MDRTとコンベンション文化を武器にする若手IFA ― SNS時代の副業保険営業の実態

近年、保険営業の世界ではSNSが新たな顧客獲得チャネルとして急速に普及している。特に若手のIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)や副業的に保険を扱う営業マンは、MDRT会員やコンベンション表彰といった「肩書き」や「華やかな写真」 をSNSで発信し、自らを「成功者」としてブランディングする。この手法は一見するとキャリアの透明性を示すように見えるが、実際には顧客本位と乖離し、「虚飾的な権威づけ」で集客する危うさを孕んでいる。本稿では、SNSを舞台に展開されるMDRT・コンベンション活用型の集客術と、その問題点を具体的に整理する。

出会う保険マンやFPの人たちから毎度説明されますね。

ただ売上が多いだけ、大口がたまたま決まっただけというパターンもあります。

  • インスタ映えする「コンベンション写真」の乱用
  • MDRT肩書きによる権威づけ営業
  • 副業ネットワークと「仲間集客」の拡散
  • 海外オフショア保険との結びつき
  • 顧客本位との乖離と将来リスク

インスタ映えする「コンベンション写真」の乱用

多くの若手IFAや副業営業マンは、インスタグラムやFacebookに「ハワイでの表彰旅行」「ラスベガスMDRT総会」などの写真を投稿し、「私は国際的に認められた保険営業マンです」と暗にアピールする。
顧客から見れば「華やかな舞台に立つ=信頼できる人物」という錯覚を与えやすい。実際には販売金額を基準にした結果であり、顧客満足度や長期的成果を示すものではないが、SNSでは「見栄えのする写真」だけが切り取られ、顧客に誤った信頼感を植え付ける ことにつながっている。

MDRT肩書きによる権威づけ営業

一般社団法人 MDRT日本会 | 公式サイト

若手営業マンはプロフィール欄に「MDRT会員」「国際基準のトップセールス」と記載し、自己紹介動画やLINE公式アカウントで強調する。特に副業的に保険を扱う人々にとって、MDRTは「短期間で信頼を勝ち取る最強の肩書き」となっている。
だが、MDRT基準は販売金額にすぎず、必ずしも顧客にとって最適な商品を提案しているとは限らない。それでも「MDRT=信頼できる人」という印象をSNSで拡散することは、権威を装って顧客を誘導する営業手法 に近い。

副業ネットワークと「仲間集客」の拡散

副業・兼業の最新実態~35.4%が副業・兼業を容認。 自社を副業・兼業先とする社外人材の受け入れは15.7%が認める~ | 『日本の人事部』

副業的に保険を扱う若手は、しばしば「副業仲間」ネットワークをSNS上で形成する。InstagramライブやTwitterスペースで「資産形成勉強会」と称した配信を行い、互いに「すごい!」「さすがMDRT会員!」と称え合いながら、参加者を勧誘の土俵に引き込む。
その裏では、紹介料を分け合う仕組みがあり、契約者は「友達が勧めているから安心」と思い込みやすい。結果として、副業コミュニティがマルチ商法的な拡散構造 をとり、SNSで広がっていく。

海外オフショア保険との結びつき

オフショア保険が規制強化によってさらに改善されたワケとは?|海外投資のGIA

MDRTやコンベンションを利用する若手営業マンの多くが販売しているのは、Cornhill、FPI、RL360、Investors Trustといったオフショア積立保険である。これらは「月額数百ドルから国際投資ができる」「海外富裕層が利用している」と宣伝しやすく、SNS映えするプレゼンに適している。
実際には高コスト・長期拘束で不利な商品だが、営業マンにとっては「少数契約でMDRT基準を達成できる」ため魅力的だ。つまり、MDRT達成=オフショア販売成功 という構図があり、SNSはその販促舞台になっている。

顧客本位との乖離と将来リスク

顧客満足は顧客本位ではない(森本紀行) - エキスパート - Yahoo!ニュース

このようなSNS集客の問題は、短期的には「権威の演出」によって契約が取れるが、長期的には顧客との信頼関係を損なう点にある。顧客が後になって「自分が契約したのは営業マンの旅行や肩書きのためだった」と気づけば、不信感は一気に高まる。
さらに金融庁がSNSを通じた不適切勧誘に監視を強めている中で、副業的な営業マンが「MDRTやコンベンションを餌に契約を取る」手法は規制対象となるリスクも大きい。SNS時代のMDRT活用型営業は、顧客本位経営と真逆の方向に進む危険性 を秘めている。

まとめ

  • SNSは営業の効率を高める一方で、「虚飾的な肩書きマーケティング」を助長している
  • 顧客に不利益をもたらす温床にもなっている
  • 保険業界が真に信頼を獲得するためには、MDRTやコンベンションを「販売金額」ではなく「顧客満足度・契約継続率」で評価するべき
  • SNSでの発信も顧客本位に沿った透明性ある情報提供へと転換する必要

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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