こんにちは、K2 College奥山です。
「御社は自然災害リスクへの対策が万全ではないから融資できません」
日銀の気候変動オペに参加する金融機関には、金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が推奨する方式での情報開示が義務づけられている。黒田総裁は「投資家に気候関連投融資に必要な判断材料を提供すると同時に、市場が企業の行動を規律付けする」と述べ、開示の重要性を強調した。
「経済、コロナの影響から回復し今後数カ月で成長局面に=日銀総裁」- Reuters 2021年11月29日
日銀の黒田東彦総裁がパリ・ユーロプラス主催の会合で講演した内容の一部。気候変動への対応について、「日本のような銀行中心型の金融システムでは、銀行を通じた気候関連投融資の促進が重要」との見解を披露しました。日本においては金融機関だけでなく、2023年から有価証券取引報告書の提出企業に気候変動リスクに対するデータ・対策の開示が義務付けられることになっていて、今後は地震保険・火災保険・利益補償保険の需要が伸びてくることが予想されます。大企業もこぞって「○○年までに二酸化炭素排出量を◯◯%削減」なんて、かなりの盛り上がりを見せていますよね。
「うちは大企業じゃないから」…、なんてお考えの中小企業のオーナーさん。そんなことは言っていられないかも知れません。銀行に融資の相談に行ったら、「御社は自然災害リスクへの対策が万全ではないから融資できません」なんて言われてしまう可能性も…
デロイトトーマツグループは、地球温暖化などの気候変動が銀行の経営に与える影響を分析するサービスを始める。米分析ソフト大手のSASインスティチュートと組み、水害などの自然災害が取引先企業の拠点に及ぼす被害額を算出。取引先企業に対する融資判断への活用を促す。気候変動開示に対する圧力が強まるなか、分析の高度化に向けた支援に力を入れる。
「デロイトトーマツ、災害時の担保目減りを分析 地銀向け」- 日経新聞 2021年8月13日
保険内容の充実やコストの削減だけでなく、事業収益や運用収益も
事業リスク対策、特に自然災害に対する備えとして色々なツールがあるかと思いますが、海外・オフショアに自社の保険子会社を作って、日本では損保が引き受けてくれない、或いは引き受けたとしても保険料が高いような保障を海外・オフショアで調達するというスキームがあることをご存知でしょうか?「キャプティブ」と言います。
キャプティブとはリスクファイナンスの手法の一つで、「自社グループの中に設置する、自社グループのリスクを専門的に引き受けるための保険会社」です。要は、ハワイとかラブアン(マレーシア)といったオフショア地域に自前の保険会社を作って、日本の事業会社が国内の損保会社から保険を買う時に、「我が社で設立した再保険会社で再保険を掛けてください」とお願いするわけです。
繰り返しとなりますが、最大のメリットは、元受保険会社(日本の損保)では引受が難しいリスク(例、地震)、掛金が高額なリスクの一部を自社で引き受けることによって、保険内容の充実やコストの削減ができるということですが、他にも、キャプティブが再再保険市場で同じ補償を安い保険料で調達することができれば、保険事業収益を得ることができることや、キャプティブ内の資金(例、資本金や責任準備金)を上手く運用できれば、運用収益も期待できる、等が挙げられます。
内部留保金の対策として、美容整形の賠償責任保険として
キャプティブついては、自然災害リスクへの対策だけではありません。最近では特に医療法人が活用するケースが増えているようです。というのも、医療法人内の資金は配当も行えず、医療関連にしか資金も使うことができない為、医療法人の内部留保金の対策は医療法人の共通課題となっているとのこと。そこでキャプティブを利用して資産を簿外移転すると…。事業リスク対策とは少し違った観点ですよね。あと医療について言えば、美容整形における賠償責任保険。通常の医師賠償責任保険では、美容目的の医療行為によって生じた賠償までは保障されませんから、キャプティブを利用するわけです。例えば年間の売り上げが25億円の美容クリニックが支払い保険料1億円で賠償責任保険を海外・オフショアから調達するようなイメージ。
税理士さんの間で広がり
俄然注目が高まってきている「キャプティブ」。特質上、特に税理士さんが自分自身の顧客に紹介するケースが多いようです。ある程度の規模の税理士事務所であればメガトン級のクライアントを数社/数名抱えているはずで、自然災害や賠償責任、内部留保金といった方面だけでなく、相続対策にも利用できるキャプティブであれば、多岐に渡る悩みに対応できますからね。詳細を知りたい方、ご遠慮なくお問い合わせください。
著者プロフィール
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<経歴>
獨協大学外国語学部卒業
オーストラリア・シドニーで日系旅行会社(近畿日本ツーリスト)、英系オンラインFXプロバイダー(CMC Markets)に勤めた後、結婚を機に妻の出身地である香港に移住。同地で独立系IFA(Jumbo Alliance Funds)に10年、新生銀行資本のNippon Wealth Limitedに3年勤務し、為替、債券、投資信託、及び保険といった金融商品の販売や取引先の開拓に従事。20年に及ぶ海外生活に終止符を打ち、2021年春に日本に帰国し、同年5月にK2 Holdingsに参画。
<趣味>
旅行、読書、テニス
<出身地>
埼玉県川口市
<自己紹介>
ホテル・レストラン経営を学ため、ホスピタリティーのメッカであるオーストラリア・シドニーに留学し、一旦は現地で旅行会社に就職したのですが、友人の影響を受けて株式投資を始めたことを機に金融に対する興味が増し、思い切って金融の世界に飛び込んだのが2007年。そこから一貫して海外の金融商品を日本国内外のお客様に紹介してまいりました。
これまでのキャリアで学んできたことの中で最も大きいと思うことのは、金融という無味乾燥に見える業界においても、誠実さや真心、信頼や義理人情に勝るものはなく、それは国籍を問わず同じであるということ。低金利政策が長引き、あらゆる業界において規制緩和も遅々として進まないという日本の現状に失望し、海外投資に興味を持つ人が沢山いる一方で、横文字だらけでハードルが高いと感じ、第一歩を踏み出すことができないでいる人がたくさんいることも事実です。そんな方々に安心して海外投資を始め、続けてもらえるようスタッフ一丸となって誠心誠意サポートしていきますので、どうぞお気軽にご相談ください。
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