日本の投資・保険業界において、「あの人はいい人だから」「親身になってくれるから安心」という理由だけで商品を選ぶ文化はいまだに根強い。だが、この“人柄重視”の判断こそが、多くの投資家・契約者を長年にわたって搾取してきた最大の原因である。
近年問題視されているプルデンシャル生命保険の営業スタイルや、営業マンによる自己啓発的な著書にも、その傾向は色濃く表れている。そこでは「誠実さ」「寄り添い」「信頼関係」といった言葉が強調される一方で、肝心の商品構造、コスト、リスク、実質利回りといった“数字”の話はほとんど語られない。
これは偶然ではない。「いい人」を前面に出すことは、意図的なカモフラージュなのである。本質を説明できない、もしくは説明すると売れなくなる商品ほど、「人柄」という煙幕が必要になる。本稿では、この構造を徹底的に解剖し、日本の投資リテラシーの根本問題を明らかにする。
- 「いい人営業」が最強のマーケティングになる理由
- 本質・数字・データを語らない営業の共通パターン
- 保険偏重層という“最も狙われやすい層”の存在
- 善人ストーリーと自己啓発が生む“思考停止”
- 本当に信頼できるアドバイザーの見分け方
「いい人営業」が最強のマーケティングになる理由

金融商品は本来、数字と構造で評価されるべきものである。
期待リターン、リスク、手数料、流動性、税務影響──これらを総合して判断しなければならない。
しかし、日本ではこのプロセスが極端に省略される。
代わりに使われるのが、
• 「この人は誠実そう」
• 「昔から知っている」
• 「一生懸命やってくれている」
• 「家族のことまで考えてくれる」
といった感情評価である。
営業側から見れば、これは極めて効率がいい。
難しい商品説明をしなくても、「信頼関係」さえ築けば契約が取れるからだ。
特に手数料が高く、構造が複雑で、実質パフォーマンスが低い商品ほど、この手法が使われやすい。
なぜなら、正面から説明すると売れないからである。
結果として、「人柄=営業力」という歪んだ価値観が業界全体に蔓延していった。
本質・数字・データを語らない営業の共通パターン

「いい人営業マン」には、驚くほど共通した特徴がある。
第一に、数字を出さない。
• 実質利回りを示さない
• 総コストを明確にしない
• 過去実績を曖昧にする
• 比較データを出さない
第二に、感情論に逃げる。
• 「将来が不安ですよね」
• 「老後が心配ですよね」
• 「みんなやってますよ」
• 「安心が一番です」
第三に、専門用語を避ける。
あえて難しい話をしないことで、「わかりやすい人」という印象を作る。
しかし実態は、「説明できない」か「説明すると不利になる」だけである。
本当に優秀なアドバイザーは、
• 手数料率
• 年率換算リターン
• ボラティリティ
• 解約ペナルティ
• 流動性制限
を必ず提示する。
それをしない時点で、専門家失格なのである。
保険偏重層という“最も狙われやすい層”の存在

特に被害が集中しているのが、「投資=保険」と考えている層である。
この層には特徴がある。
• 証券口座を持たない
• 投信・ETFを買ったことがない
• 外貨建て商品の仕組みを理解していない
• IRRや複利を知らない
つまり、比較対象が存在しない。
その結果、
「保険で年3%ならすごい」
「元本割れしないなら安心」
と簡単に信じてしまう。
実際には、
• 年3%はインフレ負け
• 手数料控除後は実質マイナス
• 解約制限で資金拘束
というケースが大半である。
だが、この層は自分が損していることすら認識できない。
営業側にとって、これほど“扱いやすい顧客”はいない。
だからこそ、保険業界では「いい人営業」が最も繁殖したのである。
善人ストーリーと自己啓発が生む“思考停止”

営業マンの著書や研修資料を見ると、ある共通構造がある。
• 人生論
• 感謝論
• 信頼論
• 成功哲学
• メンタル論
こうした話は豊富だが、商品分析はほぼ皆無である。
これは偶然ではない。
「思考させないための設計」だからだ。
顧客に考えさせると、
• 他社比較される
• ネットで調べられる
• コストに気づかれる
リスクが高まる。
そこで、
「この人を信じよう」
「考えるより任せよう」
という心理状態を作り出す。
宗教と詐欺の構造と極めて近い。
善人ストーリーは、最強の洗脳ツールなのである。
本当に信頼できるアドバイザーの見分け方

では、どうすれば見抜けるのか。
最低限、以下を満たさない相手は避けるべきである。
① 手数料を明示できるか
→ 総コストを年率換算で説明できない相手は論外。
② 他社商品と比較するか
→ 自社商品しか勧めない人間は営業であってアドバイザーではない。
③ デメリットを先に話すか
→ 欠点を語らない商品は存在しない。
④ 数値シミュレーションを出すか
→ 感覚論だけの人間は信用不可。
⑤ 解約前提でも説明するか
→ 流動性を隠す人間は危険。
これらを嫌がる相手とは、付き合う価値がない。
これ、契約前に聞くだけで9割はふるい落とせそうですね。
その通りです。良い相手ほど、この質問を歓迎します。
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まとめ:優しさでは資産は守れない
日本の金融業界に蔓延する「いい人信仰」は、もはや社会的損失レベルに達している。
善人の仮面を被った営業は、
• 高コスト商品を売り
• 資金を拘束し
• 機会損失を生み
• 顧客の将来を削る
存在である。
そして、最大の問題は、騙される側が「騙されている自覚を持てない」ことだ。
資産形成において必要なのは、
優しさではない。
情ではない。
付き合いでもない。
必要なのは、
• 数字を見る力
• 比較する習慣
• 疑う姿勢
• 学ぶ意志
である。
「いい人だったから任せた」という言葉は、
「考えることを放棄しました」という告白に等しい。
これからの時代、生き残る投資家とは、
“好かれる人”を選ぶ人間ではなく、
“正しい人”を選べる人間である。
それができない限り、日本の投資家は、これからも同じ構造で搾取され続けるだろう。
著者プロフィール

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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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