プルデンシャル生命に見る営業モデルの功罪 ― 自社製品中心・MDRT偏重・高コミッション構造の問題点

日本の生命保険市場で大きな存在感を持つプルデンシャル生命は、「ライフプランナー」と呼ばれる営業担当者を通じた対面販売で知られている。同社の営業モデルは「徹底したコンサルティング営業」を掲げ、顧客の人生設計に寄り添うスタイルとして評価されてきた。しかしその一方で、「扱うのは自社製品のみ」「MDRT(優績表彰制度)を重視した販売文化」「高額コミッションによるインセンティブ」などの構造が、顧客本位とは言えない結果を生んでいるとの批判も根強い。本稿では、プルデンシャルの営業モデルが抱える問題点を整理し、その構造的課題を明らかにする。

  • 自社製品に限定された提案の偏り
  • MDRT文化が生む「量重視」の販売姿勢
  • 高コミッション構造と利益相反
  • 専門性とコンサルティングの限界
  • 規制強化と今後の展望

自社製品に限定された提案の偏り

そもそもライフプランは本当に必要なのか。 | LIFE MONEYSAGE

プルデンシャルのライフプランナーは、あくまで自社生命保険の販売員であり、証券や他社保険商品、低コストの投資信託などを取り扱うことはできない。顧客からすれば「金融のプロ」と思える存在でも、実際には自社商品の枠内でしか解決策を提示できない。

本来、ライフプランニングは「保障」「貯蓄」「投資」「税務」「相続」と幅広い観点から設計すべきである。しかしプルデンシャルでは、最終的にどんな課題も「自社の保険商品」で解決する方向に収斂してしまいがちだ。たとえば老後資金や教育資金の相談であっても、外貨建て終身保険やドル建て年金保険が中心に提案されるケースが多い。これは顧客の選択肢を狭め、より効率的で低コストな金融手段を見逃させるリスクを伴う。

MDRT文化が生む「量重視」の販売姿勢

MDRT – Pradeep Development Officer

プルデンシャルでは「MDRT(Million Dollar Round Table)」という国際的な優績表彰制度の獲得が、営業担当者の大きなモチベーションになっている。MDRT入りは営業マンにとって名誉であり、会社からも強く奨励されている。しかしその基準は「販売高」「保険料収入」に基づいており、顧客の満足度や契約の適合性とは無関係である。

結果として、営業担当者が「顧客のためにベストな商品を提案する」よりも、「高額契約を取ってMDRTに入る」ことを優先しやすい文化が形成されている。実際、MDRTを目指すあまり、顧客の収入や資産に対して過大な保険契約を提案する事例も散見される。表面上は「顧客に寄り添ったコンサルティング営業」としながら、その裏では「数値目標達成型の販売競争」が展開されているのだ。

高コミッション構造と利益相反

フルコミッション(完全歩合制)の働き方|【エン】のエン転職

プルデンシャルのライフプランナーは、基本給ではなくコミッション(歩合制)が収入の大部分を占める。契約金額が大きければ大きいほど担当者の報酬も増えるため、顧客にとって本当に必要な保障よりも「高額な契約」を提案しやすくなる。

特に外貨建て終身保険や変額保険など、複雑かつ高コストな商品はコミッション率が高く、営業の重点商品になりがちだ。これは顧客と営業担当者の間に明確な利益相反を生み出す構造である。顧客にとっては「割高で複雑な商品」を抱え込むリスクが高まる一方、営業担当者にとっては「収入の柱」となる。この構図が「プルデンシャルの営業は押しが強い」「顧客本位よりも販売本位」と言われる原因になっている。

専門性とコンサルティングの限界

悩む|壁|限界ギリギリ - 人物イラスト|無料素材

プルデンシャルのライフプランナーは「顧客の人生設計に寄り添うコンサルタント」として訓練を受ける。しかし、その専門性は実際には「保険営業」に限定されており、総合的な金融アドバイザーとしての資格や能力を保証するものではない。

例えば税務や相続、資産運用の分野では、深い知識を持たない営業担当者も少なくない。にもかかわらず「総合的なライフプランニング」を掲げるため、顧客は「全て任せられる」と誤解しやすい。結果的に、資産形成の効率性や多様な選択肢が失われ、自社商品の枠に閉じ込められることになる。これは「金融知識の不足した証券マン」にも共通するが、プルデンシャルでは「コンサルティング営業」という看板がそのギャップを覆い隠してしまう分、かえってリスクが大きい。

規制強化と今後の展望

顧客満足は顧客本位ではない(森本紀行) - エキスパート - Yahoo!ニュース

金融庁はここ数年、外貨建て保険や変額保険の販売について「顧客本位でない」と繰り返し警告してきた。プルデンシャルを含む大手外資系生命保険も対象となり、高齢者への外貨建て保険販売などが問題視されている。

同社も社内研修やコンプライアンス体制を強化しているが、営業現場では「MDRT文化」や「高コミッション偏重」の慣習が根強く残る。今後は、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)や低コストのネット保険商品の普及により、顧客が他の選択肢に流れるリスクも高まっている。プルデンシャルが「顧客本位」を本気で実現するためには、自社商品に閉じない多様な選択肢の提示や、報酬体系の改革が不可欠である。

知り合いに紹介されて話しを聞きましたが、なかなかしつこくて断るのが大変でした。

担当者によって度合いは違いますね。そもそも各保険会社によって掛け捨て保険のベストは変わりますし、貯蓄系の保険は海外保険には到底及ばないレベルのものしかありません。
弊社では国内、海外問わず、クライアントの資産状況やお考えに沿ったアドバイスを無料でしています。アドバイスをご希望でしたら、下記のヒアリングシートに現在の状況やお考えを入力してください。
※投資ヒアリングシートはこちら(無料)

まとめ

プルデンシャル生命の営業モデルは、「ライフプランナーによるコンサルティング営業」という美しい看板を掲げながらも、構造的には以下の問題を抱えている。
1. 自社製品に限定されるため、顧客の最適解を狭める。
2. MDRT文化により「量重視」の販売姿勢が助長される。
3. 高コミッション構造が、顧客と営業担当者の利益相反を生む。
4. 専門性が保険分野に偏り、総合的アドバイザーとしては限界がある。
5. 規制強化と競争環境の変化により、従来型モデルの持続可能性に疑問がある。

顧客がプルデンシャルのライフプランナーと付き合う際は、この構造的な限界を理解したうえで、自らも情報収集を行い、必要に応じて独立系FPや他社商品と比較する姿勢が欠かせない。保険は長期にわたる契約であり、誤った判断は数十年単位の損失につながる。真に顧客本位の金融サービスを実現するためには、販売側だけでなく顧客側のリテラシー向上も求められている。

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

この投稿へのトラックバック: https://media.k2-assurance.com/archives/34987/trackback