NISAの商品が“つまらない”理由とは?

NISA(少額投資非課税制度)の対象となる投資信託のラインナップを見ると、国内外インデックス型ファンドやバランス型ファンドが大半を占めており、個性的なテーマ型や特定国集中型、商品(コモディティ)、暗号資産関連ファンドはほとんど見当たらないという印象を受けます。

この背景には、制度設計上の意図と金融庁が定める厳しい商品基準、そして運用会社・販売会社の自主規制などが複雑に絡み合っています。

どうしてNISAの商品は偏っているのですか?

以下で詳しく解説しますね。

  • 【NISA制度の目的と設計思想】
  • 【ファンド採用基準の仕組み】〜とくに“つみたて投資枠”で顕著〜
  • 【対象商品の偏りの理由】
  • 【今後の可能性と投資家が取れる選択肢】

【NISA制度の目的と設計思想】

まず、制度の目的を再確認すると、NISAはあくまで以上のような「国の政策」に基づいて設計されています。

金融庁がNISAを通じて推進したいのは「長期・積立・低コストの王道投資」。
そのため、投資家の好奇心をくすぐる“面白そうな商品”はあえて除外されやすい構造です。

【ファンド採用基準の仕組み】〜とくに“つみたて投資枠”で顕著〜

特に「つみたて投資枠」では、以上のような厳格な商品要件が設定されています。

→ この結果、eMAXIS SlimシリーズやSBI・Vシリーズ、楽天・オールカントリーなどの「王道インデックス型」が並ぶラインナップになります。

【対象商品の偏りの理由】

① インデックス型が中心なのはなぜ?

• コストが低く、資産形成に向いている
• 特定銘柄に依存せず、広く分散が可能
• 「世界株式」「全米株式」「TOPIX」などが選ばれやすい

→ 金融庁は、過去の“毎月分配型ブーム”で損をした個人投資家を反省し、安定・長期重視の方針に回帰しています。

② テーマ型ファンド(AI、宇宙、DX、脱炭素など)が除外されやすいのはなぜ?

• ハイボラティリティ(価格変動が大きい)
• 流行廃りが激しく、長期保有に不向き
• 組成後の運用実績が浅く、制度要件を満たしにくい
• 信託報酬が高めになりやすい(年1〜2%以上)

→ 一過性のブームに踊らされやすいリスクがあり、「老後資産形成向きでない」と判断されている。

③ 国別集中型ファンド(例:インド株、中国株)が対象外になりがちなのは?

• 単一国への投資は分散投資の原則に反する
• 新興国は相場変動や政治リスクが大きい
• カントリーリスクによってパフォーマンスの振れ幅が大きい

→ 例外として、一部の先進国ETF(S&P500や全世界株式)は容認されているが、“インドだけ”のような商品は不安定と見なされがち。

④ 金や原油などコモディティ系ファンドが対象外の理由

• 実物資産を裏付けとする商品は「資産形成」との整合性が弱い
• 価格変動要因(地政学、投機筋)が大きく、予測困難
• 信託構造上、価格連動性が不完全で長期投資に不向き

→ 金(ゴールド)はインフレヘッジとしては優れていても、長期資産形成という政策目的とはズレがあるとされる。

⑤ ビットコインETFなど暗号資産関連商品が排除される理由

• ボラティリティが極端(1日で10%以上変動することも)
• 通貨としての安定性が確立しておらず、制度面の整備も不十分
• 金融庁の監督下にある金融商品取引業者にとって取り扱いが難しい
• 仮に上場投信(ETF)であっても、金融庁の審査が非常に厳しい

→ 個人保護の観点から「非課税での投資を認める段階ではない」と判断されている。

【今後の可能性と投資家が取れる選択肢】

▶ 将来的に対象拡大の可能性はある?

• 金融庁は徐々にNISAの枠組みを柔軟化している
• 今後、テーマ型や新興国ファンドが「信託報酬を下げ、長期運用に適する設計」になれば採用される可能性はある
• 2024年以降の新NISAでは「成長投資枠」の活用で、個性的な商品を購入できる枠が拡大中

例:eMAXIS Neoシリーズ、SBIインド株インデックス、先進国小型株ファンドなどは成長投資枠で選択可能

▶ 投資家が取れる対応策

NISAを利用しなければ、いろんな選択肢があるのですね。

個性ある投資を求めるなら、成長投資枠の活用や課税口座の併用戦略によって、自分なりのポートフォリオを構築していくことが現実的な選択肢です。

まとめ

  • NISA口座内の商品ラインナップが“同じようなインデックスやバランスファンドばかり”に見えるのは、以下のような制度的背景と制約によるものです

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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