【総論】バブル崩壊後、日本の雇用は「静かに崩れていた」
日本の「終身雇用」「年功序列」「企業内福祉」は、高度成長期からバブル期までの右肩上がり経済を前提として成立していた制度である。企業は将来も成長し続けることを前提に、若者を正社員として抱え込み、教育し、定年まで面倒を見ることができた。
しかし1991年のバブル崩壊以降、この前提は完全に崩れた。企業収益は伸びず、銀行は不良債権処理に追われ、国内市場は縮小局面に入った。にもかかわらず、日本社会は長く「雇用だけは守るべきだ」という幻想を捨てきれなかった。
その結果、企業は正社員を簡単に解雇できない代わりに、採用を極端に抑制し、非正規雇用へとシフトしていく。つまり、終身雇用は制度として守られたのではなく、「内部だけで細りながら崩壊していった」のである。
こうした構造的変化の中で登場したのが、小泉政権と規制緩和路線、そして派遣労働の拡大であった。しかし現在では、それらが「格差社会の元凶」として単純化され、個人攻撃の対象になっている。
本稿では、この問題を感情論ではなく、制度と経済構造の視点から整理する。
- バブル崩壊後に始まっていた「雇用の空洞化」
- 派遣法改正の本来の目的とは何だったのか
- 小泉純一郎政権と竹中平蔵の改革は何を目指していたのか
- なぜ小泉・竹中だけが「悪者」になったのか
- 派遣問題に対する「よくある勘違い」
バブル崩壊後に始まっていた「雇用の空洞化」

バブル崩壊後、日本企業は以下の三重苦に直面した。
・国内需要の低迷
・グローバル競争の激化
・金融システム不安
この中で、最もコストがかかるのが人件費である。しかし、日本では正社員解雇のハードルが極めて高い。解雇権濫用法理によって、合理性と社会的相当性がなければ解雇は無効とされる。
その結果、企業は次のような対応を取った。
・新卒採用の抑制
・中途採用の縮小
・正社員の自然減
・外注化・業務委託化
1990年代後半には「就職氷河期」が発生し、正社員の入口が急激に細くなった。これは小泉政権以前からすでに進行していた現象である。
つまり、雇用の不安定化は、構造不況によって自然発生的に起きていたのであり、誰かが意図的に作ったものではない。
派遣法改正の本来の目的とは何だったのか

労働者派遣法は1986年に制定され、当初は専門職限定の制度だった。通訳、SE、秘書など、特殊スキル職が中心である。
ところが1990年代以降、企業は「正社員を雇えないが、人手は必要」という矛盾を抱えるようになる。そこで拡大されたのが派遣制度である。
1999年、2003年の改正により、派遣可能業務は大幅に拡大された。
この狙いは主に三つだった。
1.企業の雇用調整コストを下げる
2.失業者の受け皿を作る
3.労働市場の流動性を高める
重要なのは、「派遣を増やす=不安定化」ではなく、「すでに不安定だった市場を制度化した」という側面が強い点である。
もし派遣制度がなければ、多くの人は「無職」か「闇雇用」に流れていた可能性が高い。
小泉純一郎政権と竹中平蔵の改革は何を目指していたのか

小泉政権(2001〜2006年)は、「構造改革なくして成長なし」をスローガンに掲げた。最大の課題は、不良債権処理と財政再建である。
当時の日本は、金融危機寸前だった。
・銀行は実質債務超過
・ゾンビ企業の延命
・公共事業依存
・財政赤字の拡大
このままでは、日本版リーマンショックが起きかねない状況だった。
竹中平蔵は、金融再生と市場改革を推進した中心人物である。彼らの政策は、短期的には痛みを伴うが、長期的な崩壊を防ぐことを目的としていた。
派遣拡大も、この文脈の中にあった。
「企業を潰さず、雇用を完全崩壊させないための緩衝材」
として位置づけられていたのである。
なぜ小泉・竹中だけが「悪者」になったのか

現在、ネットやSNSでは、格差社会の原因を「小泉・竹中改革」に求める言説が多い。
しかし、これは責任転嫁に近い。
理由は明確である。
・目に見える改革だった
・痛みが顕在化した時期と重なった
・政治的に分かりやすい「敵」だった
改革以前は、問題は水面下で進行していた。改革後は、それが一気に表面化しただけである。
また、就職氷河期世代は「努力しても報われなかった世代」であり、その怒りの矛先が政策責任者に向かうのは自然でもある。
だが、冷静に見れば、
・少子高齢化
・グローバル化
・技術革新
・人口減少
といった構造要因の影響の方が圧倒的に大きい。
改革を止めていても、結果は大差なかった可能性が高い。
派遣問題に対する「よくある勘違い」

派遣労働については、感情論が先行しやすい。代表的な誤解を整理する。
①「派遣が増えたから貧しくなった」
→ 正社員雇用自体が減っていた。
②「昔は誰でも正社員になれた」
→ それは成長期限定の特殊状況。
③「企業が悪意で搾取している」
→ 利益率の低下が背景。
④「規制を強めれば解決する」
→ 失業が増えるだけ。
⑤「安定=正社員しかない」
→ スキルと市場価値の問題。
本質は雇用形態ではなく、「個人の競争力」である。
派遣でも高収入の人は存在するし、正社員でも貧困化する人はいる。問題は制度よりも、教育・再訓練・産業構造にある。
結局、問題は制度じゃなくて個人側にもあるということですか?
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【まとめ】終身雇用の終焉は「時代の必然」だった
終身雇用の崩壊は、誰かが壊したのではない。経済構造がそれを許さなくなった結果である。
派遣法改正や小泉・竹中改革は、
「壊れかけた制度を無理やり延命した応急処置」
に近い性質を持っていた。
それをすべて「悪」と断じるのは、歴史の文脈を無視した議論である。
本当に向き合うべき問題は、以下である。
・産業の競争力低下
・教育の遅れ
・リスキリング不足
・人口構造の歪み
・個人依存型の人生設計
もはや「会社が人生を保証してくれる時代」は終わった。
これからの時代に必要なのは、
制度への依存ではなく、「個人の自立設計」である。
終身雇用を失ったこと自体が不幸なのではない。
それに代わる生存戦略を、日本社会が十分に用意できていないことこそが、最大の問題なのである。
著者プロフィール

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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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