「モナコのプライベートバンク」「高利回り固定預金」「国際デビットカード対応」。
こうした言葉の組み合わせは、富裕層向け金融の世界において強い吸引力を持つ。フォーブスモナコプライベートバンク(Forbes Monaco Private Bank、以下FPB Monaco)を名乗るスキームは、まさにその心理を正確に突いた存在だった。
しかし、外部調査報道や国際的な金融犯罪摘発を通じて浮かび上がったのは、正規の銀行としての実体を欠いたまま、投資資金・個人情報・決済インフラを巻き込みながら拡大していった、極めて危険な国際スキームの姿である。
本件は単なる「怪しい投資話」ではない。
銀行を装い、カード決済を絡め、複数国の規制の隙間を縫うことで成立した、現代型金融詐欺の完成形とも言える。本稿では、なぜこのスキームが成立し、多くの投資家が巻き込まれたのかを、構造的に読み解く。
- 「モナコ」「プライベートバンク」という言葉の持つ魔力
- 高利回り固定預金が示す危険なシグナル
- デビットカード発行と金融犯罪への接続
- 国境を跨ぐ分業構造と規制の盲点
- 日本人投資家が特に巻き込まれやすい理由
「モナコ」「プライベートバンク」という言葉の持つ魔力

FPB Monacoの最大の特徴は、実態よりも先にイメージが完成している点にある。
モナコという地名は、富裕層金融、プライベートバンキング、タックスプランニングと強く結びついており、日本の投資家にとっては「調べなくても信頼できそうだ」と感じさせる効果を持つ。
さらに「Forbes」という名称は、世界的ビジネスメディアを連想させ、無意識のうちに権威性を補完する。しかし実際には、モナコにおける正規の銀行登録や金融当局の監督下にある事実は確認されていない。
提示されていた銀行ライセンスは、コモロ諸島など信頼性に疑問の残るオフショア管轄由来とされ、SWIFTコードも実務で機能しない状態だったと報告されている。
つまり、銀行の「看板」だけが存在し、銀行の中身は存在しないという構図である。
高利回り固定預金が示す危険なシグナル

FPB Monacoが提示していた年率4〜8%超の固定利回りは、一見すると現実的な範囲に見える。しかし、ここにこそ最大の落とし穴がある。
現代の銀行業において、
- 元本の安全性
- 安定した固定利回り
- 継続的な支払い能力
を同時に満たすには、厳格な規制、自己資本比率、運用開示が不可欠だ。これらを欠いた状態で「安定した利回り」を謳う場合、その原資は投資運用ではなく、新規資金である可能性が極めて高い。
実際、FPB Monacoでは通常の銀行送金が困難で、仮想通貨など追跡性の低い手段が使われていたとされる。これは典型的なポンジスキームの兆候であり、資金流入が止まった時点で崩壊する構造を内包している。
デビットカード発行と金融犯罪への接続

本件をより深刻なものにしているのが、デビットカード発行を巡る不正疑惑である。
FPB Monacoは自らカード発行権限を持たないにもかかわらず、海外銀行の仕組みを悪用し、カードを取得・配布していた可能性が指摘されている。
さらに、マレーシアで摘発されたカードクローン拠点からは、関連カードや偽造機材が押収されており、投資スキームとカード不正ネットワークが交差していた疑いが浮上した。
これは単なる資金詐取ではない。
投資家の個人情報、カード情報、決済履歴が、国際金融犯罪のインフラに組み込まれるリスクを意味する。被害は金銭に留まらず、信用・法的立場にまで及ぶ可能性がある。
国境を跨ぐ分業構造と規制の盲点

FPB Monacoスキームが長期間表面化しなかった背景には、巧妙な国際分業がある。
- 名目上の銀行所在地
- ライセンスを装う国
- カード取得元の銀行
- カード偽造・実行拠点
- 投資家募集国
これらが分断されることで、どの国の当局も「自国単独では全体像を把握できない」状態が生まれる。
これは近年増加している国際金融詐欺の典型であり、合法と違法の境界線を意図的に曖昧化する設計と言える。
日本人投資家が特に巻き込まれやすい理由

日本人投資家は、海外金融商品に対して「情報格差」を前提に判断する傾向が強い。
「海外だから分かりにくい」「富裕層向けだから自分には難しい」という心理が、逆に精査を省略する理由になってしまう。
また、銀行・預金・カードという言葉への信頼が根強く、「銀行を名乗る以上、完全な詐欺はあり得ない」と無意識に考えてしまう点も見逃せない。
しかし、日本の法制度上、無登録の外国金融機関による預金受入や勧誘は重大な問題を孕む。
場合によっては、投資家自身が資金洗浄や不正決済の経路に組み込まれた当事者として扱われるリスクすら存在する。
この手の話は基本的に詐欺だと思って話を聞いています。
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まとめ
フォーブスモナコプライベートバンク問題は、「騙されたかどうか」という単純な二元論では捉えきれない。
それは、
- 権威ある名称を用いたブランディング
- 高利回り固定という古典的誘因
- 仮想通貨・カード決済の匿名性
- 国際規制の分断
これらが結合した、現代型国際金融詐欺の縮図である。
重要なのは、「それらしく見える金融機関」と「規制下にある正規金融機関」を明確に区別する視点だ。
特に銀行・預金・カードを伴う案件では、どの国の金融当局が監督しているのか、実際にどの決済インフラを使っているのかを確認できない時点で、関与を断つ判断が不可欠である。
この事件は、投資判断において「利回り」よりも「構造」を見ることの重要性を、改めて浮き彫りにしている。
著者プロフィール

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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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