東京不動産市場は“割高”でも“過熱”ではない―世界と資本の交差点で続く選別的上昇

2025年現在、東京の不動産市場はバブル後最高値を更新し続けています。都心部の新築マンション価格は1億円台が当たり前となり、中古物件でさえ1㎡あたり単価が過去10年で2倍近くになったエリアも存在します。日本国内では所得の伸びが限定的であるにもかかわらず、なぜこれほどまでに不動産価格が高騰し続けるのか。そしてこの上昇はいつまで続くのか。単なる景気循環や投機バブルでは語れない「構造的要因」と「マクロ資本の流れ」によって、東京の不動産市場は今、世界資本に選ばれる都市として、長期的な成長と課題の狭間に立たされています。

東京不動産市場について、詳しく教えてください。

以下で詳しく解説します。

  • ① 海外資本と円安の影響:東京は“割安”なグローバル都市
  • ② 供給制限と建設コスト:需要だけではなく「物理的制約」も価格を押し上げる
  • ③ 国内富裕層・投資家のシフト:株から不動産へ
  • ④ 不動産価格は実需と乖離しているか?―家計負担とのズレ
  • ⑤ 今後の価格動向:二極化と“長期型インフレ”

① 海外資本と円安の影響:東京は“割安”なグローバル都市

現在の不動産価格高騰の最も大きな要因のひとつは、「海外投資家による資金流入」です。特に2022年以降の円安傾向により、ドル・ユーロ・香港ドル建てで見ると東京の物件は非常に“お買い得”に映ります。

例えば、ニューヨークやロンドンでは1㎡あたり200〜300万円が当たり前の高級住宅地に対し、東京23区の高級マンション(六本木・麻布など)は1㎡あたり150万円前後で手に入ることが多く、税制・治安・都市インフラなどを含めると投資妙味は極めて高いとされています。

また、**グローバルファンド(Blackstone、Morgan Stanleyなど)**も日本不動産に数千億単位の資金を投下し始めており、REIT市場や私募ファンドを通じた投資が継続的に価格を押し上げています。

② 供給制限と建設コスト:需要だけではなく「物理的制約」も価格を押し上げる

一方、価格高騰の背景には「供給側の制約」も見逃せません。
• 都市再開発を除けば、都心にはほとんど新たな空き地がなく、新築供給が限られています。
• 建設コストの高騰(鉄骨・木材・セメントなど原材料費+建設業の人手不足による人件費上昇)により、新築価格は下がりにくい構造です。

特に東京都心6区(千代田、中央、港、新宿、渋谷、文京)は、“立地プレミアム”が年々増加しており、「供給できない土地」の価値が指数的に上がっています。2023年以降はマンション開発件数が前年比5〜10%減となる月もあり、希少性がさらに高まっています。

③ 国内富裕層・投資家のシフト:株から不動産へ

日銀の長期にわたる低金利政策により、金融資産の利回りが頭打ちとなる中、国内の富裕層や資産家が安定資産としての不動産に再び注目しています。

特に以下のような特徴が顕著です:
• 東京23区内の中古ワンルームマンションや新築高級物件への投資が加速。
• 「賃料収入+資産価値の保全」を目的とする投資行動が増加。
• 相続税対策として不動産を活用するケースも再増加傾向に。

また、都市部のリモートワーク定着により、「郊外から都心への回帰」も発生し、渋谷・目黒・新宿などの駅近物件が再び高値圏に戻りつつあります。

④ 不動産価格は実需と乖離しているか?―家計負担とのズレ

価格上昇の一方で、購入層の実質所得や可処分所得との乖離が問題となっています。都内新築マンションの平均価格は1戸あたり9,000万円を超え、住宅ローンを組む一般層にとっては「もはや手が届かない存在」となりつつあります。

国土交通省のデータでは、年収倍率(住宅価格÷年収)は10倍以上となり、これは「住宅ローン返済が家計の過半を占める」ことを意味します。

そのため、
• 実需層は中古マンションや郊外に流出。
• 一部では「家賃と購入価格の乖離」が加速。
• 空室率は抑えられているものの、投資物件の賃料上昇が追いついていないケースも増加。

中長期的には、この「乖離の限界」が市場調整のトリガーになるリスクがあります。

⑤ 今後の価格動向:二極化と“長期型インフレ”

今後数年間、東京の不動産価格は「全体として上昇トレンドを維持しつつ、選別化が加速する」展開になると予測されます。

上昇が継続しやすいエリア:
• 再開発が進行する品川、虎ノ門、八重洲など。
• 地下鉄や新駅開業に伴う交通利便性の向上地域。
• 渋谷・代官山などブランド性のある住宅地。

価格調整の可能性があるエリア:
• 小規模郊外の築古マンション群(修繕積立不足、耐震性不備など)。
• 実需層に買い手がつかない高額物件(特に1LDK以上で管理費が高いもの)。

さらに、インフレ・賃上げトレンドと不動産価格の連動が強まる中で、「現金の実質価値低下を防ぐ資産」としての不動産の地位は依然強固です。ただし、金利上昇が本格化した場合、借入コスト増により住宅需要が冷え込む懸念もあります。

今は買うべきタイミングでしょうか?

‌エリアと目的をしっかり考えて、ご判断ください。

まとめ

  • 現在の東京不動産市場は、単なる一過性の投機ではなく、資本移動、地政学的安全性、都市構造の希少性といった複数の要因が交錯する「構造的な高値圏」にある
  • 東京の不動産価格はまだ**「過熱」ではなく「選別的な高騰」**であり、すぐに暴落する兆候は見られない
  • ただし今後は、“どの物件を、どのタイミングで、どういう目的で購入するか”という判断が、これまで以上に重要となる
  • 価格が高いから危険というわけではなく、「その価格に見合う価値」があるかを見極める冷静な目が求められる局面にある

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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