■ 総論:管理できない国家が選んだ「恐怖による統治」
日本では、行政、官庁、検察、警察、税務署といった公的機関が、あたかも社会全体を隅々まで管理・監督しているかのようなイメージが広く共有されている。しかし現実には、その認識は大きく現実と乖離している。
実際の運営現場では、違反行為、脱法行為、グレーゾーン取引、形式違反などは膨大な数にのぼり、人的・予算的制約のもとで「すべてを把握し、是正する」ことは物理的に不可能である。
にもかかわらず、社会秩序が一定程度維持されているのはなぜか。
その答えは、「全件管理」ではなく、「見せしめと萎縮を利用した統治モデル」にある。国家は管理能力の限界を補うため、象徴的な摘発・処罰・報道を通じて、国民に自己規律を内面化させる構造を築いてきたのである。
本稿では、この“萎縮型ガバナンス”の実態と背景、その問題点、そして私たちが取るべき現実的対応について、多角的に考察する。
- 国家はそもそも「全部を取り締まれない」
- 「見せしめモデル」は最も効率的な統治技術
- なぜスケープゴートが生まれるのか
- メディアは「統治装置」に組み込まれている
- なぜこの歪んだ構造は維持され続けるのか
国家はそもそも「全部を取り締まれない」

まず理解すべき前提は、国家権力の「物理的限界」である。
税務署を例に取れば、全国の個人事業主・法人の数は数百万規模に達する。一方、実際に税務調査が入るのは、そのうちの数%にも満たない。警察や検察についても同様で、すべての違法行為を網羅的に捜査する能力など存在しない。
理由は明確である。
• 人員不足
• 予算制約
• 書類・手続きの膨大さ
• 情報収集の困難性
• 訴訟コストの高さ
これらが常に足かせとなっている。
つまり、制度設計の段階から、国家は「全部は無理」という前提に立って運営されている。完璧な管理社会など、現実には存在しない。
この事実は、一般国民にはあまり共有されていないが、行政内部では常識に近い認識である。
「見せしめモデル」は最も効率的な統治技術

全件管理が不可能である以上、国家は別の方法で秩序を維持する必要がある。そこで採用されてきたのが、「シグナル統治」、いわゆる見せしめモデルである。
その構造は単純だ。
1. 目立つ事案を選別
2. 厳格な処分を下す
3. メディアで大々的に報道
4. 社会全体に恐怖を浸透させる
このプロセスによって、多数派の人々は「自分も標的になるかもしれない」と感じ、自主的に行動を抑制するようになる。
結果として、実際には監視していなくても、社会は“勝手に従順化”していく。
この仕組みは、費用対効果の面で極めて優れている。
全員を監視するより、数人を厳罰に処す方が圧倒的に安いのである。
そのため、この方式は日本だけでなく、多くの先進国でも広く採用されている。
なぜスケープゴートが生まれるのか

見せしめモデルの副作用として、必然的に生じるのが「スケープゴート化」である。
標的になりやすいのは、次のような層だ。
• 政治的影響力が弱い
• 資金力が乏しい
• 有力弁護士を雇えない
• メディア対応に不慣れ
• 世論的に叩きやすい
つまり、「反撃しにくい存在」が選ばれやすい。
本質的に同様の行為をしている主体が多数存在していても、その中の一部だけが処罰される。処罰されなかった側が“潔白”であるとは限らない。
この不均衡は、制度的に内在している。
意図的な場合もあれば、結果的にそうなる場合もあるが、いずれにせよ「公平性」は構造上担保されにくい。
メディアは「統治装置」に組み込まれている

現代社会において、見せしめ統治を成立させている最大の装置がメディアである。
多くの報道は、以下に依存している。
• 捜査当局からのリーク
• 公式発表
• 記者クラブ情報
結果として、報道内容は当局側のストーリーをなぞる形になりやすい。
そのため、
• 起訴前でも「犯罪者扱い」
• 推定無罪の形骸化
• 反論は小さく扱われる
• 無罪後も名誉は回復しない
といった現象が頻発する。
メディアは形式上は独立しているが、実態としては統治システムの一部として機能している側面が強い。
これは記者個人の問題ではなく、構造的依存関係の問題である。
なぜこの歪んだ構造は維持され続けるのか

では、なぜこのような問題を孕んだ仕組みが改善されないのか。
主な理由は三つある。
第一に、「コストが安い」ことである。全件管理よりも圧倒的に効率的だ。
第二に、「責任回避ができる」点である。象徴的摘発を行えば、「仕事をしている感」は演出できる。
第三に、「反発が分散される」ことである。被害者が個人単位に分断され、制度批判に発展しにくい。
これらの理由により、このモデルは制度的に温存されてきた。
個々の職員が優秀であっても、構造そのものが変わらない限り、本質的な改善は難しい。
問題が分かっているなら、普通は改善されそうなのに…なぜ変わらないんでしょう?
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まとめ:萎縮型社会で生きるための現実的戦略
本稿で見てきたように、日本の行政・司法システムは、「完全管理」ではなく「恐怖と自己規律」に依存した統治構造の上に成り立っている。
これは陰謀論ではなく、現実的制約から導かれた制度設計の帰結である。
重要なのは、この構造を理解したうえで、どう行動するかである。
現代社会では、
• 法令遵守だけでは不十分
• 目立ちすぎることはリスク
• 対応力・防衛力が不可欠
• 記録管理・証拠保存が重要
• 専門家ネットワークが武器になる
といった視点が不可欠になる。
特に、経営者、投資家、発信者、専門職にとっては、「制度リスク」そのものが最大の経営リスクになり得る。
もはや「正しさ」だけで守られる時代ではない。
制度の限界を冷静に見極め、法・政治・世論を含めた総合的なリスク管理を行うことこそが、成熟社会における合理的な生存戦略なのである。
著者プロフィール

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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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