日本の生命保険市場において、近年、円建て商品の人気が再び高まりを見せています。
これまで低金利や円安の影響から、外貨建て保険が注目される場面も多くありましたが、為替リスクや金利変動の影響を避けたいと考える層が増えていることが背景にあります。
特に、2024年以降の国内金利上昇や円高傾向が、円建て保険の魅力を再認識させる要因となっています。また、高齢化社会の進展により、安定した老後資金の確保を重視する動きも見られ、保険会社もこうしたニーズに応える新商品を積極的に投入しています。外貨建商品のリスクや説明不足に対する不信感の高まりも、円建て保険への関心を後押ししています。
米ドルなど高金利の通貨で運用した方が、解約返戻金が複利効果で大きく増えるのに、どうして円建生命保険の人気が復活しているのでしょうか?
それでは、円建生命保険の人気復活の背景について、要因を詳しく見ていきましょう。
- 円高傾向と為替リスク回避
- 金利上昇と運用環境の改善
- 高齢化社会と安定収入への需要増加
- 外貨建保険への信頼低下
- 貯蓄性商品の見直しと新商品の投入
円高傾向と為替リスク回避

近年、円高傾向が見られる中で、為替リスクを避けたい投資家や保険契約者が増えています。外貨建て保険は高い利回りが魅力ですが、為替変動による元本割れリスクが大きな懸念材料でした。そのため、安定した運用を求める層が再び円建て商品に目を向けるようになりました。また、円建て保険は日本国内の経済動向に連動しているため、リスク許容度が低い層にとって適した選択肢となっています。
金利上昇と運用環境の改善

2024年に入ってからの日本国内の金利上昇が、円建生命保険の人気復活を後押ししています。円建保険の商品利率は、国債利回りなど国内金利動向に連動しているため、金利が上昇すれば契約者にとってより魅力的な条件となります。これにより、長期間低金利に耐えてきた日本国内の保険商品が再評価されています。また、生命保険会社も資産運用の自由度が増し、高利回りの商品開発が可能となっています。
高齢化社会と安定収入への需要増加

日本の高齢化が進む中で、安定した収入を確保することが課題となっています。円建生命保険は、為替リスクを伴わず、年金の補填や老後資金の安定確保を目指す人々に適した商品です。特に年金型や養老型保険は、老後の資金計画を立てやすい点で人気が高まっています。また、死亡保障や介護保障といった付加価値がある円建て保険も、年齢層が高い契約者に支持されています。
外貨建保険への信頼低下

外貨建保険の一部商品での元本割れ事例や販売時の説明不足問題が、消費者の不安を高めました。こうした背景から、リスク回避を目的とする顧客が円建保険へと回帰しています。さらに、金融庁が保険商品の透明性を高める施策を強化していることも、保険会社が円建て商品の魅力を再提示する契機となりました。特に、複雑な外貨建商品の仕組みに対する不信感が広がる中で、シンプルな円建商品が安心感を提供しています。
貯蓄性商品の見直しと新商品の投入

近年、生命保険会社は貯蓄性の高い円建保険商品の開発に力を入れています。例えば、学資保険や個人年金保険など、教育資金や老後資金の積立を目的とした商品が人気です。また、一時払い終身保険や短期払い型の保険商品は、まとまった資金を効率的に運用したい層からの需要が高まっています。さらに、デジタル技術を活用したシミュレーションや相談窓口の充実により、契約者のニーズに合った商品が提案されやすくなっている点も、円建生命保険の普及に寄与しています。
国内金利が上昇してきているといっても、まだまだ金利差があります。
将来の為替リスクを回避したいという気持ちが強いのでしょうか?
日本の文化には「安全志向」が強い面があり、特に金融商品に関しては、リスクを避けることが重視されることが多いです。このため、外貨建て保険のように将来のリスクが伴う商品よりも、安定的な保障を提供する円建て保険に加入する人が増えているのだと思います。
まとめ
- 為替リスク回避による需要増加
- 国内金利上昇が魅力を後押し
- 高齢化に伴う安定収入ニーズ
- 外貨建保険への不信感の拡大
- 新商品の開発とサービスの向上
著者プロフィール

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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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