法人から代表取締役への貸付と保険活用で資金を循環させる方法|専門家が解説する実践型スキーム

こんにちは、K2 College 松本です。

今回は法人の資金を活用して個人の保険を契約するスキームをお伝えします。

もうリスクを取った新規事業も考えてないので、法人に残していても仕方ない資金の使い道に困っています。

今回のお話しも選択肢の1つになると思います。

  • 法人資金をどう個人資産へ循環させるか
  • 法人貸付と保険契約を組み合わせた基本構造
  • メリットと気をつけたいリスク
  • 経営者が実践する際のチェックリスト

法人資金をどう個人資産へ循環させるか

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会社にお金が余っている。でも個人では使えない──そんな悩みありませんか?

中小企業を経営していると、決算が終わるたびに「会社にはお金があるのに、自分の手元では使えない」という状況に悩む経営者は多いはずです。
法人の利益は会社のものであり、個人が自由に使うことはできません。役員報酬を増やせば所得税が重くなり、配当で受け取れば二重課税になります。結果として、法人の預金口座に資金が積み上がり、「使えないお金」が増えていくのです。

一方で、経営者個人としては老後資金や相続対策、家族保障などのニーズがあります。
「法人資金を有効に活かしながら、個人の将来にも役立てられないか?」
そんな考えから生まれたのが、法人から個人への貸付と保険契約を組み合わせた資金循環スキームです。

法人貸付と保険契約を組み合わせた基本構造

このスキームの流れを整理すると、次の4ステップで構成されます。

  1. 法人が代表取締役個人へ貸付を行う
     法人が余剰資金を活用し、代表者個人に一定額を貸し付けます。
     契約書を作成し、金利(1.0〜2.0%前後)や返済スケジュールを明記することが必須です。
  2. 個人が保険契約を行う
     個人は受け取った資金で、終身保険や外貨建て保険などを契約します。
     これにより、資金は保険会社の運用によって増加し、同時に死亡保障も得られます。
  3. 保険の引出や貸付制度を利用して返済原資を作る
     一定期間が経過すると、保険の契約者貸付制度や部分解約を活用し、資金を引き出すことが可能になります。
     その資金を法人への返済に充てることで、資金が循環します。
  4. 法人へ返済を行う
     返済が進めば法人の貸付金は減少し、法人の資金が戻ってきます。
     この一連の流れで、「法人の資金を有効に動かしつつ、個人が運用・保障を得る」構造が完成します。

重要なのは、このスキームが「資金の移転」ではなく「貸付」という点です。
法人の資金はあくまで貸付金として会計上残り、返済実績があれば、資金流出ではなく資産運用としての性格を保てます。
ただし、実態のない貸付(返済なし・無利息)は「役員賞与」や「所得認定」のリスクが高いため、形式だけでなく運用実態の整備が不可欠です。

メリットと気をつけたいリスク

この方法はうまく設計すれば、法人にも個人にもプラスに働きます。

◆メリット

  • 法人資金の有効活用ができる
     余剰資金を貸付金として運用でき、簿外流出ではなく資産として残る。
     銀行預金で眠らせるよりも効率的です。
  • 個人資産形成と保障を同時に実現
     保険契約を通じて、運用益と死亡保障を得られます。
     相続・退職後資金など、長期的な備えとしても有効です。
  • 法人と個人の資金循環が明確
     返済の仕組みを作ることで、法人に資金が戻り、会計上も整合性を保てます。
     金融機関や税務調査への説明もスムーズです。

◆リスクと注意点

  • 返済実績がないと「役員賞与」扱いに
     無利息や返済が行われない場合、税務署は「実質的に個人がもらった」と判断します。
     結果として、法人側は損金不算入、個人側は所得課税というダブルパンチになります。
  • 保険の引出に課税が発生する可能性
     保険から引き出す際、利益部分は一時所得や雑所得として課税対象になることがあります。
  • 短期解約のリスク
     保険を短期で解約すると元本割れします。最低でも10年程度の中長期運用を前提にすべきです。
  • 税務・金融当局の監視強化
     節税を目的とした保険スキームは近年厳しく取り締まられています。
     形式的な「節税」ではなく、経済的合理性を説明できる設計が不可欠です。

経営者が実践する際のチェックリスト

Checklist concept. Blank checklist with empty boxes on office table.

実際にこのスキームを導入する際は、以下のポイントを確実に押さえてください。
これを守るかどうかで「合法的な資金循環」か「危険な節税」と見なされるかが分かれます。

  1. 契約書をきちんと作る
     金銭消費貸借契約書を正式に作成し、金利・返済期日・担保の有無を明記します。
     印紙の貼付や代表印の押印も忘れずに。
  2. 返済を実行する(形だけでなく実際に)
     口座振替や振込などで、返済を実際に行うことが大切です。
     帳簿や通帳の記録が、税務署への最大の証拠になります。
  3. 税理士・保険会社と連携する
     契約設計から返済計画、保険商品の選定まで、専門家のサポートが不可欠です。
     税務・会計・金融の整合性を取ることでリスクを抑えられます。
  4. 保険は節税目的で選ばない
     「節税できるから入る」ではなく、「保障や資産形成が必要だから入る」という合理的理由を明確に。
     経済的合理性があれば、税務的にも説得力を持ちます。
  5. 出口戦略を設計する
     返済完了後にどう保険を活用するか
     例えば、解約返戻金を退職金に回す、相続対策に使う、など長期的な出口設計を考えておくことが重要です。

具体的なシミュレーション

文章だけではイメージが難しいと思うので、実際にシミュレーションを見ていきましょう。為替レートは1ドル=150円として計算します。

<法人から代表取締役への貸付内容>

貸付金:5,000万円
返済利息:1.5%
返済期間:23年
据置期間:3年間
1〜3年目の返済金額:75万円/年(利息のみ)
4〜22年目の返済金額:2,895,264円/年(元金と利息)
返済総額:60,155,341円

最初の3年間は利息だけ支払うので毎年75万円を支払います。その225万円を除いた資金4,775万円を保険契約の資金にします。

<代表取締役が契約する保険契約>

商品名:新海外個人年金
一括支払保険料:USD 318,332(約4,775万円)
一部引出期間:3年後〜22年後(20年間)
一部引出金額:USD 19,302(約2,895,300円)/年
一部引出総額:USD 386,040(約5,790万円)
22年後の解約返戻金:USD 325,153

返済総額から225万円を差し引くと約5,790万円になるので、法人から借りた元金と利息の返済が完了します。これで解約返戻金がゼロになる内容だと何も意味がないのですが、22年後の解約返戻金はUSD 325,153あります。無事に法人の借入金から個人の保険契約を作ることができました。

その後も一部引出を個人で継続することもできますし、引き出さなければ複利運用で増やすことも個人で自由にできます。

これ法人は利息の収益にもなりますし、個人資産への移転ができますね。

最終的に利息をどれくらいにするかなどは税理士との相談にはなりますが、現在の市中金利からみても1.5%は十分に妥当かと思います。

まとめ

  • 「法人から個人への貸付+個人保険による返済スキーム」は、適正に設計すれば非常に有効な資金循環の仕組みです。
  • 法人にとっては資金を活かしながら資産として管理でき、個人にとっては保障と資産形成の両立が可能になります。
  • 節税ではなく、“資金循環の設計”として活用する
  • このスキームを成功させる鍵は、「実態」「合理性」「専門家の関与」の3つです。

著者プロフィール

松本崇裕
松本崇裕
大学卒業後、東証1部上場の設備会社で現場監督として勤務。

外資系生命保険会社からスカウトされ、2013年1月から生命保険のライフプランコンサルタントとして6年3ヶ月勤務。

また同時期に個人で海外投資も始めましたが、海外投資の情報は少なく信頼できるか判断も難しいので、WEBや知人から沢山の情報を集めていました。 その1つの情報源としてK2のメルマガを購読しながら知識を深めていきました。

そして国内外の保険や投資についてメリット、デメリットを正直に伝えた上でアドバイスをする活動方針に共感し、弊社保険アドバイザーとして2019年4月よりK2 Holdingsに参画しました。

クライアントのマネーリテラシーの底上げをしつつ、日々顧客利益の為に活動しております。

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