こんにちは。K2 Collegeの半野です。
今回、オープンハウス社で扱っているアメリカ不動産を検証したいと思います。これが果たして投資として本当にうまくいくのかどうか?興味深いところです。アメリカ不動産と言えば、まだ記憶に新しい「サブプライム住宅ローン危機」を覚えている方もいるのではないでしょうか。その後の金融危機の要因の1つにもなりました。そのアメリカの不動産ですが、価格が上昇し続けるというのがアメリカでの一般的な考え方です。有名な『金持ち父さん貧乏父さん』も不動産投資の話ですね。
- 不動産購入のロケーション選び
- 不動産ローンを組んだ場合どうなるのか
- アメリカ不動産投資のリターンを検証
- 不動産価格には裏がある
- 減価償却による節税は可能!?
動画解説
不動産購入のロケーション選び
アメリカと一言で言っても国土の広さが日本の約25倍もあります。まして東にある大都市ニューヨークと西のロスアンゼルスでは時差が3時間もあるような広大な国土です。行ったことのある人であればわかると思いますが、アメリカの田舎となれば日本の比ではありません。本当に何もない状態ですw。当然不動産価格もエリアによって大きく異なってきます。そのため不動産購入に際しては、どこのエリアの不動産を購入するのかがポイントです。この会社では以下をポイントとしています。
・人口が増えている
・優れた教育機関がある
・交通の利便性がよい
・居住者の世帯年収が高い
・不動産価格と世帯年収の乖離が小さい
優れた教育機関が近隣にある→学費が高い→世帯所得の高い家庭の子供が通学ということでしょうか。また交通の利便性は、空港までのアクセスやフリーウェイなどのインフラがどうなっているのかが重要なポイントになるようです。そして最後の不動産価格と世帯年収の乖離、日本でマンションを購入する際に、年収の5倍までなんて話が出てきますが、ここでは不動産価格が世帯年収の3〜4倍に入るエリアを選んでいます。この基準をもとにこの会社が扱っているのがこちらのエリアとなっています。
・カリフォルニア州 ロサンゼルス
・ハワイ
・テキサス州 ダラス
・ジョージア州 アトランタ
そしてそれぞれのエリア毎に不動産の種類と価格、そしてインカムの実質リターンを示した表がこちらです。不動産の形態が異なるとはいえ、ロサンゼルスの価格の高さが目立ちますね。
不動産ローンを組んだ場合どうなるのか
アメリカ不動産購入に際し、ローンを組んだ場合どのようになるのでしょうか。日本国内の銀行ではアメリカ不動産購入のための融資は実行されないため、この会社の系列会社が融資をしています。そしてサイト上でシミュレーションができるようになっており、その点は親切な作りとなっております。
その条件がこちら。法人でも個人でも可能になります。
ローンですが、不動産価格の70%、50%が融資対象となります。70%の対象となるのはテキサス(ダラス)かジョージア(アトランタ)の不動産、カリフォルニアの場合は50%までの融資となっています。不動産価格36万ドル(約4,860万円)融資割合70%、期間10年、利率が3.8%とした場合の計算をしてみましょう。ですので、テキサス州かジョージア州の不動産ということになります。
ローンにも2種類の支払い方法があるようです。こちらは月々の返済額により変動し、最初のパターンは年1回、元金分の支払いが発生するパターンです。最後に元金残り分の2430万円を支払う必要があり、合計支払金額が約4500万円となります。不動産価格の30%分(1,458万円)は頭金として最初に支払う必要がありますから、ローンとあわせての支払合計金額は以下のようになりますね。
30%頭金 4,860万円x30%=1,458万円
ローン支払い合計金額 4,496万円
支払い合計 5,954万円
他の送金手数料分など諸々含めて、10年で約1,100万円がローン分として上乗せになります。
ローンがある分、どうしても持ち出しが多くなるのは分かりますが、こうやって計算すると本当に利益が出るのかどうか不安です。
次の項目でも、もっと数字的なところを詳しく検証しますね。
アメリカ不動産投資の利回りを検証
不動産投資の場合、通常インカムゲイン、キャピタルゲインを主として考えますがアメリカ不動産投資の場合、これらに加えてドルという通貨で資産を持つことによる資産のリスクヘッジ、分散投資が含まれてきます。
・インカムゲイン
最初に提示したとおり、実質的な利回りは2‐4%程度と非常に小さい数字。もちろんエリアにもよりますが、この程度の利回りでは先程のローンを組んだ場合、金利でインカムゲインは実質ゼロかマイナスになります。ローンの支払いに実質的に回ると考えるのが良いでしょう。ですのでこの会社が伝えているようなインカムゲインは期待できないと考えてよさそうです。
・通貨分散による資産のリスクヘッジ
こちらは当てはまると考えても良さそうですね。やはり円だけで資産を持つことは、今後の日本の将来を考えてもリスクがあります。今後為替がどうなるかはわかりませんが、資産のリスクヘッジをしておくことは必要です。
・キャピタルゲイン
アメリカの不動産の特徴は、メンテナンスさえきちんとしていれば、中古物件でも価格が大きく下落しないこと。逆に高くなることもあるため、日本より中古物件の売買が盛んです。そのため日本よりも不動産の流動性が高いと言えるでしょう。こちらのグラフを見てみましょう。過去10年の全米不動産価格インデックスとなります。
2000年1月を100として表示されています。2012年12月で143、2022年12月で294となっています。全米平均で見ると不動産価格は2倍以上になっていることが分かります。しかしこの不動産価格、ニューヨークやロスアンゼルス、サンフランシスコなどの大都市圏、ハワイなどのリゾート地の価格がかなり後押しをしていると考えられます。今回対象となるテキサス州のダラスやジョージア州アトランタは、それなりの大都市とはいえ、ここまで上昇するとは考えにくいです。
上記のテキサスエリアの不動産取引実績を見るとこのようになります。
2012年 USD300,500
2021年 USD405,000 約34.7%の上昇
ただし2020年から2021年の上昇が異常値と言えるほど上昇しているのが気になるところ。というより間違いではないかと疑ってしまうのです。仮に上記通りで転売が出来たとすると9年後の売却益は12.6万ドルで35%のリターンが出ることになります。ただ細かく見ると、2020年までの8年間では上昇率は14%にとどまっています。つまり2021年だけ異常であったということです。この場合購入時36万ドルの物件が、8年後転売時 41万ドルとなります。売却益は約5万ドルしか出ません。これだとローンを組んでいる場合マイナスです。しかもこれは不動産保有中に何も起こらないという前提です。不動産ですから年月の経過とともに、修繕や補修費用もかかってきますし、さらにそれ以外の費用も発生するケースも出てくるでしょう。また家賃が10年間保証されるということもありえません。
不動産価格には裏がある
不動産価格の上昇だけ見れば、何とか売却益が出そうな感じがしますね。しかしここで注意すべきことがあります。それは購入価格が本当に適切な価格なのかどうかということです。アメリカの不動産価格を評価する英語サイトRedfinとオープンハウス社の提示価格を比較してみました。
ジョージア州不動産 一軒家 3ベッドルーム 2バスルーム
評価サイト価格: USD264,000
オープンハウス社価格 :USD375,000
差額:USD 111,000
11万ドル以上、日本円で1,480万円、何と41.8%も上乗せした金額で販売されているのです。広さや築年数、そして場所も全く同じなので間違いありません。先程の計算で9年でも35%のリターンですから、これでは計算上売却益が出ません。つまり最初から40%以上も高い価格で購入してしまっているので、9年後・10年後に転売をしても、利益が出ないことになります。いやそれどころか、マイナスになってしまう可能性が大きいのです。
こんなに上乗せされたら、10年経過してもリターン出ませんね。
そうですね。上乗せをするなとは言いませんが、いくら何でも購入価格が高すぎます。これだと投資をしてもマイナスになってしまう可能性が大きいです。
減価償却による節税は可能!?
販売価格が高すぎるいうことが確認できました。さらにセールストークで出てくる『節税のための減価償却』果たしてこのスキームを使ったメリットが活かせるのかを検証します。
海外不動産は国内とは償却方法が異なる
海外不動産には独自の減価償却の規定があります。償却対象は建物部分で、大まかに下記のような年数で償却が可能です。
【耐用年数】
鉄筋コンクリート(RC)47年
木造 22年
【耐用年数を超えた場合の加速度償却】
鉄筋 9年
木造 4年
今回対象としている不動産は、22年以上経過した木造住宅です。そのため、償却年数は4年となります。次のポイントは、法人名義で購入するのか、個人名義で購入するのかというところ。ここはかなり重要です。法人名義で購入の場合、以下の計算となります。
販売価格USD375,000を1ドル135円で計算したものです。年間約1,099万円が減価償却費として計上できます。家賃収入が入る場合を想定すると、課税所得分として年間917万円を減少させることが可能と計算されています。
一方、個人名義で購入の場合の計算は上の通り。あれ?少し変です。木造建築物の場合、耐用年数を超えたものは償却期間は4年のはずです。それがなぜ10年なのか?さらに問題点がもう1つ、日本の税制が2年前に一部改正され、個人名義で購入した海外不動産は減価償却が出来ないことになっています。そのためかよく見ると、コストセグリゲーションという償却での計上方法を使っています。この点をオープンハウス社に確認すると以下のような回答でした。
『大手ファームや多くの税理士の方への確認と、確定申告の実績を積み重ねて。昨年末より個人の新しい節税スキームをご案内しています。資料に関しては税理士の方に作成いただいたのでお送りすることが出来ません。金額のイメージでお伝えさせて頂きますと、5,000万円の物件を取得すると約3年間の加速度償却で単年700-900万円程の減価償却費を計上することができるケースがあります』
直接話をしないとしないと確認できないようです。また計算でコストセグリゲーションでの償却での計算をしていますが、これにも穴があります。この償却方法の場合でメリットを得られるのは以下の不動産というのが一般的です。
・築年数が浅い不動産:家具家電、設備などの動産の価値が残っている築浅の不動産。
一例として空調やボイラーの使用年数が短いものが償却対象
・1棟収益不動産:共用部分
戸建てですから共用部分はあてはまりません。もしかして新調したTVや冷蔵庫などを償却対象としてしているということでしょうか?あるいは建物そのものをかなり改装しているということでしょうか?それで年間700-900万円の減価償却費を計上できる??この償却金額は、新築ならまだしも中古では大きすぎる金額と感じます。売り手側の都合で出された数字にしか感じられず、提示された計算方法での償却金額はかなり不透明といわざるを得ません。つまり、法人名義で購入なら節税効果が見込めるが、個人名義で購入の場合は節税できるのかどうかも不明、そういう結論になります。
個人で購入すると節税も出来ないんですか?
法律上はそうなっています。特別なスキームがあるような回答がきていますが、償却できる金額が大きすぎる気がします。そのまま鵜呑みにはできないですね。
まとめ
- アメリカの不動産投資はインカムゲインはあまり期待しないほうが良い
- キャピタルゲイン狙いでも、最初に評価額、購入価格をきちんと検証すること
- 全部を業者任せにすると、投資が大きなマイナスになる可能性がある
- 法人名義で購入する場合、節税効果は期待できるかもしれない
- 個人名義で購入する場合、節税も期待できないので、メリットがほとんど見当たらず、おススメできない。
- 現地視察を含めて、自分で情報を確認すること
今回のアメリカ不動産投資には十分注意しよう
今回はアメリカの不動産投資を検証してみました。不動産価格は中古でも上昇するのがアメリカの特徴です。しかしこのような価格のからくりがあることが分かりました。投資家にとってはデメリットにしか感じられません。そうならないためにも、海外の不動産といえど情報はできるだけ自分できちんと確認するようにすることです。特に今回のように価格が評価額と大きく異なっているというのは、投資する側からすれば納得の行くものではありません。不動産は大きな買い物です。単なるセールストークだけで投資したり、購入するのはやめて、ご自身でも情報を収集することが何よりも大切なことなのです。
お金を増やす方法は様々です。ご自身のニーズに合った方法を選択して効率的に資産を増やして行きましょう。ご相談は、こちら(無料相談)から連絡ください。
著者プロフィール
-
大学卒業後、予備校講師などを経験し、海外渡航。
その後外資系企業に勤務し、2005年より再度海外留学を実行。
帰国後、それまでのキャリアよりも、金融や投資に関わる仕事をしたいと考え、海外就職をしました。
海外投資というと、ハードルが高いと感じてしまうかもしれませんが、決してそんなことはなく新しい投資、資産運用という形で出会うことができます。
皆様のお金の増やし方のバリュエーションもより深くなってくるはずです。
そんな新しい出会いの場をお客様に提供し、様々な情報を発信させていただき、皆様の資産を増やしていくサポーターとして、貢献できればと考えております。
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