なぜ人はコストや税金ばかりを気にし、高リターンや元本確保型投資を選べないのか — 大衆心理に潜む“非合理の正体” —

投資の世界において、最終的に重要なのは「ネットリターン」、すなわち手取りベースでどれだけ資産が増えるかである。しかし現実には、多くの人が「商品コスト」「税金」「社会保険料」といった“確定的な支出”ばかりを過剰に意識し、その結果として、より高いリターンを得られる選択肢や、元本確保型ファンドのような合理的な商品を避けるという矛盾した行動をとる。

この現象は単なる知識不足ではない。むしろ、人間の意思決定構造そのものが「非合理」に傾くよう設計されていることに原因がある。大衆になればなるほど、リテラシーが低くなればなるほど、その影響は強くなる。つまりこれは「能力の問題」ではなく、「構造の問題」であり、「心理の問題」である。

以下では、この非合理な行動の正体を5つの観点から解剖する。

  • 損失回避という人間の根本設計
  • 現在バイアスが長期投資を歪める
  • 理解できないものへの恐怖と拒絶
  • 同調バイアスと大衆の安心志向
  • 責任回避という見えない意思決定基準

損失回避という人間の根本設計

人間は「得をする喜び」よりも「損をする痛み」を強く感じるようにできている。この性質は行動経済学でいうプロスペクト理論に基づくものであり、投資判断において極めて大きな影響を与える。

たとえば、手数料や税金は「確実に減るお金」であるため、心理的には非常に強く意識される。一方で、投資リターンは将来の不確実な利益であり、その価値は過小評価されやすい。

本来であれば、多少のコストを支払ってでも、それ以上のリターンが見込めるのであれば合理的な選択である。しかし人間は、確実な損失を避けることを優先するため、結果として「リターンを取りにいかない」という逆転現象が起きる。

つまり、コストを気にするあまり、より大きな利益機会を自ら放棄してしまうのである。

現在バイアスが長期投資を歪める

人間は「今の利益・損失」を過大評価し、「将来の利益」を過小評価する傾向がある。これがいわゆる現在バイアスである。

投資においてはこの傾向が顕著に現れる。手数料や税金は今すぐ発生するため強く意識されるが、リターンは数年後、十数年後に実現するため、実感が持てない。

たとえば、5年後に大きく増える可能性よりも、「今1%減る」ことの方が心理的には重く感じられる。その結果、本来は長期で見れば有利な投資であっても、「目先のコスト」を理由に排除されてしまう。

これは合理的な計算ではなく、時間軸に対する人間の本能的な歪みによるものである。

理解できないものへの恐怖と拒絶

元本確保型ファンドやストラクチャード商品は、その仕組みが複雑であるがゆえに、多くの人にとって直感的に理解しにくい。

人間は理解できないものに対して本能的に警戒心を抱く。これは生存本能としては正しいが、投資においてはしばしば非合理な判断を生む。

重要なのは、多くの人が「理解できないから避けている」のではなく、「避ける理由を後付けしている」という点である。
その際に使われる典型的な言葉が「手数料が高い」「仕組みが怪しい」「税金が不利そう」といったものだ。

つまり、コスト批判の裏には、実は「わからないものへの恐怖」が隠れているケースが非常に多い。

同調バイアスと大衆の安心志向

人間は「正しい選択」よりも「多数派の選択」を優先する傾向がある。これが同調バイアスである。

たとえば、NISAでインデックス投資をすることは広く一般化しており、「みんなやっている」という安心感がある。一方で、元本確保型ファンドや高度な金融商品は利用者が限定的であり、心理的なハードルが高くなる。

ここで重要なのは、多くの人が投資判断を「期待リターン」ではなく、「安心できるかどうか」で行っている点である。

結果として、大衆はリスクを取らないのではなく、「孤立するリスク」を避けているに過ぎない。そしてその選択が、結果的に低リターンへとつながる。

責任回避という見えない意思決定基準

最後に見落とされがちだが極めて重要なのが、「責任回避」という心理である。

人は、損をすることそのもの以上に、「自分の判断で損をした」という事実を嫌う。だからこそ、多くの人は無意識のうちに「責任を分散できる選択」を選ぶ。

たとえば、誰もがやっている投資で損をした場合、「仕方ない」と納得できる。しかし、自分で選んだ少数派の投資で損をした場合、その責任はすべて自分に返ってくる。

この心理が、「無難な商品」「低リターンだが一般的な選択」へと人を誘導する。そして結果として、合理性ではなく「言い訳可能性」が意思決定を支配する。

でも、“責任を分散できる選択”をするのは、人として自然で合理的とも言えませんか?

その通りで、心理としては極めて合理的です。ただし問題は、それが“投資として合理的か”とは別だという点です。言い訳しやすい選択は、往々にしてリターンも限定的になる。だからこそ、自分が守っているのが資産なのか、それとも自尊心なのかを切り分けて考える必要があるのです。
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まとめ

商品コストや税金ばかりを気にし、高いリターンを取りにいかない、あるいは元本確保型ファンドのような合理的な選択肢を避けてしまう現象は、決して偶然ではない。それは、人間の意思決定が本質的に「非合理」に設計されていることの必然的な結果である。

損失回避、現在バイアス、理解不能への恐怖、同調圧力、責任回避。これらが複雑に絡み合うことで、大衆の意思決定は「論理」ではなく「感情」に支配される。

したがって、本当の意味での投資リテラシーとは、単なる知識量ではない。
重要なのは、「自分の感情を認識し、それに逆らえるかどうか」である。

市場で結果を出す人間は、特別に頭が良いわけではない。
ただ一つ、大衆と違うのは——

感情ではなく、構造で意思決定をしているという点に尽きる。

著者プロフィール

K2編集部
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