円安とインフレが常態化し、海外旅行、とりわけハワイのような定番リゾートが「気軽に行ける場所」ではなくなった。かつては年に一度の恒例行事だった家族旅行も、為替一つで総額が数十万円単位で変動する時代である。その環境下で登場し、急成長しているのが NOT A HOTEL だ。
このビジネスは「ホテルではない」と名乗りながら、実質はフラクショナルオーナーシップ(分散所有)型のリゾートモデルである。年間一定日数の利用権を前払いで購入し、国内各地のラグジュアリー物件を相互利用する。資産性を強調し、売却・相続も可能とする設計だ。
しかし、この構造を冷静に分解すると、ハワイなどで長年展開されてきたタイムシェアやバケーションクラブと極めて近い。違いがあるとすれば、ターゲットが「円安で海外へ行きにくくなった日本の準富裕層」にシフトしている点だろう。
本稿では、このモデルの経済合理性と心理構造を分解し、さらにそれを人生設計の比喩として読み解く。
- 先に現金化するビジネスモデルの構造
- 円安と“行けなくなったハワイ”
- タイムシェアの歴史と成熟市場の現実
- 終身雇用との構造的類似
- 資産か、消費か
先に現金化するビジネスモデルの構造

NOT A HOTELの収益構造は明快である。
・建設前または初期段階で所有権を販売
・利用日数を区切って分割販売
・前受金で開発資金を回収
・次のプロジェクトへ再投資
つまり、将来の稼働率に依存する通常のホテルモデルとは異なり、需要を先に現金化してしまう仕組みである。
これは企業側にとっては極めて強い。キャッシュフローが安定し、稼働率リスクを会員側へ移転できる。空室リスクはネットワーク全体で平準化される。
一方、購入者側はどうか。
・将来使うか分からない宿泊権を先払い
・ライフステージ変化の不確実性
・旅行嗜好の変化
・家族構成の変動
これらを抱えながら「固定化」することになる。
言い換えれば、柔軟性と引き換えに優先権を買う行為である。
円安と“行けなくなったハワイ”

円安は心理を変えた。
ハワイ往復ビジネスクラス+家族滞在で100万円超は珍しくない。為替が150円台で固定されれば、かつての感覚とは別世界である。
ここで国内高級リゾートが相対的に割安に見える。しかも為替リスクがない。
このタイミングで国内版バケーションクラブが拡大するのは偶然ではない。
しかし冷静に考える必要がある。
・為替が戻ったら?
・子供が成長したら?
・海外志向が復活したら?
会員権は心理的アンカーになる。
「持っているから使う」という行動バイアスが働く。
それは合理的消費ではなく、**サンクコスト効果(埋没費用効果)**の典型でもある。
タイムシェアの歴史と成熟市場の現実

ハワイのタイムシェアは数十年の歴史がある。成功事例も失敗事例も山ほどある。
共通点は次の通りだ。
・初期販売は好調
・中古市場は価格が下落しやすい
・年会費負担が重くなる
・ライフステージ変化で使わなくなる
つまり、購入時の熱量と、10年後の現実は一致しない。
もちろん全員が損をするわけではない。
毎年確実に利用する人にとっては合理的だ。
問題は、「将来の自分を過信すること」である。
終身雇用との構造的類似

終身雇用も同じ構造だ。
・安定を先に固定
・柔軟性を失う
・環境変化に弱い
国に人生を委ねる構造も同様だ。
・税制
・年金
・社会保障
これらに依存するほど、選択肢は狭まる。
NOT A HOTELの会員権も、心理的には似ている。
「いつでも使える」安心感と引き換えに、
「どこへでも行ける自由」を失う可能性がある。
不確実性を恐れ、確実性を買う。
しかし未来は確実ではない。
ここで起きるのは、不確実性への先払いである。
資産か、消費か

最大の論点はここだ。
NOT A HOTELは「資産」として売られる。
・不動産登記
・売却可能
・相続可能
だが本質はどうか。
利用価値が主であり、キャッシュフロー投資ではない。
再販市場の流動性は限定的だろう。
つまりこれは、
消費性の高い準資産
である。
投資の世界で言えば、
流動性が低く、分散効果も限定的なポジションを取る行為に近い。
あなたが日々向き合っている海外分散投資や外貨建て資産構築とは、
リスク管理思想が逆方向だ。
「資産として売られているけど、投資として見ていいのか?」という違和感がずっとありました。
その違和感は正しいです。これは資産“形態”をした消費に近いです。
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まとめ
NOT A HOTELは革新的なブランド設計とデザイン性で成功している。
国内リゾート市場の高度化という意味では評価できる。
しかしビジネスモデルの本質は、
「未来の利用を先に現金化するタイムシェア型モデル」である。
それが悪いわけではない。
だが重要なのは問いである。
・10年後も同じ場所に行きたいか?
・家族構成は同じか?
・為替はどうなっているか?
・国内に縛られて後悔しないか?
不確実性を固定化する行為は、
時に安心を与えるが、同時に選択肢を削る。
終身雇用が幻想だったように、
「ずっと飽きない」という前提も幻想かもしれない。
人生は流動的である。
資産も流動的であるべきだ。
先に固定することで得られるのは安心だが、
失うのは自由だ。
そのトレードオフを理解した上で選ぶなら合理的。
理解せずに「持っている安心」に飛びつくなら、
それは不確実性に対する損確定かもしれない。
ラグジュアリーとは本来、自由のことである。
もし自由を削ってまで手に入れるなら、
それは本当にラグジュアリーなのだろうか。
著者プロフィール

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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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