トランプ関税は失敗だったのか――「増税」「パフォーマンス」「地政学」を分解して見える本当の狙い

ドナルド・トランプ政権下で実施された一連の関税強化政策は、表面的には「米国企業を守る」「不公正貿易から労働者を救う」という極めて分かりやすいスローガンを掲げていた。しかし実際には、関税の法的支払者は米国の輸入企業であり、価格転嫁を通じて最終的な負担は米国企業や消費者に帰着した。
このため、関税は「外国に払わせた」という政治的言説とは裏腹に、実質的には米国内への増税として機能したとの評価が定着している。

一方で、近年示されている貿易データを見ると、対中輸出の減少を、インド・ブラジルを中心とするグローバル・サウス向け輸出が補っているという事実も明確になってきた。しかも増加している品目は、原油や穀物といった戦略物資である。
つまりトランプ関税は、単なる「思いつきの保護主義」でも、「経済音痴の失策」でもなく、米国の貿易構造と地政学的立ち位置を強制的に組み替える装置としての側面を持っていた。

本稿では、関税の経済的実態、政治的パフォーマンス、そして地政学的帰結を分解し、トランプ関税の「正解/不正解」を多層的に整理する。

  • 関税の正体――「誰が払うか」と「誰が負担するか」は別物
  • 「米国企業を守る」は本当だったのか――経済政策としての評価
  • 実質増税としての関税――トランプは分かってやっていたのか
  • 新データが示す修正点――対中縮小とグローバル・サウスへの転換
  • トランプ関税の本質――経済合理性より覇権構造

関税の正体――「誰が払うか」と「誰が負担するか」は別物

3分で読める】いまさら聞けない関税とは?|コラム|野村の金融経済教育サイト「Fin Wing」

関税を巡る最大の誤解は、「外国が払っている」という言説にある。関税は制度上、輸入時に米国の輸入者が税関に支払う税金であり、外国政府や外国企業が直接納税する仕組みではない。
したがって、関税が引き上げられた瞬間に、まずコストを被るのは米国企業である。

その後、このコストは三つの経路で配分される。
第一に、企業が利益を削って吸収するケース。
第二に、販売価格に転嫁され、消費者が負担するケース。
第三に、交渉を通じて輸出企業側に一部押し戻すケースである。

トランプ関税に関する実証研究では、この第三の効果は限定的であり、関税負担の大部分が米国内で吸収されたことが示されている。結果として関税は、所得税や法人税を引き上げることなく、**生活コストと企業コストを押し上げる「見えにくい増税」**として機能した。

「米国企業を守る」は本当だったのか――経済政策としての評価

トランプ関税、「ペンギン島」も標的 ミーム拡散 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News

経済政策として関税を評価すると、その効果は厳しい。
米国企業の多くは、すでにグローバルに最適化されたサプライチェーンの中で競争しており、中国は単なる「輸出相手国」ではなく、「生産・中間財・消費市場を兼ねる巨大拠点」であった。

関税によって中国向け輸出が減少し、同時に中国製中間財の調達コストが上昇した結果、
・製造業の利益率低下
・設備投資の抑制
・最終価格の上昇
が連鎖的に起きた。

この意味で、関税は「米国企業を守る政策」ではなく、むしろ米国企業に構造調整を強制する政策であったと言える。短期的な企業価値や株主利益の観点から見れば、正解とは言い難い。

実質増税としての関税――トランプは分かってやっていたのか

トランプ関税第1弾 インフレ上振れ、世帯13万円負担増も - 日本経済新聞

それでは、トランプはこの帰結を理解していなかったのか。
結論から言えば、その可能性は低い。

関税が誰に課され、どのように価格転嫁されるかは、経済学の初歩であり、大統領補佐官や通商代表部が把握していないとは考えにくい。それでもトランプは一貫して「中国が払っている」「外国が損をしている」と発言し続けた。

これは無知ではなく、政治的に最もコストの低い増税手法を選んだ結果と解釈する方が自然である。
関税は議会承認を必要とせず、大統領権限で発動できる。しかも税額が明細として国民に見えにくく、「外国に払わせている」という物語を作りやすい。

つまり関税は、財政収入を確保しつつ、有権者の反発を最小化できる、極めて政治的な税制手段だった。

新データが示す修正点――対中縮小とグローバル・サウスへの転換

しかし、近年の貿易データは、単なる「増税政策」という理解に修正を迫る。
米国から中国向けの輸出量が明確に減少する一方で、インド、ブラジルを中心とするグローバル・サウス向け輸出が増加している。

注目すべきは、その中身である。増えているのは、半導体や精密機械といった高度製品ではなく、
・原油
・穀物
という、エネルギーと食料だ。

これらは価格弾力性が低く、政治・安全保障と直結する戦略物資である。需要は安定しており、関税や価格上昇があっても「誰かが必ず買う」。
つまり米国は、中国向けの効率的な輸出を犠牲にする代わりに、グローバル・サウスを結びつける資源供給国としての地位を強めている。

トランプ関税の本質――経済合理性より覇権構造

まとめればまとめるほどポイントが貯まる「経済圏」。活用するメリットと効率良くポイントを貯めるコツ - ITをもっと身近に。ソフトバンクニュース

ここまでを総合すると、トランプ関税の本質は次のように整理できる。
第一に、短期的な経済合理性や企業利益を優先した政策ではない。
第二に、実質的には米国内への増税として機能した。
第三に、それと同時に、中国依存を削り、サプライチェーンと貿易構造を強制的に再配線する役割を果たした。

これは「米国企業を守る」政策ではなく、「米国主導の経済圏を作り直す」ためのショック療法である。
企業や消費者にとっては負担だが、国家戦略として見れば、一定の一貫性を持っている。

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まとめ

トランプ関税は、単純に成功か失敗かで評価できる政策ではない。
経済政策として見れば、コスト増・インフレ・企業競争力低下を招いた点で、失敗に近い。
一方で、政治戦略・地政学戦略として見れば、
・実質増税による財源確保
・対中依存の低下
・グローバル・サウスとの結びつき強化
という成果を上げた。

つまりこの関税政策は、
「経済合理性を犠牲にして、覇権構造を書き換えるための政策」
だったと言える。

トランプが守ろうとしたのは、個々の米国企業ではなく、「強いアメリカ」という物語と、その物語が成立する世界秩序だった。
この視点に立つと、関税は単なる増税でも、単なる保護主義でもなく、意図された歪みとして理解することができる。

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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