本来、銀行の基本機能は「預金を集め、貸し出す」ことである。ところが、低金利・利ざや縮小が常態化する中で、銀行は収益源を手数料ビジネスへと大きく傾斜させてきた。その代表例が投資信託や保険の販売である。
この流れの中で、**「投資信託を買ってくれる顧客には融資条件を融通する」「関係性を重視する」という思考が生まれるのは、銀行側の論理としては自然だ。しかし、それは法的にも倫理的にも極めて危うい領域に踏み込む行為であり、実際には抱き合わせ販売(不当取引)**として明確に違法とされている。
それにもかかわらず、銀行しか利用しない預金者・借り手の側が、これを「当たり前」「むしろ得だ」と誤認してしまう構造が存在する点こそ、問題の本質である。
- 銀行の収益構造が「投資信託販売」に傾く必然
- 「投信を買えば融資が有利になる」という誤った合理性
- 抱き合わせ販売が違法とされる本当の理由
- 銀行しか使わない人ほど「得だと勘違いする」構造
- 「銀行中心主義」が思考停止を生む
銀行の収益構造が「投資信託販売」に傾く必然

かつて銀行は、預金金利と貸出金利の差、いわゆる利ざやによって安定的な収益を得ていた。しかし、長期的な低金利環境下ではそのモデルは成立しない。結果として、銀行は以下の方向へ進んだ。
• 融資残高を増やしても儲からない
• 代わりに販売手数料が即時に入る商品を重視
• 投資信託・保険・仕組商品が主力収益源になる
この構造において、銀行内部では「顧客は資金を持っている」「ならば運用商品も買ってもらうべきだ」という発想が強まる。そして次第に、融資と販売を同一顧客内で回収しようとする圧力が生まれる。
「投信を買えば融資が有利になる」という誤った合理性

銀行側の思考を分解すると、次のようになる。
• 投資信託を買ってくれる顧客=銀行への貢献度が高い
• 貢献度が高い顧客には、金利や審査で配慮したい
• 結果として「関係性重視」という名目が使われる
一見すると合理的に見えるが、これは取引の独立性を完全に破壊する発想である。
融資は「信用力」と「事業性」で判断されるべきものであり、投資信託購入という全く別の取引条件を暗黙に絡める時点で不当である。
にもかかわらず、「表向きは言わない」「空気として伝わる」形で行われるため、違法性が見えにくくなっている。
抱き合わせ販売が違法とされる本当の理由

抱き合わせ販売が禁止されている理由は単純だ。
• 顧客の合理的判断を歪める
• 本来不要な商品を買わせる
• 競争を阻害し、価格の透明性を壊す
特に銀行取引では、「融資を断られる恐怖」や「条件が悪化する不安」が、顧客に強い心理的圧力を与える。その結果、
投資信託の中身を理解せずに買う
金利条件との比較を冷静にできなくなる
という事態が起きる。これは顧客保護の観点からも、金融システムの健全性の観点からも許されない。
銀行しか使わない人ほど「得だと勘違いする」構造

問題をさらに深くしているのが、利用者側の認識である。
• 銀行は安心
• 銀行が勧めるものは無難
• まとめて取引した方が得
この価値観に長年浸っている預金者ほど、
「投信も買ったし、融資条件も良くなった。Win-Winだ」
と誤解しやすい。
しかし実際には、
• 投資信託の手数料は高い
• 運用成績は平凡、あるいは悪い
• 融資金利の優遇は微々たるもの
というケースが大半であり、総合的には顧客側が損をしていることも少なくない。
「銀行中心主義」が思考停止を生む

銀行しか使わない、銀行以外の金融チャネルを知らないという状態は、選択肢を失っている状態でもある。
• 融資は銀行しかない
• 運用も銀行で十分
• 比較する対象が存在しない
この環境では、多少不利な条件であっても「それが普通」と認識されてしまう。
結果として、不合理な取引慣行が温存され、改善されない。
銀行側が強いのではなく、顧客側が比較・分離して考える力を持っていないことが、構造を支えてしまっている。
融資と販売は完全に分けて考えていただきたいです。
日本の銀行はATMから引き出したり、送金することすらままならない状況なので、融資をチラつかせて販売をするのはモラル的にもダメですね。
まとめ
銀行が「投資信託を買ってくれたら融資条件を考慮する」という発想に至るのは、収益構造を考えれば理解できなくもない。しかし、それは理解できることと、許されることは全く別である。
本来、
• 融資は融資として
• 投資は投資として
完全に切り離して判断されるべきだ。
それを混同し、「まとめた方が得」という幻想を抱かせること自体が、金融リテラシーの低下を招く。
銀行しか使わないことが「安全」なのではない。
選択肢を持たないことこそが、最大のリスクである。
この構造を理解できた時、初めて「得をしているつもりで損をしていた」現実に気づくことになる。
著者プロフィール

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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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