三菱UFJフィナンシャルグループ、AT1債(年1.804%) 〜三菱UFJモルガン・スタンレー証券

こんにちは、K2 College河合です。

本日は報道にあった三菱UFJのAT1債発行の解説をします。AT1債といえば劣後債の一種ですが、クレディ・スイス破綻の時に、株式よりも弁済順位が上だったにも関わらず、無価値になったことで注目を集めましたね。

クレディ・スイスの一件でAT1債というものを知りましたが、破綻で無価値になるなんてとても投資する気になれません。

おっしゃる通りだと思います。ただクレディ・スイスの件は我々金融マンも有識者も皆おかしいと思っているところで、現在投資家と金融機関がクレディ・スイスを買ったUBSとスイス当局に対して訴訟を起こしています。

  • 三菱UFJ AT1の条件
  • TLAC債も発行
  • クレディスイス破綻以降のAT1債発行例

三菱UFJ AT1の条件

今回のAT1債発行額は合計で3300億円。

AT1債は2本あり、1本目(1920億円)は5年2カ月後に償還が可能になる債券で、当初の表面利率は1.804%。5年2カ月目以降は6カ月物日本円東京銀行間取引金利(TIBOR)+1.326%となります。

2本目(1380億円)は10年2カ月後に償還が可能になる債券で当初の表面利率は2.127%。10年2カ月目以降は6カ月物日本円TIBOR+1.307%となります。

円建てで三菱UFJとはいえ、このご時世で年1.8%って、劣後債と言えど高く感じられません・・・。

私なんかは円建てであることがリスク(今後は更に円安になる)と思っているので、1.8%なんて為替の実施損で一瞬で消えてしまうと思ってしまいますね。

TLAC債も発行

永久劣後債(AT1債)以外にも今回、総損失吸収力(TLAC)債というのを2400億円発行するそうです。

AT1債は一般に発行体の自己資本比率が一定水準を下回るなどした場合に株式に転換されたり、元本が削減されたりする仕組み。一方、TLAC債は銀行の破綻時に公的資金の注入による納税者の負担を避けられるよう社債投資家にも負担を求めるもので、弁済順位はAT1債よりも高いとされています。

そのためTLAC債の金利はAT1債よりも低く、今回のTLAC債の償還期限は2025年6月で、当初の表面利率は0.521%、2年目は6カ月物日本円TIBOR+0.349%となります。

金融機関の債券はやたら劣後債が見受けられますが、通常の社債だと金利が低すぎて資金が調達できないんですかね?

円建てでは金利つけられないので、劣後債で1%台まで見せてるんでしょう。とはいえ、個人投資家というよりも銀行間、企業間の持ち合いが多いのではないかと想像されます。

クレディスイス破綻以降のAT1債発行例

2023年3月にUBSによる買収が決まったクレディスイスのAT1債が無価値となり、金融機関が発行するAT1債には世界的に売り圧力が強まりました。その後、4月に三井住友FGが国際金融システムで重要な銀行(G-SIBs)として初めて1400億円のAT1債を発行。

これを機に世界中でAT1債起債に動く流れがあり、豪コモンウェルス銀行が今月AT1債の起債を計画しているそうです。

金融システムが落ち着かないと、こちらも落ち着いて投資ができないので、よかったです。

米国で3つの大きな銀行が破綻した件もあり、今年は米国債の格下げ話もあり、なかなか金融市場が落ち着かなそうですね。

  • AT1債など劣後債への投資は検討もOK
  • 円建て債へ投資するのはやめよう
  • 外貨建てでもっと高い金利を取ろう
  • 市場が不安定な時はヘッジファンド・オルタナティブへ投資をしよう

日本人はどうしても外貨=リスクだという間違った金融リテラシーを植え付けられていますが、外貨はリスクではなく資産です。リスクというのは一つのものに集中している状態を言うので、もし日本円資産ばかり持っていたら(金融資産、家、ビジネス、収入、家財、不動産など)、それこそが大きなリスクです。今後は円安の時代。できるだけ早く外貨へリスク分散しましょう。今だと米ドル建てで年5%台の金利がつきます。

また投資を考えられるのであれば、金融不安な今年は株やインデックスではなく、ヘッジファンドオルタナティブへ投資をしましょう。

※『オフショアファンド入門書(マニュアル)』はこちら(無料)【NEW】

著者プロフィール

河合 圭
河合 圭
<経歴>
青山学院大学国際政治経済学部国際経営学科ファイナンスコース卒業
中国天津南開大学漢語語言学院留学
野村證券にて4年半勤務、2008年リーマン・ショックの前日に退社
プライベートバンクを経て、2009年K2 Investment設立
2014年ボストン留学、2018年Paris留学
現在、K2 Holdings会長

<趣味>
ダイビング、クルージング、自然

この投稿へのトラックバック: https://media.k2-assurance.com/archives/13508/trackback