カナダとタイのランドバンキング投資 ― Waltonとタイ事例に共通する「成功例不在」の構造

ランドバンキング投資は、都市近郊の未開発地を取得し、将来の都市拡張やインフラ整備で地価上昇を狙う仕組みです。カナダのWalton、そしてタイのランドバンキング案件はともに、日本を含むアジアの富裕層をターゲットに販売されてきました。しかし、いずれも「成功した」という具体的事例がほとんど報告されず、長期塩漬けや資金凍結の問題ばかりが浮上しています。ここではカナダのWaltonとタイのランドバンキング事例を並べて検証し、両者の共通点と投資家が得るべき教訓を整理します。

  • カナダ・Waltonの事例 ― 世界を席巻したランドバンキング商法
  • タイのランドバンキング事例 ― リゾート開発の夢と現実
  • 共通する投資家の被害構造
  • 規制・法制度の壁
  • 投資家が得るべき教訓

カナダ・Waltonの事例 ― 世界を席巻したランドバンキング商法

Walton International - Independent Real Estate Practice

Walton International Groupは、カナダを中心に米国やアジア各国でランドバンキング商品を販売しました。
• 販売モデル:未開発地を小口化して投資家に販売、将来的にデベロッパーが買収すると説明。
• 投資家の期待:「5〜10年で倍増」「都市計画に組み込まれる」などの将来ストーリー。
• 実際の結果:15年以上経過しても売却されず、資金が回収できない案件が多数。
• 特徴的問題:
• 配当やキャッシュフローはゼロ。
• 手数料は初期に徴収され、販売業者は投資家損失と無関係に利益確保。
• 規制当局から販売手法を問題視され、訴訟事例も発生。

Waltonはランドバンキングの代名詞的存在でしたが、成功談は聞こえてこず、投資家に残ったのは「出口が見えない塩漬け案件」でした。

タイのランドバンキング事例 ― リゾート開発の夢と現実

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タイではプーケット、パタヤ、チェンマイなどリゾートエリアを中心にランドバンキング案件が販売されました。
• 販売ストーリー:「観光地開発が進めば大手ホテルチェーンが買収する」「外国人の不動産需要で土地は高騰する」と宣伝。
• 販売ターゲット:日本人や香港・シンガポールの富裕層を対象にしたセミナーが頻繁に開催。
• 実際の結果:
• 開発計画が頓挫し、土地は荒地のまま放置。
• 外国人の土地保有制限により、名義は現地法人や信託を経由。これが法的リスクを伴い、最悪の場合は所有権を主張できずに消失。
• 出口戦略がなく、持分を転売する市場も存在しない。

タイでは特に「観光ブーム」を根拠にした販売が多かったものの、実際にはリゾート開発が計画倒れに終わり、投資家が長期にわたり資金を失った事例が続出しました。

共通する投資家の被害構造

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カナダのWaltonとタイのランドバンキングは、国も状況も異なるにもかかわらず、驚くほど似た投資家被害の構造を持ちます。
• 出口不在:実際に高値で売却された成功事例はほぼ皆無。
• 流動性ゼロ:市場で売却できず、持分は換金不可能。
• 販売側の先取り利益:手数料や管理費を初期に確保するため、投資家利益より販売件数が優先。
• 「都市計画・観光開発」という夢物語:根拠が曖昧で、行政承認や経済状況次第で容易に崩れる。
• 情報非対称性:投資家は現地状況を把握できず、販売業者が一方的に有利な立場を確立。

このため、投資家に残るのは「荒地の権利証」だけで、利益を実感できるケースはほとんどありませんでした。

規制・法制度の壁

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両者の失敗の背景には、各国の法制度や規制環境が大きく影響しています。
• カナダ:金融商品としての適格性が不明確で、後に規制当局が調査。投資家保護の観点から問題視された。
• タイ:外国人の土地保有制限が最大の壁。法人や信託を利用しても法的安定性に欠け、所有権リスクが常につきまとう。
• 共通点:販売国(日本や香港など)では金融庁や証券監督局から警告や行政指導が出たが、投資家救済は限定的。

つまり、制度の隙間を突いて「合法的に見える形」で販売されていたにすぎませんでした。

投資家が得るべき教訓

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カナダWaltonとタイ事例は、ランドバンキング投資の本質的なリスクを浮き彫りにしました。

1. キャッシュフローがない投資は警戒

家賃収入や配当がなく、値上がりのみを期待する投資は極めて不安定。

2. 出口戦略を検証する

「将来売却できる」というストーリーが本当に成立するのか、独自に調査が必要。

3. 販売者の利益構造を見る

手数料先取り型なら投資家の利益は二の次。

4. 外国の土地制度を理解する

外国人の所有権制限や規制は最終的に大きなリスクになる。

5. 「成功例が聞こえない」は最大の警告

実績がない投資は、そもそも成立しないビジネスモデルである可能性が高い。

日本とは土地の制度も違うし実態が分かりづらいですね。

その国や制度に余程詳しい人以外は手を出さないほうがいいでしょう。ただそれで終わりではなく、次にどう活かすかが大事です。
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まとめ

カナダのWalton、タイのリゾートランドバンキング。いずれも「未来の都市発展・観光開発」という華やかな物語を武器に、数多くの投資家を惹きつけました。しかし、出口が存在しないまま長期に塩漬けとなり、成功事例はほとんど聞かれません。両者の共通点は「販売業者の利益は先取り、投資家は夢物語を信じて資金を拘束される」という構造です。ランドバンキング投資はその仕組み自体が投資家に不利であり、教訓として「実績のない値上がり期待型投資には手を出すべきでない」という強烈なメッセージを残しています。

著者プロフィール

K2編集部
K2編集部
投資家、現役証券マン、現役保険マンの立場で記事を書いています。
K2アドバイザーによって内容確認した上で、K2公認の情報としてアップしています。

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