DeepSeek(ディープシーク)が米国市場に与える影響

中国の新興企業DeepSeek(ディープシーク)が開発した低コストのAIモデルの出現によって、米国ハイテク株の割高なバリュエーションを正当化するのが難しくなるとの懸念が広がり、1月27日の米国株式市場では、S&P500指数とナスダック総合指数が下落しました。

今回は、DeepSeekの概要、AI分野における米国の優位性がどのように変化するか、そして米国株式市場への影響について解説します。

  • DeepSeek(ディープシーク)とは
  • AI分野における米国の優位性はどうなる
  • 米国株式市場への影響

動画解説

DeepSeek(ディープシーク)とは

DeepSeekは、中国発の先進的な人工知能(AI)技術を駆使した企業であり、機械学習、自然言語処理、コンピュータービジョンなどの分野で革新的なソリューションを提供しています。

同社は、大規模なデータセットを活用して高度なAIモデルを開発し、金融、医療、製造業など多岐にわたる業界で応用されています。

DeepSeekの特徴は、その技術力だけでなく、中国政府の強力な支援を受けて急速に成長している点です。中国は「AI大国」を目指す国家戦略を掲げており、DeepSeekはその中核を担う企業として注目されています。

DeepSeekの技術的な強みは、独自のディープラーニングアルゴリズムと、中国国内の膨大なデータを活用できる点にあります。

特に、中国の巨大な人口とデジタル化の進展により、他の国では得難い質と量のデータを保有しています。これにより、DeepSeekはAIモデルの精度を飛躍的に向上させ、国際競争力を持つに至りました。また、同社はクラウドコンピューティングやエッジコンピューティングにも注力しており、AI技術をリアルタイムで活用するためのインフラ整備も進めています。

そして、DeepSeekの急速な成長は米国のハイテク企業にとって脅威となっています。

特に、GoogleやMicrosoftといった米国のハイテク企業は、AI分野で世界的なリーダーシップを維持してきましたが、DeepSeekの台頭によりその地位が揺らぐ可能性があります。

さらに、米中貿易摩擦や技術覇権争いの影響もあり、DeepSeekの国際展開は政治的な課題も抱えています。今後の動向次第では、DeepSeekが米国企業にとっての大きな競争相手となることは間違いありません。

GoogleやMicrosoftといった米国のハイテク企業は、エヌビディアの高性能な半導体を利用している一方で、DeepSeekはそれよりも性能が劣っている半導体を使用していると聞きます。

それなのに、どうしてDeepSeekのAIモデルが米国のハイテク企業の優位性を崩すとの懸念が広がっているのですか?

AIモデルの性能は、半導体の性能だけでなく、学習に使用するデータの量と質に大きく依存します。中国は世界最大の人口を抱え、デジタル化が急速に進んでいるため、DeepSeekは膨大なデータを保有しています。

また、高性能な半導体を使用しないことで、コストを抑えつつ、大規模なAIモデルを展開することが可能です。

AI分野における米国の優位性はどうなる

米国はこれまで、AI分野において世界的なリーダーシップを発揮してきました。Google、Microsoft、Amazon、Facebook(現Meta)といったハイテク企業がAI研究を牽引し、世界中の優秀な人材を集めてきました。

また、米国政府もAI技術の開発を国家戦略の一環として位置付け、研究開発への投資を積極的に行ってきました。

しかし、DeepSeekをはじめとする中国企業の急速な台頭により、米国の優位性が脅かされる可能性が出てきています。27日のニューヨーク市場ではハイテク株が大幅安となり、AI銘柄代表格のエヌビディアは17%安となりました。

まず、中国のAI技術の発展スピードは驚異的です。中国政府は「中国製造2025」や「次世代AI発展計画」などの国家戦略を通じて、AI分野への投資を強化しています。DeepSeekのような企業は、こうした政策の恩恵を受け、技術開発や市場拡大を加速させています。

また、中国国内の膨大なデータを活用できる点も、米国企業にはない強みです。これにより、中国企業はAIモデルの精度や応用範囲において、米国企業を凌駕する可能性があります。

さらに、米国企業が直面する課題として、規制や倫理的問題が挙げられます。

米国では、AI技術の利用に関する規制が厳しく、プライバシー保護やデータセキュリティに関する懸念が高まっています。これに対し、中国では政府の支援のもと、比較的自由にAI技術を開発・応用できる環境が整っています。この差が、米国企業の競争力を削ぐ要因となる可能性があります。

このまま米国は優位性を失ってしまうのでしょうか。

米国が完全に優位性を失うわけではありません。米国には依然として世界最高水準の研究機関や大学があり、優秀な人材を輩出し続けています。

また、米国企業はグローバル市場でのブランド力や顧客基盤が強固であり、国際競争力を維持するためのリソースも豊富です。

今後、米国はどのようにしてAI分野でのイノベーションを続けられるかが鍵ですね。

米国株式市場への影響

DeepSeekの台頭は、米国株式市場に大きな影響を与えています。特に、ハイテク株を中心に、S&P500指数やナスダック総合指数の動向が注目されています。

米国のハイテク企業は、AI分野での競争力低下や中国市場でのシェア縮小を懸念され、投資家の信頼が揺らいでいる状況です。

まず、S&P500指数は、米国を代表する大企業の業績を反映する指標であり、ハイテク企業の比重が高いことから、AI分野の動向に大きく影響されます。

DeepSeekのような中国企業がAI技術で先行することで、米国企業の将来の収益性に疑問が投げかけられています。また、米中貿易摩擦や技術覇権争いの影響もあり、米国企業の国際競争力が低下しているとの見方が広がっています。これにより、投資家がリスク回避姿勢を強め、株価が下落する要因となっています。

ナスダック総合指数も同様に、ハイテク株の下落が顕著です。特に、AI関連企業の株価が低迷しており、投資家のリスク回避姿勢が強まっています。DeepSeekの成長が米国企業の市場シェアを奪う可能性があるため、将来の業績見通しが不透明となっています。

さらに、米国政府による中国企業への規制強化も、市場の不安材料となっています。例えば、米国は中国企業に対する技術輸出規制を強化しており、これが米国企業のビジネスにも影響を及ぼす可能性があります。

しかし、米国株式市場の下落は一時的なものであるとの見方もあります。

米国企業は依然として技術力やブランド力が高く、AI分野でのイノベーションを続けるためのリソースも豊富です。また、米国政府がAI技術の開発支援を強化することで、競争力を回復する可能性もあります。

米国ハイテク企業に投資しておりますが、ポジションは落とした方が良いですか?

現在は割高なバリュエーションとなっておりますので、ポジションを落とすのも一つの選択肢だと思います。

しかしながら、今後の政策や技術革新によって大きく変わる可能性があるため、短期的な下落に惑わされず、長期的な視点で注視していきましょう。

まとめ

  • DeepSeekの先進的なAIモデルは低コスト
  • 米国におけるAIの優位性に疑問
  • DeepSeekは米国ハイテク企業にとって脅威だが、強みを活かせば競争力を維持できる

資産運用相談を希望される方は、こちらからご連絡ください。

著者プロフィール

大崎真嗣
大崎真嗣
投資アドバイザー

愛知大学経済学部卒業
大手旅行会社で10年間、その後、企業の人材育成を支援する会社で約6年間、法人営業として経験を積む。
直近約5年半はキャリアコンサルタントとして、転職希望者の相談や企業の採用に一役を担う。

その傍らで、自らの投資経験を踏まえたファイナンシャルアドバイスを開始。
ファイナンシャルプランナー2級も取得。

自分でしっかり考える投資家をサポートするという経営方針に共感し、自らもかねてから顧客であったK2 Collegeに参画。

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