をロック
• 個人マネーを厚く取り込んでおくことで、今後のリファイ・M&A・AI投資の“予備タンク”を増やす
• 外貨建てハイブリッドと組み合わせて、「長期・劣後・固定」をミックスした負債サイドのポートフォリオ調整
要は「高いクーポンをエサに個人マネーを大量に取り込み、AIレバレッジ拡大の燃料にする」という一手です。
直近の資金調達の流れ(円債+外貨建ハイブリッド)

• 10月の外貨建てハイブリッド債:4,300億円超
• ドル建て2本:計20億ドル(約3,035億円)
• ユーロ建て:7.5億ユーロ(約1,300億円)
• 利率:ドル長期債で8.25%、ユーロ債6.5%とかなり高い水準
• 劣後・ハイブリッドの位置づけ
• 破綻時には通常債務より劣後し、2021・2023・2025年発行の円建ハイブリッドや2017年のドル建ハイブリッド、将来の優先株と同列に位置づけられるとSBGは説明。
• 格付機関S&Pも、これら劣後債を一定程度「資本性」とみなしつつ、LTVは30〜33%レンジに収まると想定。
• 既存の円建て社債残高
• SBGのIRページには多数の円建て普通社債・ハイブリッド債のラインナップが並び、2026〜30年代にかけて順次償還が続く構造。
2025年だけ切り取ると、
• 外貨建て劣後債:約4,300億円
• 個人向け円建て普通社債:5,000億円
と、**ほぼ1兆円規模の“フレッシュな負債”**を AI投資ドライブの年に積み増しているイメージです。
信用リスクとレバレッジの評価

• 足元の損益は絶好調
• 2025年7–9月期の連結純利益:2兆5,022億円
• ビジョン・ファンド(SVF)がAI関連の未公開株評価益で利益を牽引し、OpenAIなどの評価増が大きく寄与
• しかし株価・CDSは警戒モード
• 11日の決算発表以降、SBG株は約3割下落
• 5年物CDSスプレッドは約4カ月ぶり高水準へ拡大、デフォルトリスクに対するヘッジ需要が増加
• レバレッジ指標
• S&Pは、今回のハイブリッド発行を織り込んでもLTVは30〜33%レンジと、現行格付けの許容範囲内とコメント。
• 一方で、SBG自身は決算説明などで「キャッシュ4兆円超・LTV 16%台」など、より保守的な自己計算を示しており(NAVベースなど前提が違う)、外部評価とのギャップが存在。
構図としては
• PLはAI相場のおかげで大きく膨らんだ利益
• BS側では、高利回りのハイブリッド+社債+Stargate向けのデットなどで、再びレバレッジを取りに行っている
• 市場は「このAIサイクルが逆回転した時のダウンサイド」をCDSで見始めている
という状態です。
資金使途:OpenAI・Stargate・AmpereなどAIエコシステム

今回の個人向け債やハイブリッドで集めた資金は、公式には「一般的な事業資金」とされるものの、実際には以下の文脈で使われている/使われると読むのが自然です。
• OpenAI向け大型フォローオン投資
• 2025年4月、SVF2がOpenAI Globalへ85億ドル(うち10億ドルを後に共同投資家へシンジケート)のフォローオン投資 
• これに加え、SB OpenAI Japan設立や、ソフトバンク全体で年間30億ドル規模でOpenAI技術を導入するコミットメント 
• Stargateデータセンタープロジェクト
• OpenAIとソフトバンクなどが関与する、総投資額5,000億ドル規模と報じられる超大型AIデータセンタープロジェクト「Stargate」。
• ソフトバンク・OpenAIはそれぞれ190億ドルコミットと報じられ、「どうやってその資金をひねり出すのか」が世界的にもテーマになっている。 
• Ampere買収などAI半導体サイド
• 2025年3月、エネルギー効率に優れたクラウド・AI向けプロセッサを手がけるAmpere Computingを約65億ドルで買収する契約を発表。 
• Vision Fundの組み替え
• Vision Fundは20%の人員削減を行いつつ、「バラ撒きVC」からAIインフラ・基盤モデルなどへの集中投資へシフト。
• ここ1年で約97億ドルをAI関連に投じ、Stargateなども含めた“垂直統合AIエコシステム”構築に舵を切っている。 
まとめると:
SBGは「OpenAI・半導体・データセンター・通信」を一本のAI垂直統合ストーリーにまとめ、その燃料として外貨建て高クーポン劣後債+円建て個人向け債を総動員している、という構図です。
事業計画と個人投資家が見るべき論点

SBGの公式ストーリーはシンプルで、
“AI駆動の中長期成長戦略を推進しつつ、財務基盤も維持する”
というものです。ここから個人投資家が見るべきポイントを整理すると:
1. AIストーリーは“当たり”だが、ボラも巨大
• OpenAI・Ampere・Stargateなどのプロジェクトが軌道に乗れば、NAVはさらに跳ねる可能性。
• 逆に、AI相場が一服・逆回転したときには、評価損+ハイ・クーポン負債のダブルパンチ。
2. ハイブリッド債・劣後債は「資本性」だが、キャッシュアウトは重い
• 格付け上は一部自己資本扱いだが、実際には6〜8%台の高利払いを続ける必要がある。
• ここに円建て3.98%の個人向け債が重なり、金利環境が上に行けば行くほど、リファイコストも追いかけて上昇する。
3. LTVは“安全圏”と言われても、前提はかなりAI相場依存
• S&Pの30〜33%というLTV想定は、現時点の評価額を前提にした「写真」であり、AIバリュエーションが20〜30%崩れれば一気に絵が変わる。
4. 個人向け債投資家の立場
• 債券投資家は「利払いと償還がきちんと続くか」が全てで、AIストーリーそのものに直接乗るわけではない。
• 3.98%という表面利率は現状の円金利環境では魅力的に見える一方、「その利回りでこのリスク(AIレバレッジ)を引き受けるか」という価格付けの問題になる。
5. SBG経営陣の時間軸 vs. 個人の時間軸
• 孫氏の頭の中にあるのは「30年・300年スケールのAIストーリー」だが、個人債券投資家の時間軸は7年。
• 7年というスパンは、**レバレッジをかけたAI投資が一度大きく逆回転するには“十分な長さ”**でもある、ということは意識しておくべきです。
個人向けの円建債券としては高い利回りですね。
そうですね。資産を増やしたり、守る観点で考えると、円建資産ではインフレや為替リスクの影響をうけるので、米ドル建の債券運用を選択しましょう。
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まとめ
• 今回の個人向け債:7年・3.98%・5,000億円の大型起債で、円建て普通社債としては15年ぶりの高クーポン。
• 背景には、外貨建てハイブリッド4,300億円超+個人向け債5,000億円 ≒ 1兆円規模の新規調達で、OpenAI・Stargate・AmpereなどAIエコシステムへのレバレッジを一段と積み増す戦略がある。
• 収益面ではAI相場に乗って純利益2.5兆円と“絶好調”だが、株価は決算後3割下落、CDSも拡大しており、市場は「リスクの増幅」に敏感になっている。
• 格付け機関はLTV30〜33%でまだ許容範囲としつつも、その前提はAI関連資産の高い評価に依存しており、サイクル反転時のボラは大きい。
• 個人投資家としては、
• 「3.98%という円建てクーポン」
• 「AIレバレッジ・大型プロジェクトのボラティリティ」
• 「7年というサイクルの長さ」
これをセットで見た上で、“この価格でこの信用リスクを引き受けるか”を判断する局面です。
著者プロフィール

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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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