キャプティブ(再保険会社)を使った事業承継スキーム

こんにちは、K2 College編集部です。

キャプティブ(Captive)は、企業が自身のリスクを管理し、保険コストの削減や財務基盤の強化を目的として設立する再保険会社です。特に事業承継において、キャプティブを活用することで、リスクの内部管理や資産の効率的な運用が可能となり、後継者へのスムーズな経営移行が実現できます。本稿では、上場企業および非上場企業の具体的な事例を挙げつつ、キャプティブを活用した事業承継スキームの詳細を解説します。

キャプティブは初めて聞きました。

馴染みのない言葉なので知っている方は少ないと思います。確認していきましょう。

  • キャプティブを活用した事業承継の概要
  • キャプティブを利用する際の課題
  • キャプティブ活用の成功要因

キャプティブを活用した事業承継の概要

キャプティブを活用した事業承継スキームは、企業が自社で設立した再保険会社を通じて、リスク管理や資産運用を効率化する手法です。このスキームを導入することで、外部の保険会社に依存せず、企業の特有のリスクを内部で管理し、長期的な財務安定性を確保できます。

主なメリット

  • リスク管理の効率化: 企業が抱える特有のリスクをキャプティブを通じて管理することで、リスク分散と最適化が可能。
  • 保険コストの削減: 保険料の内部積立が可能となり、長期的なコスト削減が見込める。
  • 財務基盤の強化: キャプティブによる資産運用で、事業承継時に必要な資金を効率的に準備できる。
  • 税制上のメリット: キャプティブで積立てた保険料が税務上の優遇措置を受けられる場合があり、資金効率を高める。

上場企業の事例

事例1: トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車は、1989年に米国ハワイ州でキャプティブ「トヨタ・モーター・インシュアランス・カンパニー」を設立しました。このキャプティブを通じて、グループ全体のリスク管理を効率化し、保険コストの削減に成功しました。事業承継の観点からも、キャプティブを活用して後継者への円滑な移行と財務基盤の強化を図っています。

事例2: 日産自動車株式会社

日産自動車は、1990年にハワイ州でキャプティブ「ニッサン・インシュアランス・カンパニー・オブ・ハワイ」を設立しました。このキャプティブは、グループ内の保険リスクを一元管理し、リスク管理コストを大幅に削減しています。事業承継においても、キャプティブによるリスク管理の効率化と財務の安定性向上を実現しました。

非上場企業の事例

事例1: 株式会社ブリヂストン

ブリヂストンは、1991年にハワイ州でキャプティブ「ブリヂストン・インシュアランス・カンパニー・オブ・アメリカ」を設立しました。このキャプティブは、同社の保険コスト削減とリスク管理強化を目的とし、事業承継においても重要な役割を果たしています。キャプティブを通じて、事業承継資金の効率的な積立が可能となり、次世代へのスムーズな経営移行を支援しました。

事例2: 株式会社ヤマハ発動機

ヤマハ発動機は、1992年にハワイ州でキャプティブ「ヤマハ・モーター・インシュアランス・カンパニー」を設立しました。このキャプティブを通じて、グループ全体の保険リスクを集約し、リスク管理コストを最適化しました。事業承継の際には、キャプティブを活用して資産を効率的に運用し、後継者への事業移行を円滑に進める体制を構築しました。

大手の有名企業も利用しているんですね。

資産が大きな会社ほどキャプティブを活用するメリットも大きいからです。

キャプティブを利用する際の課題

キャプティブの設立と運営には、いくつかの課題があります。これらを事前に把握し、適切な対策を講じることが、キャプティブを成功させるための鍵となります。

設立・運営コスト

キャプティブの設立には一定の初期費用が必要です。また、運営にも継続的なコストがかかります。企業はこれらの費用を十分に考慮し、長期的なコスト削減効果を見込んだ計画を立てる必要があります。

規制対応

キャプティブを設立する国や地域の法規制に従う必要があります。特に、ハワイやケイマン諸島など、キャプティブ設立に適した地域は、それぞれ異なる規制が存在します。これらの規制に対応するため、法務・税務の専門知識が求められます。

リスク集中の懸念

キャプティブにリスクを集中させることで、内部リスク管理の難易度が増す可能性があります。適切なリスク分散と管理体制を構築することが重要です。

専門知識の必要性

キャプティブの設立・運営には、保険、リスク管理、税務、法務など多岐にわたる専門知識が必要です。これらの知識を持つ専門家と連携し、適切な運営を行うことが求められます。

初期費用や継続コストを考えると安定した利益が見込めないと始められないですね。

また規制は変わっていくので、そのあたりは専門家のサポートが必須になります。

キャプティブ活用の成功要因

キャプティブを活用した事業承継を成功させるためには、以下の要因が重要です。

明確な目的設定

キャプティブ設立の目的を明確にし、事業承継計画と整合性を持たせることが必要です。リスク管理、コスト削減、資産運用など、具体的な目標を設定し、それに基づいてキャプティブの運営を行うことが重要です。

専門家の活用

リスク管理や保険、法務、税務の専門家と連携し、キャプティブの設立・運営を適切にサポートする体制を構築することが求められます。専門家の知見を活用することで、法規制への対応や資産運用の効率化が図れます。

継続的なモニタリング

キャプティブの運営状況を定期的にモニタリングし、必要に応じて戦略の見直しを行うことが重要です。これにより、キャプティブの運営が企業の目的に合致しているかを確認し、長期的な成果を確保することができます。

リスク管理の適切な実行

企業のリスクを正確に評価し、キャプティブを通じて適切に管理することで、事業承継に伴うリスクを最小限に抑えることができます。リスク管理の適切な実行は、キャプティブの成功に直結します。

財務基盤の強化

キャプティブを通じて資産を効率的に運用し、財務基盤を強化することで、事業承継時の資金不足を防ぎます。これにより、後継者へのスムーズな事業移行と企業の持続的な成長が可能となります。

キャプティブを作る目的や企業のリスク管理は大事ですね。

また利益や資産がどのように変動しているか毎年チェックしながら運営する必要があります。

まとめ

  • キャプティブを活用した事業承継スキームは、上場企業・非上場企業を問わず、リスク管理の効率化、保険コストの削減、財務基盤の強化に有効
  • 具体的な事例として、トヨタ自動車や日産自動車、ブリヂストン、ヤマハ発動機など、多くの企業がキャプティブを活用

ただし、キャプティブの設立・運営にはコストや法規制対応、リスク管理の複雑さが伴うため、事前に十分な計画を立て、専門家の支援を受けることが重要です。適切に活用することで、後継者への円滑な事業承継と企業の持続的な成長が期待されます。
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著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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