総論:世界的投資家が日本に向ける厳しい視線
著名投資家である ジム・ロジャース は、近年一貫して日本経済に対し厳しい見方を示している。その論調はしばしば悲観的、あるいは挑発的と受け取られるが、注意深く読み解くと、彼の主張は短期的な相場観ではなく「国家の持続可能性」という極めて長期的な視点に立脚していることがわかる。
ロジャースは、日本を嫌っているわけでも、日本の企業競争力を全面否定しているわけでもない。むしろ彼の問題意識は、人口構造・財政運営・通貨政策という土台部分が、長期的に見て整合していない点に集中している。
本稿では、近年の発言や論評を整理しながら、ロジャースの対日観の本質を5つの観点から整理する。
- 「通貨を安くして繁栄した国はない」という通貨観
- 人口減少という「すべての前提条件」の崩壊
- 財政赤字と国債依存への根源的な不信
- 金融緩和と株高を「成功」と誤認する危うさ
- 世界の中で相対的に低下する日本の位置づけ
「通貨を安くして繁栄した国はない」という通貨観

ロジャースの対日発言で最も象徴的なのが、「自国通貨を安くする政策に未来はない」という主張である。これは円安そのものを否定しているというより、円安を成長戦略の代替として使い続けている点への警告だ。
短期的には円安は輸出企業の収益を押し上げ、株価上昇という形で“成功”しているように見える。しかしロジャースは、それが国民全体の実質購買力を削り、エネルギー・食料といった基礎的コストを上昇させることを重視する。
彼の視点では、通貨安による競争力は「技術・生産性による競争力」とは質が異なり、持続性がない。
さらに重要なのは、通貨安が常態化すると、
・資本の海外流出
・優秀な人材の国外移動
・国内消費の弱体化
といった二次的影響が連鎖的に生じる点だ。
ロジャースは、日本がこの悪循環に慣れてしまっていることを最も危惧している。
人口減少という「すべての前提条件」の崩壊

ロジャースが日本について語る際、必ずと言っていいほど言及するのが人口減少と高齢化である。彼はこれを「意見」ではなく「算数の問題」だと表現する。
出生数が減り、死亡数が増えれば、
・労働力は縮小する
・税収基盤は細る
・社会保障負担は増える
これは経済理論以前の話であり、金融政策や財政政策で帳尻を合わせ続けることには限界がある。
ロジャースは、日本がこの問題に対して本質的な対策を先送りし続けてきた点を強く批判している。
特に彼が問題視するのは、「人口が減っても何とかなる」という空気感だ。生産性向上やAI活用といった議論自体を否定しているわけではないが、それらが人口減少の速度と規模を完全に相殺できると考えるのは楽観的すぎる、という立場を取る。
財政赤字と国債依存への根源的な不信

日本の政府債務残高はGDP比で見て世界でも突出している。ロジャースはこの点について、「今は問題が顕在化していないだけだ」と冷静に述べる。
彼の懸念は、
・国債を国内で消化できなくなったとき
・金利が本格的に上昇せざるを得なくなったとき
・通貨価値への信認が揺らいだとき
これらが同時に起きた場合、日本には選択肢がほとんど残されていないという点だ。
財政拡張と金融緩和を長年続けた結果、政策の“出口”が極めて狭くなっている、というのがロジャースの基本認識である。
重要なのは、彼が「明日破綻する」と言っているわけではない点だ。
彼が指摘しているのは、時間を味方につける政策設計ができていないという構造的問題である。
金融緩和と株高を「成功」と誤認する危うさ

ロジャースは、日本の株価上昇や名目GDPの回復を「否定」してはいない。ただし、それを政策の成功と断定することに強い違和感を示している。
株価は金融条件に大きく左右される。超低金利と大量の流動性供給があれば、資産価格は上がる。しかしそれは、
・賃金の持続的上昇
・消費の自律的拡大
・人口構造の改善
と必ずしも一致しない。
ロジャースは、日本が「株高=経済回復」という単純な図式に依存しすぎている点を警戒している。
特に日銀が国債やETFを大量に保有してきた事実について、彼は「市場機能が歪められている」と暗に示唆してきた。これは日本特有の問題というより、金融政策に過度な役割を期待しすぎた結果だと位置づけている。
世界の中で相対的に低下する日本の位置づけ

ロジャースの日本論は、常に世界比較の中で語られる。
中国、インド、東南アジアといった地域が人口増加と経済成長を背景に存在感を高める中、日本は成熟国家として安定している一方、成長の物語を失っている。
彼は、日本が技術力や文化的魅力を持つ国であること自体は評価している。しかし、それらが国家全体の成長戦略として十分に統合されていない点を問題視する。
世界経済がダイナミックに変化する中で、日本は「現状維持」を選び続け、そのコストが徐々に表面化している、というのがロジャースの認識だ。
このままではダメだと皆んな分かっているのだから根本的にルールを変えるしかないと思います。
今だけやり過ごすだけでは、現状維持ではなく衰退でしかありません。
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まとめ:ロジャースの日本論は「警告」であって予言ではない
ジム・ロジャースの対日論は、決して「日本は終わりだ」という単純な悲観論ではない。
彼の主張を整理すると、
• 通貨安・金融緩和に依存し続ける危うさ
• 人口減少という前提条件の軽視
• 財政赤字の長期的持続性への疑問
• 株高と実体経済を混同する思考停止
• 世界の成長軸から相対的に外れていくリスク
これらへの構造的な警告である。
むしろ彼の論評は、日本が「まだ修正可能な段階」にあるからこそ発せられているとも言える。
ロジャースの言葉をどう評価するかは別として、少なくともそれは感情論ではなく、長期投資家の視点から見た冷徹な現状認識である。
もし日本がこの警告を無視し続けるなら、問題は静かに、しかし確実に積み上がっていくだろう。
逆に言えば、どこに手を入れるべきかは、彼の発言の中にかなり明確に示されているとも言える。
著者プロフィール

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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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