こんにちは、K2 College編集部です。
米国によるスイスの銀行への賠償請求は、脱税とマネーロンダリングに関与したスイスの金融機関に対して、米国政府が厳しい措置を講じた事例を指します。以下に、主要な事例とその背景、影響についてまとめます。
米国政府が何故スイスの銀行に賠償請求したんでしょうか?
米国人顧客の脱税を幇助したとしてスイスの銀行を訴えたという流れです。
- 背景と文脈
- 主要な賠償請求事例
- その他の影響
背景と文脈
スイスの銀行は長い間、秘密保持と匿名性の高さで知られ、富裕層や企業が資産を保護するために利用されてきました。しかし、この匿名性は脱税やマネーロンダリングといった不正行為にも悪用されることがありました。米国政府は、これらの不正行為に対処するためにスイスの銀行に対して賠償請求を行い、多額の罰金を課しました。
スイスの銀行の守秘義務が悪用されていたんですね。
富裕層の資金管理ということで元々厳格な情報管理がされていたので、一部不正な資金も入っていたようです。
主要な賠償請求事例
1. UBS(ユービーエス)
UBSは、スイス最大の銀行の一つであり、2009年に大規模な賠償請求を受けました。
概要:
- 事件の内容:UBSは、米国の顧客がスイスの秘密口座を利用して米国の税務当局(IRS)に報告せず、脱税を行うことを助長していた。
- 結果:UBSは、7億8,000万ドルの罰金を支払い、52,000以上の顧客口座の情報を米国政府に提供することで和解しました。
影響:
- この事例は、スイスの銀行制度の透明性に大きな影響を与え、秘密口座の利用が大幅に減少しました。
2. Credit Suisse(クレディ・スイス)
Credit Suisseは、2014年に米国政府との間で賠償請求を受けました。
概要:
- 事件の内容:Credit Suisseは、米国の顧客に対して秘密口座を提供し、脱税を助ける行為を行っていた。
- 結果:Credit Suisseは、2億4700万ドルの罰金と1億9600万ドルの返還金を支払い、さらに米国司法省との間で合計26億ドルの罰金を支払うことで和解しました。
影響:
- クレディ・スイスは、自らの業務を見直し、規制遵守の強化に取り組むこととなりました。
3. Wegelin & Co.
Wegelin & Co.は、スイス最古の銀行であり、米国政府の圧力により最終的に閉鎖に追い込まれました。
概要:
- 事件の内容:Wegelin & Co.は、米国の顧客に対して脱税を助けるために秘密口座を提供していた。
- 結果:同銀行は、5800万ドルの罰金を支払うことで米国司法省と和解しました。しかし、その後、業務継続が困難となり銀行は閉鎖されました。
影響:
- この事件は、スイスの銀行に対する国際的な圧力の増大を象徴するものであり、多くのスイス銀行が業務の透明性を向上させる動機となりました。
UBSやクレディ・スイスが実際に罰金を支払ったり、顧客情報を提出したんですね。
はい、この一連の流れでスイスの銀行の持つ秘匿性はなくなりました。
その他の影響
1. スイスの銀行法の改正
スイスは、米国との一連の和解を受けて、銀行法を改正し、顧客の匿名性保護に対する姿勢を大幅に変更しました。これには、以下の措置が含まれます:
- 顧客の身元確認手続き(KYC)の強化。
- 疑わしい取引の報告義務(STR)の強化。
- 国際的な情報交換協定(CRS)への参加。
2. 米国のFATCA法施行
米国は、2010年に「外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)」を施行しました。この法律により、米国市民や居住者が外国の金融機関に保持する資産の報告が義務付けられました。FATCAは、スイスを含む多くの国の銀行に対して顧客情報の提供を求めており、これが米国による賠償請求の背景にあります。
米国人の海外資産をすべて把握する内容ですね。
そうですね。一定額以上の金融資産はIRSに報告されるようになっています。
まとめ
- スイスの金融大手クレディ・スイスが、総額28億1500万ドル(約2860億円)の罰金を払う
- 米国はFATCAを施行し、米国人の海外資産の報告義務を課している
米国によるスイスの銀行への賠償請求は、脱税やマネーロンダリングに対する国際的な規制強化の一環として行われました。UBS、Credit Suisse、Wegelin & Co.などの事例は、スイスの銀行制度の透明性と倫理的な業務慣行に大きな変化をもたらしました。これにより、スイスの銀行はより厳格な規制の下で運営されるようになり、国際的な金融システムの健全性が向上しました。米国のFATCA法やスイスの銀行法改正は、その象徴的な取り組みとして、今後も続けられるべき重要な施策であると言えます。
著者プロフィール
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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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