「快適」と「危機感」の分断は万国共通か ――それとも日本は特別に“問題が深い国”なのか

同じ国、同じ社会を見ながら、「まだ快適だ」「特に問題は感じない」と考える人と、「構造的にかなり危うい」「静かな衰退が進んでいる」と危機感を抱く人が分かれる現象は、日本に限った話ではない。アメリカでも、ヨーロッパでも、新興国でも、程度の差はあれ同様の分断は存在する。

ただし、日本の場合、この分断が特に長期化しやすく、かつ拡大しやすい条件を複数同時に抱えている。そのため、「日本は本当に大丈夫なのか」という問いが、他国以上に評価の分かれるテーマになっている。

重要なのは、日本が「特別にダメな国」なのかどうかではない。
日本はむしろ、問題があっても壊れにくく、見えにくい国であり、その特性こそが、快適派と危機派の認識差を大きくしている。

  • この認識のズレ自体は、どの国にも存在する
  • それでも日本でズレが大きくなりやすい理由
  • 日本は「急落しない代わりに、静かに薄まる国」
  • 日本は「国内基準」で完結する人が多い
  • 日本の問題は「多い」のではなく「可視化されにくい」

この認識のズレ自体は、どの国にも存在する

上司やクライアントとの間に起こる認識のズレをなくそう | ギルドプロジェクト

まず前提として、「体感としての快適さ」と「構造としての不安」が乖離する現象そのものは、世界共通である。

例えばアメリカでは、
日常生活は便利で、テクノロジーは最先端、株価は高水準にある。一方で、医療費や教育費の高騰、所得格差の拡大、中間層の不安定化に強い危機感を抱く層も多い。

ヨーロッパでも、
社会保障が充実し生活は安定していると感じる人がいる一方、移民問題や財政赤字、産業競争力の低下を理由に「持続不可能だ」と考える人も少なくない。

つまり、
「今は困っていない」と「この構造は長く持たない」
この二つの見方が同時に存在すること自体は、どの国でも起きている自然な現象だ。

それでも日本でズレが大きくなりやすい理由

いつまでも快適に暮らしたい!」 高齢者が暮らしやすい住まいの条件と工夫 | 暮らしのこれから

日本が特にこのズレを拡大させやすい理由の一つは、生活水準の底上げが極端に高いことにある。

治安、清潔さ、公共交通、食の質、インフラの安定性。
これらは世界的に見ても非常に高水準で、しかも全国的に均質だ。

その結果、
日常生活ベースでは「不満が生じにくい」「危機を体感しにくい」社会になっている。

構造的な問題――
人口減少、財政赤字、通貨価値の低下――が進行していても、それが生活の崩れとして表面化しにくい。この点が、日本を「問題が見えにくい国」にしている。

日本は「急落しない代わりに、静かに薄まる国」

静かな森の中 水に沈む鳥居が神秘的だった

他国では、危機は比較的わかりやすい形で現れることが多い。

失業率の急上昇、通貨危機、インフレ暴走、政情不安。
こうした事象は、誰の目にも明確な「異変」として映る。

一方、日本は違う。

雇用は守られ、企業は延命され、制度は維持される。
通貨価値は急落しないが、長期的には下がり続ける。
給料は下がらないが、実質的には増えない。

これはクラッシュではなく、希薄化である。

何かが壊れるのではなく、
少しずつ「余裕」「選択肢」「国際的な立ち位置」が薄まっていく。

この構造が、日本では危機感が共有されにくい最大の理由だ。

日本は「国内基準」で完結する人が多い

大阪大学の研究「日本人は世界1いじわる」=日本低迷 | 森翔吾の公式ブログ

もう一つ、日本特有の特徴は、比較対象が国内に閉じている人の割合が非常に高いことだ。

海外で働いた経験がなく、
外貨建てで資産を見ず、
グローバル賃金や購買力と比較しない。

この状態では、相対的な劣化は見えない。

昨日と今日で生活が劇的に悪化しない限り、
「問題がある」と感じる理由が存在しない。

一方で、外から日本を見る視点を持つと、
円安は国力の相対低下として映り、日本人の賃金水準は世界基準では低い位置にあることが明確になる。

この「比較の有無」が、評価の分岐点になる。

日本の問題は「多い」のではなく「可視化されにくい」

社会問題の俯瞰調査 - RISTEX 社会技術研究開発センター

最後に強調すべき点は、日本が「問題だらけの国」だという理解は正確ではない、ということだ。

日本の問題は、
爆発せず、日常を壊さず、徐々に進行する。

他国では、暴動や治安悪化、急激なインフレといった形で問題が表面化する。
日本では、購買力の低下、機会の縮小、国際的な存在感の後退として、静かに進む。

問題の数が多いのではない。
問題が問題として認識されにくい構造を持っている。
それが、日本の最大の特殊性だ。

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まとめ

「快適」と「危機感」の分断は、どの国にも存在する普遍的な現象である。
ただし日本は、
• 生活の快適さが非常に高く
• 制度が長期間機能し続け
• 急激な破綻が起きにくい

という条件が重なり、
危機が最後まで体感として立ち上がらない国になっている。

その結果、
危機感を持つ人は「考えすぎ」に見え、
現状に満足する人は「現実的」に見える。

日本が特別にダメなのではない。
ただ、静かに変わり続ける国であり、
それを「見るか、見ないか」で、同じ日本の景色がまったく違って見えているだけだ。

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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