こんにちは、K2 College河合です。
ロシアがウクライナに侵攻して、世界中から経済制裁が始まりました。国際決済SWIFTからも締め出されるということで、ロシアのデフォルト(破綻)が囁かれるようになりましたが、そのロシア・ルーブル債ファンドがあったので、解説しておこうと思います。『DWS ロシア・ルーブル債券投信』です。私がまだ野村證券にいた時に販売開始されたもので、今は基準価額3000円くらいになってしまってます。
なお今回の解説は一部ロシア債券が組み入れられているその他新興国債券ファンド、エマージングボンドファンドなどにも同様に言えますので、もしそういったファンドを保有していたら参考にしてください。
ロシアが本当にウクライナに攻撃するとは思っていませんでした。ロシアルーブルも下がっているようですし、制裁を受けると、債券なども売られてしまいますよね。
裏事情に関しては私もわかりませんが、投資の原理でいうとその通りです。なので個人投資家はまず手を引くことが大事ですね。ただ今回はいい機会なので、ロシアという国そのものの勉強もしておこうと思います。
- 動画解説
- ロシアという国
- ロシアの投資環境
- 債券金利+為替プレミアム
- 最終利回り9%だけれど、基準価額は3000円まで下落
動画解説
ロシアという国
私もまだ一度もロシアへ行けていませんが、数年前に日本からもビザなしで入れるようになりましたよね。ロシアは大きな国土を持っていますが、大きく西側と東側で分けて考えていいようです。西側ではモスクワやサンクトペテルブルグのような先進都市が並び、東側ではガス、石油、レアメタルのような資源が豊富に採れ、それをシベリア鉄道を使って運んでいます。
天然ガスの消費量は年々増えていき、シェアは世界一。ドイツの70%がロシアからの輸入だったそうですね。今回のウクライナ危機でそれも全面的に見直すそうです。
次に小麦。あんな寒い国で植物が育つのかと疑問に思いますが、現在ロシア一国で米国、EUを抑えて世界一の輸出量だそうです。歳入(国の収入)の内、石油、ガスの比率は下がっていて、その分小麦が増えています。
プーチンが大統領に就任してから、こういった政策へ舵取りをしたのかわかりませんが、GDPが近年大幅に増えました。プーチンが長期政権となり、国民に支持されているのは、こういった国内経済の事情があるのかもしれませんね。国民はだいぶ裕福になっていると思います。また私も記憶になかったのですが、2014年にもウクライナへ軍事介入しているんですね。その時にも欧米は経済制裁を発動し、GDPは大きく落ち込みました。それ以降、まだ回復は仕切っていません。
他の国と比べてみても、ロシアは政府債務(国債残高)は低く、財政状況もとても良いです。日本が群を抜いてひどいですが、BRICsのその他の国(中国、インド、ブラジル)よりもかなり良い状況なのがわかります。
2030年までの国家目標もプーチンという独裁のおかげで、目標達成も結構現実的なのではないでしょうか。毎度政権が変わってその場しのぎなことばかり言っている日本とはずいぶん違うでしょう。
経常収支(輸出と輸入のバランス)もロシアは圧倒的にいいです。つまり輸出が多く、輸入は少ない。小麦もすごいですが、天然資源を持っているからこそですね。これが年々積もり、外貨準備もどんどん増えています。
政策金利は現在(2021年10月)、8%。これがロシア債券へ投資する魅力です。ただ為替はというとルーブル安傾向なので、為替差益というよりも現状為替で損をしています。ただ底を打っているようにも見えますね。
旧ソ連のイメージとウクライナ問題でロシアは危険なイメージしかありませんでしたが、国は意外にもしっかりしてるんですね。
2000年代にゴールドマンサックスがBRICsと提唱した一つに選ばれただけのことはありますよね。実際に確実にGDPが増え、豊かになっています。
ロシアの投資環境
他の国と金利水準を比較したのがこちら。ブラジル、取ることの方がもっと高いのですが、ロシアは2年満期の債券で8.4%。格付けはBBB-なので投資不適格(安全性が低い)です。
ロシアルーブルは原油価格と連動をしています。ただここ2年は乖離が見られるので、ルーブルは高くなるのかもしれませんね。そこへウクライナ危機が起こり、またルーブル安になってしまいました。
債券の格付けはあまり変化なくずっとBBB前後です。CDS(クレジットデフォルトスワップ)もこれ以上ないくらい低くなっていますが、今回の件(ウクライナ危機)でまた跳ね上がってるのではないでしょうか。
ロシアへの制裁はウクライナ問題に始まった話ではなく、既にいろいろなところでされていたようです。ただロシア国債の保有額はなんと外国人の方が多い(70%)ということで、今回の一件で外国人が一気に売りをかけているかもしれませんね。国債の満期償還の際の借り換えも難しくなったため、デフォルトが囁かれるようになりました。
金利が高いけれど、格付けが低く、為替も弱い。どっちの方が大きいか?ということでしょうか?
そういうことです。現在はウクライナ問題があり、投資するよりも売却する方だと思いますが、安くなった時は買いかもしれませんね。
債券金利+為替プレミアム
ロシア債券はこのように国債、軍国債というのがあります。債券単価を考慮した利回りは4年で年2.5%程度ですから、それほど高くないですね。通貨がルーブル建、ドル建て、ユーロ建がメインです。
ルーブル以外で投資保有する場合には、為替プレミアムという金利がつきます。為替プレミアムはその国短期金利差ですが、米国もEUも今は金利がほぼゼロ、ないしマイナスなので、どちらも約8%くらいの高いプレミアムをもらうことができます。
為替プレミアムとは驚きました。これだけで年8%、更に金利も高いので、かなり余裕ありますよね。
ただ実際に外貨建て債券をどれだけ持っているか?も大事なので、次で解説します。また2008年金融危機以前は先進国通貨でもこの為替プレミアムがもらえたので、日本人にとっては外貨で投資することに大きなメリットがありました。
最終利回り9%だけれど、基準価額は3000円まで下落
こちらがこのファンドのこれまでのパフォーマンス。他の毎月分配型ファンドと同様に特別分配を出し続けているため基準価額は下がっていますが、分配金込みだとトントンくらいです。2008年、2017年に急に人気が出て、そのあと1年で随分売られています。販売している証券会社が随分と手数料稼ぎしていることがわかりますよね。
このファンドの具体的な投資先ポートフォリオです。ルーブル建が一番多く(60.3%)、次に米ドル(32.4%)、ユーロ(7.3%)です。種類別に見ると、国債がほとんど(69.6%)のようですね。最終利回りは6%で、為替プレミアムが3%で、平均して年9%の利回りとなるようです。
為替ヘッジプレミアムは思ったほどありませんでしたが、それでも年9%は高いように感じます。
あとは満期まで持つと言っても、投資信託を買う個人投資家は途中の基準価額で売買をするので、その債券単価でちゃんとリターンを出せるファンド会社なのかどうか(DWS)?ですが、そこまでは資料の中ではわかりませんでしたね。また新興国通貨は為替がレンジ相場でなく、限りなく安くなって行ったりもするので、それが一番のリスクです。
まとめ
- ロシアルーブル債投資は利回り9%(年)と魅力的
- 為替安が一番の敵
- ウクライナ問題の後、安くなったら買うのもアリ
逆張り投資家であれば、ウクライナ問題後に割安となったロシア債を買うのもいいですね。ただ一般の方にはあまりお勧めしません(笑)。現在、投資してしまっていて、売却を考えている時はこちらからお気軽にご相談ください。
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著者プロフィール
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<経歴>
青山学院大学国際政治経済学部国際経営学科ファイナンスコース卒業
中国天津南開大学漢語語言学院留学
野村證券にて4年半勤務、2008年リーマン・ショックの前日に退社
プライベートバンクを経て、2009年K2 Investment設立
2014年ボストン留学、2018年Paris留学
現在、K2 Holdings会長
<趣味>
ダイビング、クルージング、自然
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