「KABU&(カブアンド)」は、株式会社カブ&ピース(代表取締役:前澤友作)が提供する、**日常生活の支出を通じて“誰もが株主になれる”**ことを目指す新しい株式参加型プラットフォームである。2024年11月20日にサービスを開始し、2025年6月時点で既に69万人超のユーザーが株主登録をしている。これは、従来の「資金を拠出することで株を得る」仕組みに対して、「生活インフラを契約・利用するだけで、株式がもらえる」という、極めて斬新かつインクルーシブな構造を採用している。
前澤氏はこれを「国民総株主構想」と呼び、「ポイント」や「マイル」のように、消費行動に応じて株が貯まる社会を目指している。還元されるのは「株引換券」という通貨であり、それをKABU&の種類株と交換することで、名実ともに株主になれる仕組みである。
このプロジェクトは、スタートアップへの資金集中・民主的資本形成・企業との共創など、複数の社会的・経済的意義を内包する一方で、時価総額や種類株の権利内容などについては慎重な検討が求められている。
「KABU&(カブアンド)」について教えてください。
以下で詳しく解説します。
- ① サービスの仕組みと構造:「生活を株に変える」メカニズム
- ② 会員制度と還元率:有料プランで加速する株主化
- ③ ユーザー数と株主数の推移:国内最大級のスタートアップ株主数
- ④ 種類株式とその権利内容:議決権はなし、だが将来に含み
- ⑤ 意義と課題:株主民主化・資本循環の可能性とリスク
① サービスの仕組みと構造:「生活を株に変える」メカニズム

KABU&のコアは、「日常的な契約・支出が株主権益につながる」という発想である。ユーザーは、電気、ガス、携帯、インターネット、ふるさと納税、ウォーターサーバーといった提携サービスをKABU&経由で契約・利用することで、「株引換券」(1枚=1円換算)を受け取る。
この引換券は、定期的に実施される「株式交換期間」において、株式会社カブ&ピースが発行する種類株式(非上場)と交換することができる。初回は2025年4月25日に実施され、交換レートは「引換券5枚=1株」と設定された。
ただし、これは固定ではなく、今後の事業進捗や企業評価額によって変動する可能性がある。なお、この株式には議決権がない代わりに、将来の配当や上場時の資産性が期待される。
② 会員制度と還元率:有料プランで加速する株主化

KABU&は無料で利用可能だが、月額500円の有料会員「KABU&プラス」に加入することで、得られる引換券の還元率が常時2倍になる。このプランにより、株主化のスピードを高めたり、より多くの株数を獲得したい層を取り込む仕組みが構築されている。
たとえば、月々1万円の電気代をKABU&の提携電力会社で支払った場合、通常会員なら100枚(100円分)の株引換券、有料会員なら200枚を受け取れる。
還元対象サービスは今後も拡充予定であり、日用品の購入やエンタメ消費、サブスク、飲食店なども視野に入れているとされる。まさに「国民ポイント経済」の延長線上に「株主経済圏」を構築しようという構想である。
③ ユーザー数と株主数の推移:国内最大級のスタートアップ株主数

KABU&の株主数は、2025年6月時点で約69万人に達しており、これは未上場企業としては日本国内トップクラスの株主数である。申込件数ベースでは既に100万件を超えており、実質的なリピーターや複数口契約者も多いとされる。
このユーザー数の急拡大には、以下の3要因があると考えられる。
• 前澤氏の強力なSNS発信力とブランド
• 初期キャンペーンによる引換券付与(紹介キャンペーンなど)
• 生活インフラとの親和性の高さ
また、登録者の多くが「株式投資未経験者」である点は注目に値する。これは、金融教育・資本市場参加への新たな入り口として、既存証券業界が成し得なかった裾野拡大の成功事例ともいえる。
④ 種類株式とその権利内容:議決権はなし、だが将来に含み

KABU&で交換される株式は、株式会社カブ&ピースが発行する譲渡制限付き種類株式である。これは証券取引所に上場されていない非公開株であり、以下のような特徴を持つ。
• 株主名簿に記載され、**名実ともに「株主」**として扱われる
• 議決権はない
• 上場・売却は不可(現時点では流動性がない)
• 将来的に配当や資本増加の分配対象になりうる(可能性ベース)
この点は、「株式とは何か」を問い直す新しい試みでもある。従来の株式=上場市場で売買される証券という固定観念に対し、**「共創・共益の権利証」**として再定義を試みているとも言える。
もっとも、現時点では「引換券5円=株1株」という前提に企業価値180億円という高めの初期評価がついており、過大評価ではないかという市場からの懸念もある。
⑤ 意義と課題:株主民主化・資本循環の可能性とリスク

KABU&の最大の意義は、「株主」という経済的主体の概念を、資産保有層や投資家から、より広い生活者へと拡張する点にある。これは以下のような社会的意義を持つ:
• 金融リテラシーの向上
• 資本主義の民主化
• スタートアップ支援の新しいモデル
• ポイント経済から株主経済への転換
一方で、以下の課題も指摘されている:
• 株式の換金性・流動性がない(現時点では出口戦略なし)
• 株式評価の妥当性(1株5円の根拠)
• 議決権がない=経営に参加できない
• 株主数増加による情報開示義務の負担(株主総会招集など)
今後は、資本市場の規律や規制との整合性、金融商品取引法上の位置づけ、ステークホルダー責任などにも議論が及ぶ可能性がある。
カブアンドのリスクを教えてください。
タダで株がもらえるならリスクはないように思えますが?
換金性や流動性がないですし、上場に至らないまま会社が消滅する可能性もあります。
まとめ
- 前澤友作氏による「KABU&(カブアンド)」は、生活支出を通じて株主になれるという、既存の証券システムに対する挑戦的かつ啓蒙的なプラットフォーム
- その狙いは単なるプロモーションではなく、**国民全員が資本参加する「株主社会」**のビジョンを具現化しようとするもの
- 成功すれば、日本における投資人口の底上げや資本循環の活性化に寄与しうる
- しかし、流動性・権利・評価額といった「本来的な株式性」についての課題は今後の進化に委ねられる
著者プロフィール

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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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