「Aladdin(アラジン)」は、ブラックロック社が開発・運営する世界最先端のリスク管理・資産運用支援プラットフォームです。単なるポートフォリオ管理ツールにとどまらず、AI・ビッグデータ・クラウド処理・リスク解析・決済支援などを包括的に統合し、グローバルな投資家の意思決定を支えています。
2025年現在、Aladdinは世界中で300社以上の金融機関に導入されており、合計約25兆ドル以上の資産がこのシステム上で管理されているとされます。これにより、Aladdinは「世界の金融インフラの一部」とすら呼ばれる存在となっています。
Aladdinについて、もう少し詳しく教えてください。
以下で解説していきます。
- ① 日本国内の導入事例:金融機関のデジタル変革を支える
- ② 米国での導入事例:民間・政府レベルでの広範な利用
- ③ 欧州とアジアの展開:規制適応と多通貨対応が強み
- ④ Aladdin導入のメリット:単なるITシステムではない
- ⑤ ブラックロックの戦略と今後:Aladdinが築く金融エコシステム
① 日本国内の導入事例:金融機関のデジタル変革を支える

日本の金融機関でも、Aladdinの導入が進んでいます。
🔹 第一生命保険
• 導入目的: 債券運用の高度化、ポートフォリオの効率化
• 背景: 運用残高が数十兆円規模に上るため、精緻なリスク分析と効率的運用が不可欠
• 効果: 「フロントからリスク管理までの一貫運用」が可能に
🔹 三菱UFJ信託銀行
• 導入形態: 自行内での利用と他社へのBPO提供
• 特徴: 「Aladdinを活用した資産運用業務の外部受託」を展開
• 顧客: 地方銀行や年金基金向けにパッケージとして提供
🔹 日本マスタートラスト信託銀行
• 提携内容: BlackRockおよびState Streetと連携
• 目的: 年金・保険会社向け資産管理業務の効率化
• 影響: 運用業務の「ブラックボックス化」を防ぎつつ高度化を実現
日本では、年金・信託・生保といった長期運用を担うプレイヤーが主に採用しており、これらの機関はAladdinによって精緻なリスク管理と透明性の高い運用を実現している。
② 米国での導入事例:民間・政府レベルでの広範な利用

アメリカではAladdinは金融業界のインフラともいえる存在です。
🔹 Wells Fargo(ウェルズ・ファーゴ)
• 米大手銀行。Aladdinをコアの資産運用・リスク評価エンジンとして導入
• 個人・法人資産の運用とリスク評価に活用
🔹 MetLife(メットライフ)
• 生命保険最大手の1つ
• 長期債券運用やマクロ経済リスクの管理にAladdinを使用
🔹 AT&T(通信大手)
• 事業会社でありながら、年金基金運用にAladdinを活用
• 非金融企業の年金部門やトレジャリー部門にも進出していることを示す好例
米国では金融機関のみならず、企業年金・保険会社・ヘッジファンドにまで導入が広がっており、資本市場全体のデジタル運用インフラとしての立ち位置を確立している。
③ 欧州とアジアの展開:規制適応と多通貨対応が強み

ヨーロッパやアジアでも、Aladdinはその汎用性を武器に採用が進む。
🔹 Deutsche Bank(ドイツ銀行)
• 欧州大手の投資銀行
• Aladdin導入により、マルチアセットの国際運用を一元管理
🔹 Prudential plc(英プルデンシャル)
• 英国最大級の保険会社
• グローバル債券・株式のポートフォリオに適用
🔹 韓国国民年金公団(NPS)
• 運用資産約800兆ウォン規模の超巨大年金基金
• Aladdinによりグローバルポートフォリオの統合管理とパフォーマンス分析を可能に
🔹 AIAグループ(香港)
• アジア太平洋地域の大手保険会社
• Aladdinを保険運用とリスクヘッジ管理に活用
🔹 CaixaBank(スペイン)
• プライベートバンキング部門にAladdinを導入し、富裕層向け投資助言の高度化を実現
このように、多通貨・多市場・規制対応を柔軟にこなせることが、国際的な金融機関から選ばれる大きな要因となっている。
④ Aladdin導入のメリット:単なるITシステムではない

Aladdinの導入により、金融機関や機関投資家は以下のような利点を得ている:
✅ 投資判断の高度化
• マクロ経済・市場データ・企業財務をリアルタイムで統合分析
• 数十億件のシミュレーションを通じたリスクシナリオ分析が可能
✅ バックオフィスの効率化
• トレードの執行からポートフォリオ評価、決済まで一括管理
• 人手や部門を減らしつつ正確性を向上
✅ 規制対応の自動化
• リスク計測・流動性報告・ストレステストなどがシステム化
• バーゼルIIIやソルベンシーIIといった国際規制への適応を支援
✅ 信用と透明性の強化
• 投資委員会・監査部門への説明責任が容易に
• 透明なパフォーマンス評価が可能に
つまり、Aladdinは「金融のOS(オペレーティング・システム)」ともいえる存在であり、今や投資意思決定の神経系を担う不可欠なプラットフォームである。
⑤ ブラックロックの戦略と今後:Aladdinが築く金融エコシステム

ブラックロックはAladdinを単なる社内システムではなく、外部向けSaaS(サービスとしてのソフトウェア)ビジネスとして展開し始めています。
• 顧客数:世界300社以上(銀行・年金基金・保険・政府系ファンド等)
• 売上高:Aladdin関連事業は年間数十億ドル規模の収益源に
• 将来展望:デジタル資産管理、AIアドバイザー、気候リスクモジュールなどの統合を進行中
ブラックロックはAladdinを軸に、「運用×テクノロジー」領域での圧倒的な市場支配力を築いており、今後は中堅資産運用会社・富裕層金融サービス市場への進出も予想されます。
非金融企業(AT&T等)にも導入が拡大しているようですね。
年金や余剰資金の運用をプロ並みに管理したいと考えたり、運用業務を効率化し、実績あるツールでガバナンスも強化したいと考える企業が増えているからではないでしょうか。
まとめ
- ブラックロックのAladdinは、世界の金融機関にとって「安心・効率・高度な判断」を可能にする最重要ツールとして定着している
- Aladdinは単なるツールではなく、「グローバル金融業界の運用の共通言語」に近い存在になりつつある
- 導入を検討する側にとっても、「何を自社で運用し、どこをAladdinに委ねるか」が今後の競争力を決める判断軸となる
著者プロフィール

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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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