「円安=日本企業が儲かる=日本株が上がる」という20年前の呪文が、なぜいまも生き残っているのか

円安になると日本企業が儲かり、日本株は上がる──。
このフレーズはいまだに個人投資家の口からも、メディアの見出しからも頻繁に聞こえてくる。しかしそれは、**2000年代初頭に成立していた経済構造を前提とした“死語”**であり、現在の日本経済とはほとんど整合していない。

にもかかわらず、この言説が生き残り続けている理由は明確だ。
それは「分かりやすい」「説明が楽」「責任を取らなくていい」からである。

本稿では、
• なぜ円安=日本株高というロジックが崩壊しているのか
• それでもなお語られ続ける理由は何か
• 現代の日本企業の実態はどう変わったのか
• その誤解が個人投資家にどんな損害を与えているのか

これらを整理し、「いま生きている経済」と「化石化した言説」を切り分けていく。

  • 「円安で儲かる日本企業」という前提が成立していた時代
  • グローバル企業化した日本企業の現実
  • 円安が日本経済全体にもたらす本当の影響
  • ゴミメディアと「思考停止した個人投資家」の共犯関係
  • 本当に見るべきは為替ではなく「構造」と「資本の流れ」

「円安で儲かる日本企業」という前提が成立していた時代

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この言説が成立していたのは、主に以下の条件が揃っていた時代だ。
• 製造拠点が国内に集中していた
• 輸出比率が高く、付加価値の源泉が国内にあった
• 円高はコスト高、円安は利益拡大に直結していた
• 為替差益が賃金・設備投資に比較的還元されていた

つまり、**「円安=輸出数量×円換算利益が増える」**という単純な構造が成立していた。

しかし現在の日本企業はどうか。
• 生産拠点は海外
• 原材料・部品はドル建て調達
• 為替ヘッジで利益は平準化
• 円安はコスト増として跳ね返る

もはや「円安=利益増」という単純な因果関係は存在しない。

グローバル企業化した日本企業の現実

企業のグローバル化を支える「人事部のグローバル化」とは ~企業買収後のPMIの事例紹介 - 顧問、専門家のプロ人材紹介サービス

現在の大企業の多くは、実態としてグローバル企業である。
• 売上は海外比率が高い
• 調達も海外
• 人件費も海外
• 税務・会計もグローバル基準

ここで重要なのは、利益の源泉が「日本円」ではないという点だ。

円安になると、
• 外貨建て売上を円換算した「見かけの利益」は増える
• しかし同時に、外貨建てコストも円換算で増える
• さらに多くの企業は為替ヘッジを行っている

結果として、為替変動は利益を劇的に押し上げもしなければ、押し下げもしない。

それにもかかわらず、決算報道では「円安効果で増益」という表現が今も使われる。
これは**実態の説明ではなく、記者と読者の双方にとって都合の良い“物語”**にすぎない。

円安が日本経済全体にもたらす本当の影響

円安・円高で暮らしはどうなる?為替相場の仕組みを理解して経済の一歩先を予測しよう | NOMURA ウェルスタイル – 野村の投資&マネーライフ

円安が本当に影響を与えているのは、企業収益ではなく国内の生活コストだ。
• エネルギー
• 食料
• 原材料
• 物流コスト

これらはほぼすべて輸入依存であり、円安は即座に物価上昇として国民に跳ね返る。

一方で、
• 賃金はほとんど上がらない
• 非正規雇用比率は高止まり
• 価格転嫁は限定的

結果として起きているのは、
**「円安で企業が儲かる」のではなく、「円安で生活者が貧しくなる」**という現象だ。

それでも株価が上がる局面があるのは、
• 海外投資家から見た割安感
• 自国通貨安による名目株価上昇
• 金融緩和による資産価格押し上げ

といった金融的要因であり、実体経済の健全さとは切り離されている。

ゴミメディアと「思考停止した個人投資家」の共犯関係

思考停止とは?当てはまる人の特徴や原因・現状からの改善策を紹介 | Domani

この20年前の言説が生き残っている最大の理由は、
メディアと個人投資家の共犯関係にある。
• メディアは複雑な構造を説明しない
• 個人投資家は分かりやすい理由を欲しがる
• 「円安=株高」は説明コストが極端に低い

その結果、
• 円安=買い
• 円高=売り
という中身のない判断軸が量産される。

しかしこの思考は、
• 業種差
• 企業ごとの為替感応度
• グローバル競争環境
• 資本政策

といった、本来見るべき要素をすべて無視している。

「日本株」という雑な括りで語ること自体が、すでに現代では意味をなしていない。

本当に見るべきは為替ではなく「構造」と「資本の流れ」

世界のお金と世界地図[28174008209]の写真・イラスト素材|アマナイメージズ

現代において見るべきなのは、
• どの市場で
• どの通貨で
• どの付加価値を
• 誰に対して提供しているのか

という構造だ。

円安・円高は、その構造の中の一要素にすぎない。

それにもかかわらず為替だけを見て投資判断をするのは、
• 天気予報だけで企業価値を判断する
• 株価だけ見てビジネスを理解した気になる

のと同じレベルの話である。

為替は結果であって、原因ではない。

直近の為替の動きではなく、大きな資本の流れを読むことが大事なんですね。

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まとめ

「円安で日本企業が儲かり、日本株が上がる」という言説は、
もはや分析ではなく、ただの昔話だ。

それを信じ続けることは、
• 現代の企業構造を理解しない
• 実体経済と金融市場を混同する
• 投資判断を他人の言葉に委ねる

という三重のリスクを抱え込むことを意味する。

円安で上がる株があることと、
円安だから日本株が上がることは、まったく別の話だ。

この違いを理解できないまま投資を続ける限り、
個人投資家は「環境の犠牲者」であり続ける。

いま必要なのは、
• 20年前の成功体験を捨てること
• 分かりやすい嘘より、理解しづらい現実を選ぶこと
• 為替を“理由”ではなく“条件”として扱うこと

インフレ時代・グローバル時代において、
**最も高くつくのは「古い言葉を信じ続けること」**である。

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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