「リノシー現象」――テクノロジーと“安心”を武器に拡大する日本式マスマーケティング投資の罠 ― オープンハウス型海外不動産スキームとの構造的類似 ―

総論:人間は合理的ではなく、安心を求める生き物である

投資とは、数字と確率の世界のように見えて、実際は人間の心理が支配する極めて感情的な営みである。
株式市場も債券市場も仮想通貨市場も、動いているのはマネーではなく、人間の「恐怖」と「欲望」だ。
ウォーレン・バフェットの言葉にあるように、「他人が貪欲なときに恐れ、他人が恐れているときに貪欲であれ」という逆説は、単なる格言ではなく、行動心理学の核心を突いている。

だが、この言葉を理解していても、実践できる人間はほとんどいない。
なぜなら人間は、損失を避けるためなら利益を逃すことを選ぶ「損失回避バイアス」を本能的に持っているからだ。
人は合理的な判断よりも、他人と同じ行動を取ることで得られる安心感を選ぶ。
それが「群衆に従う」という最も危険な投資行動の始まりである。

  • 群衆心理は「同調圧力」と「情報の錯覚」から生まれる
  • 群衆に従う投資家は、常に「過去」に反応している
  • 孤独に耐える勇気が、利益をもたらす
  • 「群衆から離れる」ための実践的思考法
  • バブルの終わりと「群衆の幸福感」

群衆心理は「同調圧力」と「情報の錯覚」から生まれる

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市場で群衆が形成される理由は明確だ。
人は「他者の判断を自分の判断の代替」として利用する。
つまり、自分の頭で考えるよりも、「みんなが買っているなら大丈夫だろう」と考えるほうが圧倒的に楽なのだ。
この心理は、古典的な実験――アッシュの同調実験でも証明されている。
明らかに間違った答えでも、集団の9割が同じ誤答をすれば、人間は自らの正しい判断を曲げてまで多数派に合わせてしまう。

投資でも同じだ。
SNSのタイムラインが「この株が熱い」「この通貨が上がる」で埋まると、冷静な判断は吹き飛ぶ。
ニュース番組が「歴史的高値」「バブルの再来」と騒ぐ頃には、群衆心理はピークに達している。
そしてその「安心」の頂点こそ、次の暴落の始まりである。
価格が上がるから買う人が増え、買う人が増えるからさらに価格が上がる――。
この循環はやがて、買う理由を失った瞬間に崩壊する。

群衆に従う投資家は、常に「過去」に反応している

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群衆が動くのは、いつも「すでに起こったこと」に対してだ。
上昇を見てから買い、下落を見てから売る。
つまり、群衆投資家の行動は常に過去のチャートに対する反応であって、未来の価値に対する洞察ではない。

真の投資家は、群衆が反応する前に動く。
まだニュースになっていないトレンド、まだ誰も注目していない企業、まだ恐怖に支配されている市場に目を向ける。
ジョン・テンプルトン卿は言った。「強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で死ぬ」と。
この言葉が示すのは、群衆がどの段階で参加し、どの段階で破滅するかの予言そのものだ。

投資の世界では、「安心」を感じた瞬間にリスクは最大化する。
なぜなら、すでに群衆の中に埋もれ、自分で判断する力を失っているからだ。

孤独に耐える勇気が、利益をもたらす

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本当に利益を得るためには、「孤独に耐える力」が必要だ。
まだ誰も信じていない時に信じ、誰も信じなくなった時に買う。
逆に、誰もが熱狂している時に冷静に売る。
この「逆張り」は言葉で言うほど簡単ではない。
人は孤立を恐れる。孤立することは、社会的な死に近い不安を伴うからだ。

しかし市場では、孤独こそが最も価値のあるポジションになる。
大衆が一方向に動く時、そこにはすでに過剰な期待とレバレッジが溜まっている。
自らの分析に基づき、「まだ誤解されている」「市場が正しく評価していない」ものを静かに拾う投資家だけが、やがて群衆が後から殺到する波の恩恵を受ける。

孤独な投資は、短期的には苦痛を伴う。
だが長期的には、群衆の誤りを修正する市場の力が、静かな投資家を報いる。
その報酬こそ「真のリターン」である。

「群衆から離れる」ための実践的思考法

巨大なスマホから急いで離れる群衆[10143011732]の写真・イラスト素材|アマナイメージズ

では、どうすれば群衆から距離を置けるのか。
単に「他人と逆のことをする」だけでは逆張りの自己満足に陥る。
重要なのは、独立した思考の軸を持つことだ。

  1. ニュースよりも一次情報を読む。
    企業の決算書、マクロ統計、需給データなど、自らが解釈できる素材に触れる。
    報道やSNSは常に「解釈済みの情報」であり、そこにバイアスが潜んでいる。
  2. 時間軸を長く取る。
    群衆が短期の値動きに反応するなら、長期の構造変化に賭ける。
    たとえば金利サイクル、人口動態、AI革命、エネルギー転換など、時間の流れに逆らわないテーマを読む。
  3. 価格ではなく価値に焦点を置く。
    価格は市場心理の反映にすぎない。価値を見極めるには、ビジネスモデル・キャッシュフロー・競争優位を分析すること。
  4. 孤独を恐れない。
    誰も語っていない投資テーマに注目することは、最初は不安だが、やがて優位になる。
    「静寂の中にチャンスがある」と考える習慣を持つ。

バブルの終わりと「群衆の幸福感」

群衆が最も幸福を感じている瞬間こそ、バブルの終わりである。
ITバブル、住宅バブル、仮想通貨バブル――どの時代も、熱狂の構図は同じだ。
すべての人が利益を語り始め、テレビや雑誌が「誰でも儲かる」と言い出す。
そして「まだ間に合う」という言葉が出た瞬間、すでに間に合わない。

人間は集団の中にいると「責任が分散される」と感じる。
群衆に従えば、自分の失敗は群れの失敗になるから、心理的な痛みが軽くなる。
だが、市場は情け容赦なく個人単位で評価する。
群衆とともに動いた損失も、最終的に背負うのは自分一人だ。

ゆえに、「群衆に従う」ということは、判断を他人に委ねる行為であり、
投資における責任の放棄である。

日本人の特性なのか、やっぱり皆と同じものの方が安心してしまいがちですね。

ただビジネスも投資も群集心理を理解する必要がありますし、感情と分けて判断しないといけませんね。

まとめ

  • 沈黙の中にこそ、真実の声が聞こえる
  • 情報を取捨選択し、自分の分析と信念で動く。
  • 群衆に従うことが、最も危険な投資行動である。
  • 成功とは、孤独な決断の積み重ねである。
  • 群衆の中に安らぎを求めるな。

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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