いま日本で最も契約されている海外積立の一つが、
**「15年で140%保証」**というタイプのプランだ。
「15年で140%になるなら悪くない」「元本割れしないなら安心」
そんな声をよく聞く。
そしてIFAや保険営業の多くも、半ば自動的にこの商品をすすめている。
だが、世界の投資家からすると、これは“増えていない”どころか“負けている”に近い。
理由は非常にシンプルで、インフレと時間価値を考えれば140%など価値がほとんど増えていないからだ。
さらに深刻なのは、15年間という“人生の重要な時間”を丸ごとこの商品に閉じ込めることの方が、金額的な損失より大きいことだ。
そして、もうひとつ重大な事実がある。
この手の商品は途中で利確も調整もできない。
利益を育てて守るという、本来の資産形成の核心行動が最初から封じられている。
では、なぜ日本人だけがこの“140%の錯覚”にはまり、
世界では誰も選ばない選択を当たり前と思ってしまうのか。
そしてどうすれば、15年という決して短くない時間を、もっと価値のある使い方へ変えられるのか。
この記事では、
「15年140%保証」を軸に、誰でも分かる言葉だけで、資産形成の本質を整理する。
- ■第1章|15年140%は“増えていない”。インフレを入れればむしろ負けている
- ■第2章|なぜ日本人だけが140%保証を“おいしい”と錯覚するのか
- ■第3章|15年間触れない商品では、“資産形成の本質”がまったくできない
- ■第4章|140%保証より、はるかに強い“本物の勝ち筋”
- ■まとめ
■第1章|15年140%は“増えていない”。インフレを入れればむしろ負けている

まず、事実をまっすぐに述べる。
15年で140%は、投資では勝ちでも成功でもない。
⸻
●1-1|インフレ2%でも“ほぼトントン”
インフレ2%で15年経つと、お金の価値はこうなる:
140 ÷ (1.02^15)
≒ 103.4
→ 実質約3%しか増えていない。
15年間の努力が、3%。
これはほぼ横ばいだ。
⸻
●1-2|インフレ3%なら“実質負け”
インフレ3%の場合:
140 ÷ (1.03^15)
≒ 91
→ 実質ではマイナス約9%
つまり、
「元本保証で安全に増えた」
と思っている人は、実際には
“お金の価値を減らしている”。
⸻
●1-3|言い換えれば「15年預けて、価値が下がった」
140%という数字だけを見ると立派だが、
物価が進む世界では、
140%は増えたことにならない。
これは例えるならこうだ。
⸻
●1-4|給料が15年で140%になっても、生活が楽になるとは限らない
給料が15年で40%増えても、
物価もそれ以上に上がっていれば生活は苦しくなる。
つまり
名目の数字は意味がなく、生活レベルを守れるかどうかが大切。
投資でもまったく同じだ。
⸻
●1-5|世界では「15年140%?それは投資ではない」
海外の投資家にこの数字を見せると、ほぼ100%こう返される。
「努力して資金を15年間ロックしたのに、その程度しか増えないの?」
「むしろ価値落ちてない?」
そこには「残念だね」というニュアンスすら含まれる。
つまり
140%保証とは、海外では“増えない投資”の典型例。
⸻
■第2章|なぜ日本人だけが140%保証を“おいしい”と錯覚するのか

これには日本特有の文化と教育が深く絡む。
⸻
●2-1|“元本保証”という言葉に弱すぎる
日本人はとにかく“減らしたくない”心理が強い。
• 元本保証
• 確定
• 安心
• 保証付き
このワードが出ると、思考が止まる人が多い。
だが実際には、
**投資で一番高いコストは“増えないこと”**だ。
元本が減らない代わりに、
15年という時間を丸ごと失う。
⸻
●2-2|積立=放置が「正しい」と思い込んでいる
日本では、積立は
• 自動
• 放置
• 触らない
• 悪い時も良い時も淡々とやる
と教えられる。
だが本来の積立は
**“育った資産を動かすための入口”**であって、
放置はスタート地点に過ぎない。
⸻
●2-3|インフレ・金利・時間価値という基礎が教育されていない
日本は学校でも会社でも、
金融の基本を教えない。
その結果、15年の価値やインフレの威力を理解できない。
だから
140%という数字だけを見て判断してしまう。
⸻
●2-4|保険営業・IFAが理解していないケースも多い
残念だが、売っている側の理解不足も深刻だ。
• 名目リターン
• 実質リターン
• 手数料
• 時間価値
これを説明できる営業担当は少ない。
だから営業はこう言う:
「15年で140%だから悪くない」
「保証だから安心」
「長期で見れば安全」
その結果、
売る側も買う側も同じ錯覚に陥る。
⸻
●2-5|“インデックス”と書いてあるだけで良いと思い込む
「世界」「S&P500」「インデックス」
こういう言葉に日本人は弱い。
だが、
インデックス成長の美味しい部分(大きな上昇)は、この商品ではほぼ取れない。
140%保証を優先した瞬間、
上昇のほとんどを捨てている。
⸻
■第3章|15年間触れない商品では、“資産形成の本質”がまったくできない

ここが最も深刻な点だ。
資産形成の核心とは、
積立ではなく「途中の利確と調整」である。
しかし、140%保証のプランは
途中で触ると保証が消えるため、
最初から最後まで何もできない。
⸻
●3-1|投資の世界では“途中の利確”こそが勝ち筋
株でも投信でも積立でも、
資産が増える最大の理由はこれだ。
• 含み益が出た時に利益確定する
• リスクを少し下げる
• 残りでまた育てる(積立は継続)
この繰り返しだけで、
資産は雪だるまのように育つ。
⸻
●3-2|増えた分を守る行動が一切できない
保証型の商品は、途中で一部引き出しや調整をすると
保証が消える。
そのため契約者はこうなる:
• 増えていても触れない
• 下がっても触れない
• 途中調整できない
• なにもできないまま15年を過ごす
実はこれ、
投資で最もやってはいけない行動。
⸻
●3-3|結果的に“増えない15年”になる
市場は長期で見れば上がるが、
上下を繰り返す。
だから利益確定が重要なのに、
それができない。
結果:
• 上昇時 → 利益を確保できない
• 下落時 → 守れない
• 15年後 → 名目140%、実質横ばい
こうして
最も重要な15年間が無駄になる。
⸻
●3-4|守りと攻めのバランスが永遠に調整できない
本来なら、人生のどこかで
• 子供の教育
• 住宅購入
• 仕事の転機
• 老後資金の準備
など、必要に応じて
“資産の安全度”を引き上げていくべきだ。
だが、触れない商品ではこれができない。
⸻
●3-5|15年という時間を“凍らせる”ことの罪は大きい
140%保証の代わりに失っているものを整理するとこうなる。
• 調整する権利
• 利確する権利
• 守る権利
• 人生の変化に合わせる権利
• 上昇分を確保する権利
• 本物の資産形成をする権利
これらをすべて“保証”に差し出している。
15年間、資産を凍らせることは
人生の選択肢を凍らせることと同じだ。
⸻
■第4章|140%保証より、はるかに強い“本物の勝ち筋”

ではどういう運用が正しいのか。
結論は簡単だ。
積立は通過点。
育った資産を途中で利確して守りながら増やす。
これだけが王道。
⸻
●4-1|積立は“苗を植える作業”にすぎない
最初の積立は、あくまでスタート。
苗を植えるだけでは、木にはならない。
• 水をやり
• 剪定し
• 育った部分を守り
• 必要な時に刈り取る
これが運用の本質。
⸻
●4-2|利確して守ることで資産が育つ
資産形成は、
上がった部分を早めに守ると成功しやすい。
攻めっぱなしが一番危険。
⸻
●4-3|利益確定は「失敗」ではなく“成功の証拠”
日本人は利確を「負け」だと思いがちだが、
海外では
「利確して現金が増える=勝ち」
という文化が根付いている。
⸻
●4-4|安全資産を使うのは“最後”でいい
保証商品は完全に否定しない。
だが使い方はこうだ:
× 最初から保証商品
◎ 育った利益を保証商品へ移す
この順番が人生を変える。
⸻
●4-5|15年間の“選べる自由”こそ最大の武器
途中で利確できる運用は、
人生の変化に合わせて調整できる。
• 収入が減ったら守る
• 子供が生まれたら一部確保
• 景気が悪化したら安全に寄せる
• 余裕がある時は攻める
これこそ、本物の資産形成だ。
⸻
■まとめ
15年140%保証は、
実は“増えていない”どころか、実質負けている。
• インフレを考えるとほぼ横ばい
• 手数料を考えるとさらに目減り
• 途中で触れないから利確も調整もできない
• 15年という人生の時間を丸ごと預けてしまう
そして日本でこれが売れている理由は、
“元本保証”という言葉の魔力と、金融教育の欠如。
海外では誰も選ばない選択が、
日本では“普通”になってしまっている。
だが本当の資産形成は違う。
積立はスタートライン。
育った利益を途中で利確して守りながら増やす。
これが唯一の勝ち方である。
もし本気で資産を増やしたいなら、
“放置して15年後に140%”を目指すのではなく、
15年間の中で何度も利益を確保し、
人生の変化に合わせて資産を動かせる設計こそ選ぶべきだ。
それが、
お金で人生の質を上げる唯一の方法である。
10年くらい前から元本確保型の積立投資を続けています。いまは利益がそれなりに出ているので、利益確定したいと思います。ただ紹介者の人と連絡が取れなくなっています。どうすればいいでしょうか?
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著者プロフィール

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投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。
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