国際社会の平和と安全、開発、人権、環境などさまざまな分野で活動する「国連(国際連合)」は、地球規模の課題に取り組む中核的な国際機関であり、国連職員はその実務を担うプロフェッショナル集団である。特に近年では、気候変動、紛争、パンデミック、ジェンダー平等など多様な課題への対応が求められ、国連の役割はますます重要となっている。
その中で、国連で働くというキャリアは、国際的な視野と専門性を活かしたいと考える多くの人々にとって、憧れであり目標となる。しかしながら、国連職員の採用制度は特殊で、応募要件やキャリア形成、待遇面について正確な理解が求められる。
国連職員にはどのような職種があるのでしょうか?
国連職員の主な職種や求められるスキル、報酬体系、キャリアパス、勤務地・働き方といった主要な側面を整理して、国連職員という職業の実像を明らかにします。
- 国連職員の主な職種カテゴリ
- 採用要件と求められるスキル
- 年収・手当・福利厚生の実態
- キャリアパスと昇進制度
- 勤務地・働き方とその実情
国連職員の主な職種カテゴリ

国連職員には大きく分けて以下のようなカテゴリが存在する。
(1)Professional and Higher Categories(専門職)
これはP-1~P-5、D-1、D-2などに分類され、国際公募されるポストである。開発、平和構築、環境、経済、広報、法律、人道支援など、多岐にわたる専門分野が対象で、国際的な人材が競う。
(2)General Service and Related Categories(一般職)
主に各国の国連事務所や現地事務所で採用されるローカルスタッフで、管理、事務、庶務、ITサポートなどを担当する。
(3)Field Service(フィールド職)
現地での平和維持活動や人道支援、緊急対応を支える職種であり、危険地域への派遣も含まれる。
(4)National Professional Officers(国内専門職)
各国の国連機関に所属し、専門知識を提供するローカルスタッフ。一般職より専門性が求められる。
(5)Interns / Volunteers(インターン・ボランティア)
国連インターンや国連ボランティア(UNV)としてキャリアをスタートする人も多く、若者の登竜門的な役割を果たしている。
採用要件と求められるスキル

国連職員として採用されるためには、厳格な要件を満たす必要がある。
■ 基本的な応募資格
• 学歴:通常は修士号(分野によっては学士可)が必要
• 職務経験:P-2で2年、P-3で5年以上、P-4で7年以上が目安
• 語学力:英語またはフランス語の高度な運用能力(書く・話す)
• 国籍:加盟国の国籍を持つ者(重複国籍も可)
■ 求められるスキル
• 専門分野の知識(開発学、国際関係、法律、経済、保健など)
• チームマネジメント力、リーダーシップ
• 多文化環境での適応力・コミュニケーション能力
• 統計・リサーチ・レポート作成能力
• ITリテラシー(Excel、データ分析ツールなど)
■ 応募ルート
• 通常の公募(Inspiraなど)
• JPO制度(日本政府が若手職員を支援)
• UNVやインターンからの転換
国連で働くためには、知識・経験・語学・人格を総合的に備える必要があり、「能力と実績の勝負」の世界といえる。
年収・手当・福利厚生の実態

国連職員の給与は「統一された国際給与制度」に基づいており、基本給に加えてさまざまな手当が支給される。
■ 年収の目安(Pカテゴリ)
• P-2:年収6万~9万ドル(約900万~1,300万円)
• P-4:年収10万~13万ドル(約1,500万~2,000万円)
• D-1/D-2:年収14万ドル超(2,100万~2,500万円以上)
※勤務地(ニューヨーク、ジュネーブ、バンコクなど)によって「ポスト調整手当」が加算
■ 主な手当
• 住宅手当(勤務地の物価に応じて支給)
• 教育手当(子女の学費補助)
• 帰国手当、危険地域勤務手当
• 年金積立(UNJSPF)、医療保険(全額・大半負担)
■ 福利厚生
• 年間30日以上の有給休暇
• 育児・出産休暇制度
• ワークライフバランスの重視
総じて、給与水準は非常に高く、世界でもトップレベルの待遇である。
キャリアパスと昇進制度

国連職員のキャリア形成は、民間企業とは異なる点が多い。
■ グレード制度による昇進
P-2 → P-3 → P-4 → P-5 → D-1 → D-2と階段的に昇進が可能。昇進には勤務年数だけでなく、実績・評価・公募への再応募が必要。
■ ローテーション制
複数の国連機関・勤務地を異動することで経験を積む文化があり、昇進の際には「国連内での多様な経験」が重視される。
■ 専門領域の深化 vs マネジメント志向
技術職・分析職など専門職として深化していくルートもあれば、マネジメント職として組織を束ねるルートもある。
■ 契約形態
ほとんどのポストは有期契約(Fixed-term)であり、数年ごとに再応募が求められる。終身雇用ではないため、常に実力が求められる。
このように、実績主義かつ国際競争の中で昇進していくため、成長意欲と柔軟性が不可欠である。
勤務地・働き方とその実情

国連の活動範囲は世界中に及ぶため、勤務地も多岐にわたる。
■ 主な勤務地
• 本部:ニューヨーク、ジュネーブ、ウィーン、ナイロビ
• 地域事務所:バンコク、アディスアベバ、サンティアゴなど
• 現地オフィス:紛争地域、発展途上国(イエメン、ハイチ、スーダンなど)
勤務地によっては、安全面や生活水準に大きな差があり、特にフィールドミッションでは厳しい環境が求められる。
■ 働き方
• リモート勤務制度も導入が進むが、基本はオフィス勤務
• チームは多国籍構成で、英語や仏語での会議・文書作成が日常
• 1日の業務時間は7.5時間程度。残業は職種により差がある
■ 家族の帯同
家族を伴う赴任が可能な場合もあるが、安全上制限される地域もある。教育手当や医療体制などは比較的充実している。
国連で働きたいと考える人は、どういう考えを持っているのでしょうか?
国際貢献への意欲、グローバルキャリア志向、専門性を活かしたいなど様々でしょうが、世界を舞台に活躍したいという志が根底にあるのだと思います。
まとめ
- 国連職員は、世界中の課題に向き合う国際的なプロフェッショナルとして、多様な分野で活躍している
- その職務には、専門性、語学力、適応力、そして高い倫理観が求められ、誰もが簡単になれる職ではない
- 報酬や福利厚生は非常に充実しており、グローバルキャリアとしての魅力は極めて大きい
- 若手にとってはJPO制度やインターン、UNVなどを通じたステップアップが可能であり、人生を懸ける価値のあるキャリアパスと言える
- 「世界を良くしたい」という情熱を持ち、現場で汗をかく覚悟と粘り強さを備えた人こそが、国連職員として真に求められている人材である
著者プロフィール

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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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